https://x.com/cluytens1905/status/2060825449601880150?s=61
"Ellery Queen"US版DVD
『刑事コロンボ』のファンなら、クリエイターのウィリアム・リンク&リチャード・レヴィンソンがエラリー・クィーンを主人公にしたTVシリーズを製作していた、ということは多くの方がご存知と思います。1シーズンだけで終わった短命なシリーズで、アメリカでも長いこと「幻の番組」状態だったらしいですが、2010年に全話を収録したDVDボックスセットが発売されています。
番組名は"Ellery Queen"ですが、商品名としては"Ellery Queen Mysteries"になっています。
ささやかなプロモーション・サイトがこちら。(デフォルトでテーマ曲が流れます。)
WATCH CLIPをクリックすると1話のオープニングが見られます。
最近になってこのセットの全話を見終えたので、これについて少し書きたいと思います。
まず、DVD商品としての説明です。
パッケージ
日本製の「DVD-BOX」の堅牢な造りに比べると、外箱も中のディジパックの紙部分も簡易な造りですが、US版のDVDボックスセットは概ねこんな感じです。
日本のDVDよりも全体的に安価である理由の一つでしょう。
基本仕様
リージョンコード: 1
画面: 4:3
音声: 英語
字幕: 英語 (聴覚障害者用)
6枚組
ブックレット
p2-3: ジェネット・ハッチンソン(EQMM)のエッセイ
p4-5: アンドリュー・ガリ(ストランド・マガジン)のエッセイ
p6-p7, p16-p17: 写真
その他のページ: ディスク毎のエピソード・ガイド
エピソード・ガイドでは各エピソード毎に以下の情報が書かれています:
- あらすじ
- オープニングのナレーション
- 初放送の日付
- 監督
- 脚本
- ゲスト出演者
メニュー画面
メインメニュー
言語
エピソード選択(エピソード内のチャプター選択画面はありません)
特典
最後のディスクに、ウィリアム・リンクの「インタビュー」映像(18分)が収録されています。他には特典はありません。
メニュー等では「インタビュー」と表記されていますが、質疑応答ではなく、リンクが一人で画面に向かって喋るだけです。即興ではなく事前に用意した原稿に従って喋っているような印象を持ちました。
内容的には、この番組についてはもちろんですが、既に他界した相棒のリチャード・レヴィンソンとの関係や、作家エラリー・クィーンとの出会い、などについても話しています。時折『コロンボ』との比較もしています。
短命に終わったのは意図したものなのか疑問でしたが、ここでリンクは「『コロンボ』や『ジェシカおばさん』と同じように、もっと長く続くべき番組だった」と言っているので、続けたいという意思はあったようです。
(ただし、続けられたとしても主演のジム・ハットンが1979年に45才で亡くなっているので長寿番組というのは無理だった、ということになりますが。)
画質・音質
十分良いと思います。
1975年製作のTVドラマのDVDとしては別に文句のないところだと思います。
宣伝によればディジタル修復処理が施されているそうです。たしかにゴミとかキズが気になる、ということはありません。
全体的に画面が少し暗い感じがしましたが、基本的に室内劇ですし、たまに外に出ても殆どの舞台はニューヨークで、太陽さんさんというような環境ではありませんから、これはこのシリーズの絵柄ということなのでしょう。
クィーン親子が釣りに出かけたり、映画撮影の見学でハリウッドに行ったりする話があるのですが、これらの野外場面はさすがに明るくなっています。しかし他の部分に比べて少し画質が落ちる(やや粗くボケ気味になる)ようです。
同時期の日本製TVドラマのDVDには、27インチ程度の画面で見てもかなりつらい画質のものもありますが、これはもう少し大きなサイズでも耐えうる画質です。
とは言え製作当時の標準的なTV画面サイズはもっと小さかったはずで、構図なども小さな画面を想定しているはずですから、あまり大きな画面で見るべきものではないでしょう。
音に関してもセリフはクリアに聞こえ、何も問題はありませんでした。
内容に対する感想
この番組が日本で放送されたことがあったのかどうか知りませんが、私はこのDVDで見たのが初めてです。
いや、面白いです。TV番組をこんなに楽しく見たのは久しぶりです。
現在でも『CSI』など面白いTV番組はありますが、"Ellery Queen"は「面白い」以上に「楽しい」のです。
私はエラリー・クィーンの小説は(ドルリー・レーンものを含めても)数冊しか読んだことがないのですが、あまり自分の好みには合わないと感じています。
また、キャラクターとしてのエラリー・クィーンにはあまり好感が持てません。
しかし、このTVシリーズでジム・ハットンが演じているエラリーは極めて好感度の高い人物で、小説のエラリーとはまるで別人です。
レイモンド・バーのペリー・メイスンが小説のメイスンとはまるで別人、というのと同じくらいに違う。
