2026年7月4日土曜日

映画「灼熱の魂」ネタバレあらすじと感想 - ルッカのあらすじ園

King Vidor's "The Crowd" (1928) https://youtu.be/u6jnix2Bcz4?si=JyKuTH7xQQ-P3DLy

こんなに多いぞ!「ブッダ」の未収録!|手塚治虫全巻チャンネル【某】

こんなに多いぞ!「ブッダ」の未収録!|手塚治虫全巻チャンネル【某】

こんなに多いぞ!「ブッダ」の未収録!

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今回は手塚治虫の代表作「ブッダ」の未収録ページについて
ご紹介したいと思います。

手塚先生は雑誌に連載していたものを単行本に収録する際に
改編、修正、編集でこねくり回してオリジナルとは
違う作品にしてしまう作家で有名であります。

ですから『鉄腕アトム』や『ブラック・ジャック』『火の鳥』といった
有名作品はもちろん
その他の手塚作品でも未公開原稿や未収録作品が唸るように存在し
これを見るのがある種の楽しみでもあり、ある種の迷惑でもあります(笑)

しかし今回の「ブッダ」は手塚治虫の中でもライフワークと言われる火の鳥に並ぶほどの代表作でありながら
マニアの間でも改編についてそれほど語られておりません。

その実、単行本未収録ページの多さや、バージョン違いなどの描き変えの
多さは、手塚作品の中でも指折りで、実は「火の鳥」よりも多いんです

それは一体なぜなんでしょう。

今回はその秘密と改編された未公開がどういうもだったのかに迫ってみたいと思いますのでぜひ最後までお付き合いください。

それでは本編いってみましょう。

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今回のブッダの改編については復刊ドットコムの『ブッダ』オリジナル版をベースに進めていきます。

まず大枠ですが実は『ブッダ』の描き直しや改変というのは
めちゃくちゃ多いということ。
他の有名作『ブラック・ジャック』『火の鳥』『鉄腕アトム』などと比べても、『ブッダ』がかなり多いのはファンの方でも意外だと思うのではないでしょうか。

なぜこれほどまでに書き換えが多かったのかについては
本当のところは分かりませんが一説には
ブッダが悟りに至る過程に試行錯誤があったと言われています。

何と言っても「悟り」は本作の核になる部分でありますし
先生もその表現方法に相当頭を悩ませていたと思われます。

それを物語るに単行本版では
見ごたえのある良いシーンが惜しげもなくバッサリ切られているんです。

そもそも手塚先生は作品としての完成度を追求するためなら容赦なくカットしますし「作品が長すぎる」と感じるとこれまでの苦労も関係なくあっさり切り捨てます。
それはもう見事なまでにカットしちゃいますよ。
過去には
『火の鳥 望郷編』での大幅なカットだったり
アニメですけど『火の鳥2772』ではなんと30分も尺をカットしていますし
まんが道では来るべき世界の本編400ページに対して書いた原稿は1000ページだったというエピソードがあるくらい作品の完成度を高めるためなら躊躇なしに書いた原稿をボツにします。

原稿をハサミで切り刻んで使いまわしたりもするので
生原稿が残っていないということもしばしばあります…(笑)
とにかく現代の感覚では考えられないくらい
容赦なく原稿にメスを入れていくのが手塚治虫なのであります。

では実際「ブッダ」ではどんな風にカットされているか見てみましょう。

まず目につくのはシッダルタが悟りを開くまでの描写のところに、
かなりの描き換えがあり描き足しも非常に多いことが分かります。

画像1

やはり悟りに到達するまでの描写に悩んでいたことが伺い知れます。
このオリジナル版を手掛けた復刊ドットコムの森さん曰く
どの巻の修正が多いのか調べてみたら特に2巻と5巻が多かったそうです。

前半部分に改編が集中しているところを見ると
ほぼ間違いなく悟りに到達するまでの描写に悩んでいたことが伺い知れます。

…で森さんがマスコミや読者に紹介するための資料をまとめていて3巻の編集をしていたら3巻だけでもなんと70ページほどもあって改めて驚いたと語っておられました。

「どの巻を手に取っても読んだ方はきっとびっくりすると思う」
「惜しげもなく切っていて大胆、スゴイ」

と手塚先生の容赦ない改編に驚きを隠せないようでした。

こう見ると
シッダルタの子供時代、出家する寸前の描写など
惜しげもなくカットされていますね

画像2

そもそもブッダとは悟りに到達したとはいえ決して神になったわけではなく
あくまでも一人の人間として求道者として、
その真理を大勢の人々に伝え広めていった不器用な人間像であります。

