CG制作の裏側|『果てしなきスカーレット』若手クリエイターインタビュー① モデリングからライティングまで初挑戦

細田守監督作品『果てしなきスカーレット』では、《死者の国》のパートを中心にデジタル・フロンティアがCG制作を担当しています。
本作では、キャラクターの芝居や表情といった繊細な演技をCGで表現するため、多くの試行錯誤が重ねられました。
その制作現場のひとつが、キャラクター制作を担うチームです。
今回は、キャラクター室・木村 舞さん(※インタビュー当時2年目)に、キャラクター制作の現場について話を聞きました。
モデリングからライティングまで、ほぼすべてが初めて
─まずは担当したカットを教えてください。
主にプロップやキャラクターモデリング、テクスチャ制作、カット専用アセットの作成を担当しました。特に難しかったのは、アニメーションでどのように使われるかが決まりきっていない状態でアセットを作ることでした。
カメラの角度やアニメーションによっては、デフォルトのモデリングだけでは表現できない形状が必要になることもあります。そのため、
・リグが動かしやすい形状になっているか
・アニメーションしやすいメッシュの流れになっているか
などを考えながら制作する必要があり、そこに苦戦しました。
表情のシェイプ調整とライティングにも挑戦
─工夫したことを教えてください。
今回の制作では、ライティングやシェイプ調整も担当しました。
カットによっては、デフォルトの表情だけでは演出に合わない場合があります。
そのため、レイアウトに合わせて表情のシェイプを調整していきました。
またライティングでは、実際に光を当ててみて初めて気づく問題も多かったです。たとえば
・モデルのめり込み
・モデルの形状による汚い影の落ち方
などです。
こうした問題が見つかるたびに修正が必要になり、調整が難しく、工数が想定より増えてしまう場面がありました。
さらに、Nukeを使ったコンポジット作業も今回が初めてでしたが、囲の方々に助けていただきながら、無事に作業を進めることができました。



「特報カット」の調整
─印象に残っていることを教えてください。
制作の中で特に印象に残っているのが、特報カットのシェイプ調整です。
このカットでは、まずレタッチで方向性を固めてからCG調整に入る方法を試しました。
その結果、完成イメージの認識のズレを減らすことができ、効率よく作業を進めることができました。
レタッチとは?
CGで書き出された映像を、絵コンテや演出意図に近づけるための調整作業です。光の強さ、色味、コントラスト、空気感などを調整し、「理想の見え方」を画像として作ります。



隣の席でフィードバックをもらいながら制作
制作中は、ビジュアル部門統括プロジェクトリードの佐藤さんにすぐ相談できるよう、隣の席に座って作業を進めました。直接画面を見てもらいながらフィードバックを重ねることで、求められるクオリティにより早く持っていけたと思います。



学んだのは「次の工程を考える」こと
─学んだことを教えてください。
今回が入社して初めてのプロジェクトだったので、工数を意識して制作することも初めての経験でした。
たとえばキャラクター制作でも
・このモデルはアニメーションでどう使われるか
・リギングしやすい構造になっているか
といったことを考えながら作業する必要があります。
また、ライティングでも、データを次のコンポジット担当者に渡すことを意識して
・データ整理
・分かりやすいファイル構成
を作ることが重要だと学びました。
先の工程を意識して作らないと、後で無駄な工数がかかってしまうと実感しました。こうした経験を通じて、制作全体のつながりを意識する大切さを感じました。


トゥーンと実写、両方の制作に挑戦していきたい
─今後の目標を教えてください。
入社後はトゥーン調の案件がほとんどでした。現在は実写案件の制作にも挑戦しています。
トゥーン作品と実写作品では、制作の考え方が大きく異なります。
特に
・レンダリング時間
・データの重さ
・計算コスト
などは大きく変わるため、トゥーンの感覚で作業するとデータが重くなりすぎてしまいます。
たとえば、実写案件ではライトを追加するだけでも計算時間が大きく増えてしまうことがあります。
そのため、今後はトゥーン、実写、リアル、とそれぞれの案件に合った制作の進め方を理解しながら、クオリティを高められる技術を身につけていきたいと思います。
CG制作の裏側メイキング一覧|映画『果てしなきスカーレット』
▶ 本メイキング
▶ 若手メイキング
① キャラクターモデリング・表情シェイプ・ライティング・Nukeコンポジット(この記事)
② プロップモデリング・キャラクターテクスチャ制作・ライティング(近日公開)
③ 主役キャラクターの演技アニメーション(近日公開)
④ 雪山・星空・地獄の穴などの背景制作(近日公開)
⑤ 「馴染みすぎ」から始まったアニメ表現のコンポジット(近日公開)
⑥ 物語の重要シーンを支える演技アニメーション(近日公開)