(ただし、原作者のクィーンはハットンのエラリーを大変気に入っていたそうです。)
サイモン・ブリマーという、自己顕示欲の強い気取った「ライヴァル探偵」が数話に出てくるのですが、このブリマーの方が私が想像する「小説の中のエラリー・クィーン」に近いくらいです。(ブリマーはそれ以上にファイロ・ヴァンスの雰囲気に近いと思いますが。)
何かを考えていると他のことへの注意が散漫になり、しじゅう物を忘れたり、あちこちにぶつかったりする。身なりに気を配っている様子はなく、いつも同じような格好をしている。こういうのは学究肌の人間にはよく見るタイプです。
それにしても殺人現場で机の上に兇器のナイフが置いてあるのに、その上に足を乗せようとしてリチャード警視に怒鳴られる、なんてのはちょっと原作のエラリーではありえないのではないでしょうか。
ブックレットによると、これより前の映画でもエラリーは多少そのような描かれ方をしているらしいです。ということはやはり、原作の人物像では一般大衆には受けない、と思われたのでしょうか。
驚いたことは「ミステリとしてのレベルの低さ」です。
殆どのエピソードはTV版オリジナルで、クィーンの小説とは無関係らしいのですが、
『コロンボ』と比べ物にならないのはもちろん、『古畑任三郎』どころか『名探偵コナン』でももう少しましだぞ、と思うものもありませす。
特に初期のエピソードは「ダイイング・メッセージ」に関わるものが多く、せいぜい「そう解釈することも出来る」程度のものでしかなく、「その程度の根拠で殺人という重大な罪を告発するのか」とか「言われた方も、たとえ真犯人でももう少し抗弁しろよ」とか感じることが多かったです。
にも関わらず。
一話としてつまらなかった、退屈したということがありませんでした。
パイロット版以外は1時間弱という短さのせいもあるのでしょうが、何と言ってもキャラクター、とりわけエラリーとリチャード・クィーン警視親子の魅力に尽きます。
極端に言って事件なんかどうでもいいというくらい、この二人のやり取りは面白い。ミステリ的な甘さなどは平気で許す気になってしまう。
小説でもリチャード警視はエラリーと違って魅力的な人物でしたが、このTV版でデイヴィッド・ウェインが演じるリチャードは見ていて飽きません。やや類型的ではあるかもしれませんが、このように生き生きと演じてもらえればそんなことはどうでもよろしい。
物語の構成上、結末近くになるまでは警察の捜査が物語を進めるから、自然とその指揮を執るリチャードの存在が大きくなる、という面もあるのでしょうが、それ以上に役者の魅力が大きいと思います。
この番組について書かれたもので必ずと言っていいほど取り上げられる特徴として、解決が提示される直前にエラリーが画面から視聴者に直接語りかける、ということがあります。
私はこの種の手法が嫌いで、それが『古畑』を好きになれない理由の一つでもあるのですが、なぜか"Ellery Queen"では気になりませんでした。
ところで、ヴェリー部長刑事(実際は「ヴィーリー」と発音するようですが)だけがエラリーを"Maestro"と呼んでいるのを面白いと思いました。(邦訳でどうだったかは記憶にありません。)
もう一人のセミ・レギュラーでフランク・フラニガンという新聞コラムニストがいるのですが、この人物はエラリーを"Junior"と呼ぶ。
また、エラリーはブリマーを"Simon"とファースト・ネームで呼ぶのにブリマーは彼を"Queen"としか呼ばない。
昔、野田昌宏がキャプテン・フューチャーについて、周囲の人物が彼を呼ぶ呼び方が原文では皆違い、そこに彼との関係性が現れているのに自分の翻訳ではそれが伝えられず残念だ、というようなことを書いていたのを、ちょっと思い出しました。
なお、ジム・ハットンの息子ティモシーは後に"A Nero Wolfe Mystery"という番組でネロ・ウルフの相棒アーチー・グッドウィンを演じているそうです。これもちょっと見てみたいな…と考え中。
[2014-02-23: 商品リンク追加
]
[2013-10-24: 商品リンク追加
『ジェシカおばさんの事件簿』全12シーズンのボックスセットと、シーズン終了後に製作されたスペシャル版4作のセット:
]
[2015-06-12: Amazon.comの仕様変更に対応/商品リンク追加・変更]
エラリー・クイーン(Ellery Queen)(1975-1976・米)
エラリー・クイーン (Ellery Queen)
「刑事コロンボ」のシリーズの生みの親であるリチャード・レビンソンとウィリアム・リンクのコンビで制作され、1975年から76年にかけて放映されて好評を博した、エラリー・クイーンのTVドラマシリーズ。日本でも1978年に放映されています。パイロット版を含め23のエピソードが制作されていますが、このうちパイロット版とシリーズ中の1作品を除く21作品は、クイーンの原作にはないオリジナルストーリーです。