そこが他の宗教のような絶対神などとは違う最大の特徴なんですけど
(ほかの宗教あまり知らないので深く突っ込まないでくださいね)

故に手塚先生はそこに至るまでの過程を
何度も何度も書き直し修正して完成形に至ったのだと思います

なんせ悟りの境地をマンガで説明するなんて世界初の試みでしょうからね。
言葉でもなく文字でもなく二次元描写でどのようにして読者に伝えて行こうかと苦悩したんだなというのは感じます。

有名なシーンでいくと出家した際のシッダルタの顔のアップ

画像3

微妙な顔のラインを何度も書き直したホワイト跡が残っています。
こんな事くらいサラリと流せばいいのにと思うんですけど
顔のライン一つとっても気になるところはどんどん修正していた先生のこだわり具合が分かります。

あとは、『火の鳥』を感じさせるシーン。
『ブッダ』は元々『火の鳥』の続編という流れがあったので
『火の鳥』とかなり近いテーマを感じさせる描写が数多く存在します。

『火の鳥』で描いたような輪廻転生の生命観とか、コスモゾーンについての事とかまさに火の鳥と思わせるような壮大な描写もあるんですが
単行本版ではこれも容赦なくカットされています(笑)
さすがゴッド手塚治虫ハンパじゃありません。

画像4

ここら辺はあえて火の鳥と似せないように修正したのか
その真意は分かりませんが「ブッダ」は火の鳥よりも対象年齢を下げて描いていることは確かなので
小難しくなりそうなところは後で全面カットした可能性はありますね。
実際に「ブッダ」の方が絵のタッチも優しくなっていますしギャグも多く入っており火の鳥のターゲット層とは明らかに違うことが見て取れます。

火の鳥とテーマは同じようなものであっても描き方の違いはギャグを見ると一目瞭然です。

映画のエイリアンが出てきたり

画像5

ゴルゴ13なんかも平然と出てきます。

画像6

さらに凄まじいのはシッダルタが一瞬現代にタイムスリップするシーン
1970年のベトナム戦争時にシッダルタがタイムスリップするという
猛烈なSFタイムスリップは一見の価値ありです。
これらは残念ながら本編ではすべてカットされています。

画像7

あとはカラーページですね。
カラーページもかなり力が入っていて扉絵なども多数描かれています。

画像9

ブッダが誕生するシーンも、
連載時は非常に美しいカラーで表現されているのですが、
単行本ではコマ割りも含めてバッサリ改編されております。

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単行本版でカラー表現できないのはしょうがないとしても
コマ割り改編などほんと容赦ないですね。
手塚先生って天才すぎて我々凡人が見ても何が気に入らないのかさっぱり分からないんですよね。
何かが違うから手を加えるんでしょうけど…
その何かがさっぱり分かりません(笑)

とういうわけで今回はざっと「ブッダ」の未収録
改編、修正の秘密を見てまいりました。

今回ご紹介した作品は
復刊ドットコムのブッダ 《オリジナル版》 復刻大全集を参考にしております

こちらは雑誌連載時の貴重な(オリジナル・バージョン)全話を
単行本としては初刊行しておりB5判フルサイズ&フルカラーで雑誌掲載時の大きさそのままでスケール感も抜群
紙質もこだわられており非常に上質な用紙に印刷されている
ファンならよだれものの超豪華仕様になっております

そしてなんといっても
連載版と単行本版の違いを、図版を見せながらの解説が付いておりますので
どこがどう変わっているのかが一目でわかるようになっているのは
本作のみどころの一つにもなっています。

画像10

ブッダは掲載された雑誌が『希望の友』といったマイナー雑誌だったため
『少年マガジン』『少年サンデー』や『少年チャンピオン』のようなメジャー誌と比べるともともとの発行部数が少なく残存率も低いため古本屋でも取り扱いが極めて少なく
コンプリートできる確率が恐ろしく低い代表作ですので、こうして復刻として完全版を読むことができるのは大変興味深いことであります