ノスタルジックな1940年代のアメリカを舞台に、ジム・ハットン演じる青年探偵エラリー・クイーンと、デヴィッド・ウェイン演じるニューヨーク市警のリチャード・クイーンの親子探偵コンビが捜査を展開。視聴者は毎回この二人と一緒に作中に周到に用意された手がかりや伏線を頼りに「誰が殺したのか」といういわゆる"Whodunits(フーダニット)"による謎解き・推理を楽しむことができます。
また毎回有名スターをゲスト出演させる他、ジョン・ヒラーマン演じる威張りかえったラジオ番組の迷探偵サイモン・ブリンマーやケン・スウォフォード演じるフランク"フロントページ"フラナガンといったクイーンの原作には登場しないものの作品を大いに盛り上げてくれるオリジナル・キャラクターの存在も、このシリーズならではの魅力の一つです。
エラリー・クイーンの映像化作品というと30年代から40年代にかけて作られた映画をはじめ、評論家やファンの間でも評価の芳しくない作品が多い中、このシリーズは毎週2千万人もの視聴者を惹き付けたと言われ、またクイーンの研究家としても知られるフランシス・M・ネヴィンズJr.が、評伝「エラリイ・クイーンの世界」の中で「疑問の余地なくクイーンの映像化としては最高の出来」であり、「全シリーズを通してテレビに釘づけだった」と評しています。
ellaryThe Adventure of the Chinese Dog
https://vimeo.com/419584291
The Adventure of the 12th Floor Express
https://dai.ly/x6o09wc
The Adventure of the Mad Tea Party
https://dai.ly/x6ucqx1
The Adventure of the Wary Witness
【放映順作品リスト】
| No. | 作品名 | 放映年 | 原題 | 本国 放映日 | シー ズン | MC | 備考 |
| 1 | エラリ・クイーン | 1975 | Too Many Suspects | 3/23 | パイロット版 | - | 監督:デイヴィッド・グリーン 脚本:リチャード・レビンソン&ウィリアム・リンク 原作「三角形の第四辺」 |
| 2 | 螢の光の冒険 | The Adventure of Auld Lang Syne | 9/11 | 1-1 | - | 監督:デイヴィッド・グリーン 脚本:ピーター・S・フィッシャー(R・レビンソン&W・リンクとの共同原案) | |
| 3 | 飛び降りた恋人の冒険 (恋人の崖の冒険) | The Adventure of the Lover's Leap | 9/18 | 1-2 | 1-3 | 監督:チャールズ・S・デュービン 脚本:ロバート・ピロッシュ | |
| 4 | 黄金のこま犬の冒険 (中国の犬の冒険) | The Adventure of the Chinese Dog | 9/25 | 1-3 | 1-2 | 監督:アーネスト・ピントフ 脚本:ロバート・ヴァン・スコイク(ジーン・トンプスン原案) | |
| 5 | 劇画作家たちの冒険 (コミック騎士の冒険) | The Adventure of the Comic Book Crusader | 10/2 | 1-4 | 1-12 | 監督:ピーター・ハント 脚本:ロバート・ヴァン・スコイク | |
| 6 | 12階特急の冒険 (十二階行き急行の冒険) | The Adventure of the 12th Floor Express | 10/9 | 1-5 | 1-9 | 監督:ジャック・アーノルド 脚本:デイヴィッド・H・バルカン&アラン・フォルソム | |
| 7 | さよなら興業の冒険 (ミス・アギーのさよなら公演の冒険) | The Adventure of Miss Aggie's Farewell Performance | 10/16 | 1-6 | 1-10 | 監督:ジェイムズ・シェルドン 脚本:ピーター・S・フィッシャー(R・レビンソン&W・リンクとの共同原案) | |
| 8 | ニーヴン大佐の回想録の冒険 | The Adventure of Colonel Niven's Memoirs | 10/23 | 1-7 | - | 監督:セイモア・ロビー 脚本:ロバート・E・スワンソン | |
| 9 | 奇妙なお茶会の冒険 (キ印ぞろいのお茶の会の冒険) | The Adventure of the Mad Tea Party | 10/30 | 1-8 | 1-1 | 監督:ジェイムス・シェルドン 脚本:ピーター・S・フィッシャー 原作「キ印ぞろいのお茶の会」(「エラリー・クイーンの冒険」所収) | |
| 10 | ベロニカのベールの冒険 (ヴェロニカのヴェールの冒険) | The Adventure of Veronica's Veils | 11/13 | 1-9 | 1-11 | 監督:セイモア・ロビー 脚本:ロバート・ピロッシュ | |