これまでのブッダでは読めなかった雑誌掲載時そのままの『ブッダ』
改編されたページ数も圧倒的であり
それを完全版として現在手に入るものではコレしかありません。

ちょっとお高いですが興味のある方はぜひご覧になってみてください。

通常版はこちら

映画『ザ・バニシング消失』ネタバレ感想。リメイク版までありながら日本未公開であったサスペンス秀作

映画『ザ・バニシング消失』ネタバレ感想。リメイク版までありながら日本未公開であったサスペンス秀作

映画『ザ・バニシング消失』ネタバレ感想。リメイク版までありながら日本未公開であったサスペンス秀作

映画『ザ・バニシング -消失-』は2019年4月12日(金)ロードショー

旅行先で突然消えた恋人。彼女はなぜ消えたのか、どうなってしまったのか。その真相を男が追っていくうちに、物語はどんどん恐ろしい局面に向かいます。

巨匠スタンリー・キューブリックも認めた心底恐ろしいサイコスリラーが遂に日本初公開です。

かなりハードルが高い宣伝文句がついた本作ですが、それに全く見劣りしない映画でした。

映画『ザ・バニシング-消失-』の作品情報

(C)1988 Published by Productionfund for Dutch Films

【日本公開】
2019年(オランダ・フランス合作映画)

映画

【原題】
Spoorloos

【脚本・監督】
ジョルジュ・シュルイツァー

【キャスト】
ベルナール・ピエール・ドナデュー、ジーン・ベルヴォーツ、ヨハンナ・テア・ステーゲ、グウェン・エックハウス

【作品概要】
1988年の公開当時、スタンリー・キューブリックが3回鑑賞して「今まで見た中で一番恐ろしい映画だ」と語ったという伝説のサイコサスペンス。

製作から30年を経て、遂に2019年に日本で公開されました。

監督はジョルジュ・シュルイツァー。後にハリウッドで同作のセルフリメイク『失踪』(1993)を撮りますが、オリジナルにあたる本作の恐ろしさは際立っています。

 映画『ザ・バニシング-消失-』のあらすじとネタバレ

(C)1988 Published by Productionfund for Dutch Films

映画

オランダ人のレックス・ホフマンとサスキア・ワグダーの夫婦は、7月のツール・ド・フランスが開催される頃、フランスの田舎へ自転車を積んだ車に乗って旅行にやってきます。

二人はフランスの別荘地を借りて、楽しく過ごす予定でした。

とあるトンネルを通っている最中、サスキアは最近見た奇妙な夢の話をします。

「金の卵に閉じ込められるの。そして永遠に宇宙をさまよい続ける。でも私がいる卵以外にもう一つ金の卵が現れてぶつかったら全てが終わったわ」

そんな話をしているうちに、真っ暗闇のトンネルの真ん中で車がガス欠し立ち往生してしまいました。

レックスは追突される恐れがあるから車を降りろと言いますが、サスキアは懐中電灯があったから探すと降りようとしません。

元々頑固なレックスは怒ってしまい、怯える彼女を車内に置き去りにして、ガソリンを取りに行ってしまいます。

レックスがガソリンを持って帰ってくると、車内にサスキアの姿はありませんでした。彼が車をトンネルの外まで走らせると、彼女は一人立っていました。

(C)1988 Published by Productionfund for Dutch Films

レックスは置き去りにしたことをサスキアに謝り、二人は和解します。やがて車はドライブインに着きますが、そこには怪我もしていないのにギプスを腕にはめているレイモンの姿がありました。

給油を終え広場の芝生でいちゃつくレックスたちは、旅の記念にとそこにあった木の根元にコインを埋めます。

サスキアはレックスにじゃれつきながら「2度と私から離れないこと」と誓わせると、「飲み物を買う」と言って売店のある方へと走ってゆきました。

その後、いつまで経っても帰ってこないサスキアをレックスは心配し始め、人々に写真を見せながら彼女を探し回ります。

その中である店員から「男と2人で歩いて行った」という証言を得られたものの、それ以上の手がかりは見つかりませんでした。

レックスの元から、サスキアは忽然と姿を消してしまったのです。

(C)1988 Published by Productionfund for Dutch Films

映画

やがて視点が変わり、物語の時間は過去へと遡ります。妻子持ちの大学教授であるレイモン・ルモンは、長い間女性を誘拐する計画を立てていました。

ある時、彼は山荘を購入し、そこにある屋外テーブルで家族と食事をとります。すると長女が蜘蛛を見つけ、悲鳴を上げてしまいました。

レイモンは凄い悲鳴だなと笑い、ふざけて次女と妻にも悲鳴を上げさせます。

翌日、レイモンは山の麓で暮らす老人の家を通り、昨晩悲鳴が聞こえたか訪ねます。老人は何も聞かなかったと答えました。

またある時は、クロロホルムを使って短時間で素早く女性を誘拐するため、レイモンは自身を実験台にして、クロロホルムを吸って睡眠状態になるまでの時間を調べます。

そして、「女性をうまい口実によって助手席に乗せ、クロロホルムの染み込んだ布の用意し、女性の口に押し当て気絶させる」という一連の行動を繰り返しシミュレーションしました。

準備を終えると、彼は街中で「道案内する」という口実で実際に女性を車に乗せようと試みますが、いつも断られてしまい上手くいきません。

ある日、レイモンは娘が通っている習い事の教師に声をかけてしまい、ナンパなら人の多いサービスエリアがいいと彼女に勧められます。

彼はその言葉に従い、レックスとサスキアがのちに訪れるサービスエリアへと通うようになりました。

(C)1988 Published by Productionfund for Dutch Films

映画

やがて、サスキアが失踪してから3年後にまで、物語の時間は進みます。レイモンは街中で「この女性は3年前に失踪しました」という文言とサスキアの写真が貼られたポスターを見かけます。

サスキアの失踪後、レックスはずっと彼女の捜索を続けていました。彼にはすでにリーネケという新しい恋人がいましたが、サスキアの身に何が起きてどうなってしまったのかを知りたがっていました。

レックスはフランスのTV番組に出演し、「犯人に言いたい。もう彼女が無事だとは思っていない。君を断罪するのももういい。ただあの時何があったのか知りたい。」とコメントをします。その番組を、レイモンは家族と一緒に観ていました。

(C)1988 Published by Productionfund for Dutch Films

番組への出演後、レックスの家にはイタズラの手紙がたくさん届きましたが、彼はその中から、犯人しか知らない情報が書かれた手紙を見つけます。

レックスは手紙に書かれていたレストランに向かいますが、店内に待機していたレイモンは話しかけることなく、彼の様子をこっそりと窺っていました。

その後も、レックスは取り憑かれたようにサスキアの捜索を続けます。しかし、彼が捜索活動のために借金までしていることを知ったリーネケは愛想を尽かし、彼の元を離れていきました。

そんなある日、突然レックスの前にレイモンが現れ「私が犯人だ」と名乗ります。

レックスは瞬時に激昂しレイモンを何度も殴りつけますが、彼が落ち着くと、レイモンは平然と「真相を教えよう」と告げます。

そして条件として、レックスに自分と一緒に車でフランスに来ることを要求しました。

レックスは真実を知りたい一心で車に乗り込み、2人はフランスに向かいます。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには 映画『ザ・バニシング -消失-』ネタバレ・結末の記載がございます。映画『ザ・バニシング -消失-』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

(C)1988 Published by Productionfund for Dutch Films

映画

フランスの国境を越えた辺りで、レイモンは真相を語りだしました。

レイモンは、自身が反社会性パーソナリティー障害だと自覚していました。16歳の時、ふと興味を持って自宅のバルコニーから飛び降り腕を骨折した記憶を回顧しながら、「普通なら思いとどまるところをやってしまうのが自分なんだ」と彼は語ります。