| 11 | ファラオの呪いの冒険 | The Adventure of the Pharoah's Curse | 12/11 | 1-10 | - | 監督:セイモア・ロビー 脚本:ピーター・S・フィッシャー(ルドルフ・ボーシャート原案) | |
| 12 | ハンマー型トロフィーの冒険 (鈍器の冒険) | The Adventure of the Blunt Instrument | 12/18 | 1-11 | 1-4 | 監督:アーネスト・ピントフ 脚本:マイケル・ロバート・デイヴィッド(原案も)、ロバート・ヴァン・スコイク | |
| 13 | 黒い鷹の冒険 | 1976 | The Adventure of the Black Falcon | 1/4 | 1-12 | - | 監督:ウォルター・ドニガー 脚本:マーク・B・レイ |
| 14 | スパーリング・ボクサーの冒険 (必殺パンチの冒険) | The Adventure of the Sunday Punch | 1/11 | 1-13 | 1-6 | 監督:セイモア・ロビー 脚本:ラリー・アレグザンダー | |
| 15 | 風変わりな技師の冒険 (変人技師の冒険) | The Adventure of the Eccentric Engineer | 1/18 | 1-14 | 1-5 | 監督:ピーター・H・ハント 脚本:デイヴィッド・P・ルイス、ブッカー・ブラッドショー | |
| 16 | 慎重な証人の冒険 (慎重な目撃者の冒険) | The Adventure of the Wary Witness | 1/25 | 1-15 | 1-13 | 監督:ウォルター・ドニガー 脚本:ピーター・S・フィッシャー | |
| 17 | ユダの木の冒険 | The Adventure of the Judas Tree | 2/1 | 1-16 | 1-7 | 監督:ウォルター・ドニガー 脚本:マーティ・ロス | |
| 18 | 不吉なシナリオの冒険 | The Adventure of the Sinister Scenario | 2/8 | 1-17 | - | 監督:ピーター・H・ハント 脚本:ロバート・ピロッシュ | |
| 19 | 二つの顔の女の冒険 | The Adventure of the Two-Faced Woman | 2/29 | 1-18 | 1-14 | 監督:ジャック・アーノルド 脚本:ロバート・E・スワンソン | |
| 20 | ティン・パン・アレイの暴君の冒険 | The Adventure of the Tyrant of Tin Pan Alley | 3/7 | 1-19 | - | 監督:セイモア・ロビー 脚本:ロバート・ヴァン・スコイク | |
| 21 | シーザーの眠りの冒険 (シーザーの最後の眠りの冒険) | The Adventure of Caesar's Last Sleep | 3/14 | 1-20 | 1-15 | 監督:リチャード・マイケルズ 脚本:ルドルフ・ボーチャート、マイケル・ローズ | |
| 22 | 冷酷な行商人の冒険 (冷たい広告屋の冒険) | The Adventure of the Hard-Hearted Huckster | 3/21 | 1-21 | 1-8 | 監督:エドワード・エイブロムス 脚本:ロバート・E・スワンソン(ルイス・デイヴィッドソンとの共同原案) | |
| 23 | 消えた短剣の冒険 | The Adventure of the Disappearing Dagger | 4/4 | 1-22 | - | 監督:ジャック・アーノルド 脚本:スティーヴン・ロード、ロバート・ヴァン・スコイク |
【ドラマ脚本集】
| No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 | |
| 1 | ミステリの女王の冒険 視聴者への挑戦状 | 2010 | 論創社 論創海外ミステリ89 | 日本で独自に編纂、TVドラマ「エラリー・クイーン」のシナリオ集 | |
| 1 | 十二階特急の冒険 | 1975 | 第5話 脚本:デイヴィッド・H・バルカン&アラン・フォルサム | ||
| 2 | 黄金のこま犬の冒険 | 第3話 脚本:ロバート・ヴァン・スコイク(ジーン・トンプスン原案) | |||
| 3 | 奇妙なお茶会の冒険の冒険 | 第8話 脚本:ピーター・S・フィッシャー 原作「キ印ぞろいのお茶の会」(「エラリー・クイーンの冒険」所収) | |||
| 4 | 慎重な証人の冒険 | 1976 | 第15話 脚本:ピーター・S・フィッシャー | ||
| 5 | ミステリの女王の冒険 | ドラマ未制作 脚本:ピーター・S・フィッシャー | |||
【参考】「エラリイ・クイーンの世界」(フランシス・M・ネヴィンズJr.著 早川書房)
Last Update: 2017/8/1














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