それでも、彼は「自分は正しい人間だ」と証明したいという願望を抱き続けていました。

それから十数年が経ち、家族ができた頃、レイモンは川で溺れていた幼女を助けます。娘からはその行為を賞賛され英雄視されますが、彼は満足できませんでした。

やがて、自分の「正しさ」を示すために、彼は「殺人以上に残酷な行為」を考え出します。そのために、彼はずっと女性を誘拐するシミュレーションをしていたのです。

シミュレーションと実践を繰り返す中で、彼は様々な口実を考案しますが、それでも女性を助手席に乗せることはできませんでした。

そんな時に、レイモンは誕生日に、自身の半生がまとめられたアルバムを長女からプレゼントされます。

彼はそこで、骨折しギプスをはめている16歳の自分が映った写真を見つけ、「怪我人のふりをして女性に介助してもらう」というアイデアを思いついたのです。

(C)1988 Published by Productionfund for Dutch Films

映画

そして、ついにあの日がやってきます。最初に誘拐しようとした女性は運悪く逃がしてしまったものの、偶然売店に来たサスキアと出くわします。

次女が誕生日にプレゼントしてくれたイニシャルである「R」のキーホルダーに、同じくイニシャルが「R」のレックスの妻だったサスキアが食いついたことで二人は意気投合し、レイモンは簡単に彼女を車に乗せること、そしてクロロホルムで気絶させることに成功しました。

レックスは、その後彼女が何をされたのかを彼女に尋ねましたが、そこにパトカーがやって来たことで話は中断されてしまいました。

警官はシートベルトを着けていないレイモンを咎めようとしましたが、彼自身が閉所恐怖症だと明かしたことでその場は落ち着きました。

真夜中、レイモンはかつてサスキアを誘拐したあのドライブインに車を停め、水筒に入れていたコーヒーをレックスに差し出します。

そしてレックスに、コーヒーには睡眠薬が入っており、自分がサスキアに何をしたのか教えるためにはこれを飲む必要があると伝えます。

一度は断ったレックスでしたが、サスキアとともに木の根元に埋めたコインを見つけたことで、意を決してコーヒーを飲み干しました。

しばらくして、目を覚ましたレックスは全ての真相を悟りました。彼は棺桶のような箱に入れられ、地中深くに埋められていたのです。

サスキアのことを想いながらも、レックスは叫び声をあげます。しかしどうすることもできず、唯一の灯りだったライターの火も、次第に消えてゆきました。

ある日の休日、レイモンの家族は地中に人が埋められているとも知らず、無邪気に山荘で遊んでいます。レイモンはその光景をじっと見つめていました。

(C)1988 Published by Productionfund for Dutch Films

映画

 映画『ザ・バニシング -消失-』の感想と評価

(C)1988 Published by Productionfund for Dutch Films

本作はとても恐ろしい内容であり、奇妙な映画でもあります。

「女性が失踪し、彼女を愛していた男が行方と真相を探る」という基本プロットは、ノワール映画としてはオーソドックスです。最近なら『アンダー・ザ・シルバーレイク』や『バーニング 劇場版』も女性が消える話でした。

しかし本作の独自性は、観客の興味をある一点だけに集約させてから恐ろしいオチをつけることに成功している点です。

映画冒頭、サスキアがいなくなった暗闇のトンネルを走っていくと、出口から光が差して、そこに彼女がいるという場面があります。

この場面で観客は無意識にでも「暗闇の中でもとりあえず進んでいけば彼女に会える」という思いを画的に刷り込まれるのですが、実際の物語はその逆へと展開していきます。この映画的なミスリードも巧みです。

その後、サスキアが失踪してしまう場面もスリリングなのですが、本作はその直後に犯人のレイモン側の視点に移ります。

つまり本作は、犯人が誰かを追う映画ではないということです。

時制が戻り、彼の周到な準備が描かれます。特に山荘で家族にわざと叫び声をあげさせて、周りにどれくらい声が聞こえるのかを確認するという描写はゾワッとします。

しかし彼が何回も失敗する場面や女性との会話のシミュレーションをしている様は中々滑稽であり、家族とも平和に暮らしているので、いつの間にかそんなに悪い人に見えなくなってきます。

そして、3年が経ってもまだサスキアを探しているレックス側に視点が戻ります。

消えた恋人を追っている一方で新しい恋人を作っていたり、「もう生きているとは思わないが真相だけ知りたい」と借金までして捜索をしているので、今度は彼の方が、何だか理解できない人物にも見えてくるのが奇妙です。

そして、元々サイコパスで余裕綽々の男と、事件のせいでサイコパスに片足を突っ込んでいる男が邂逅してから、物語は真相に向けてドライブしていきます。

レイモンが犯行に至った動機や、なぜサスキアが選ばれてしまったのかも語られ、どんどん謎は剥ぎ取られゆき、最後には「その後サスキアはどうなってしまったのか?」という一点に観客の興味が集まります。

その頃には観客もレックスと心情が重なっているので、「睡眠薬入りコーヒーを飲め」などという、普通なら絶対にあり得ない危険な要求に対しても、「真相を知りたいから飲め!」と思ってしまうところが恐ろしい点です。

そして遂に求めた真相を知った時にはもう後の祭り。「さあこれが真相だ。で?どうする?」と言われているような恐ろしいオチで、観客の気分は奈落の底に落とされます。

ここまで人の好奇心を手玉にとった 映画は中々ないでしょう。

映画

恐ろしい運命のいたずら

(C)1988 Published by Productionfund for Dutch Films

レイモンは自分が閉所恐怖症でありながら、人を地中に埋めてしまうという恐ろしい計画を立てていました。

サスキアも冒頭のトンネルのシーンで取り残されてパニックになるところを見ると、閉所恐怖症の気があったと思われます。彼女は、どれほど恐ろしい思いをしたのでしょうか。

そしてレックスも、真相にとりつかれた結果、彼女と同じ運命を辿ります。

レイモンは特定の人をターゲットにしていたわけではないため、この結果はたまたまだったとも言えます。

しかし、この結末に至るまでの様々な偶然の積み重ねや示唆的なシーンが丁寧に描かれているので、もはやこうなるのが運命だったのではとも思えてきます。

あのドライブインに行かなければ、サスキアが一人で買い物に行かなければ、レイモンが最初に狙った女性を乗せるところまでいった時にくしゃみをしていなければ、レイモンが「R」のキーホルダーをプレゼントされなければ、そもそもサスキアが”レックス(Rex)”と付き合っていなければ…。

また、レックスたちが地中に埋めるコインやサスキアの語る金の卵に閉じ込められる夢なども、後の展開を示唆しています。

ファーストカットで画面に映される蜘蛛の巣にかかった虫や、インサートされる蜘蛛や獲物に忍び寄るカマキリも、虎視眈々と誰かが罠にかかるのを狙っているレイモンの姿と重なります。

恐ろしい脚本と巧みな映画的語り口が光る、伝説の映画と言われるのも納得の一作でした。

映画

まとめ

本作は結果だけ見ればバッドエンドですが、恋人同士が最終的に同じ運命を辿れた、或いは一人の男が歪んだ悲願を遂に達成したという意味ではハッピーエンドにも見えてきます。

レックスの立場に立った時、あのまま真相を知らずに生きるのか、それともコーヒーを飲んで恐ろしい体験をするか、自分だったらどうするか考えてしまいます。

劇場では様々な新作が公開されていますが、人間心理を巧みに突いた本作は30年の時を経ても全く古びていません

公開館は少ないですが、ぜひ逃げ場のない劇場で見て欲しい一作です。

(C)1988 Published by Productionfund for Dutch Films

The Vanishing(1988年映画) - Wikipedia

The Vanishing(1988年映画) - Wikipedia

The Vanishing(1988年映画) - Wikipedia

プロット

若いオランダ人夫婦、レックスとサスキアはフランスで休暇を過ごしています。彼らが運転する中、サスキアは金色の卵の中で宇宙を漂う繰り返し現れる夢を共有します。最近の夢で、別の人物を含む別の卵が現れ、彼女は二つの卵の衝突が何かの終わりを示すと感じています。

彼らの車はガソリンが切れ、休憩所で止まります。レックスはサスキアを決して見捨てないと約束し、二人は二人のロマンスの象徴として木の根元にコインを二つ埋めます。サスキアは飲み物を買うためにガソリンスタンドに入り、戻ってきません。レックスは必死に彼女を探しています。

しばらく前、裕福な家族を持つレイモンドは、密かに女性を誘拐しようと企てました。彼は孤立した家を購入し、クロロホルムを実験し、女性を自分の車に誘い込む方法をリハーサルします。最初の誘拐未遂が失敗した際、彼は負傷した運転手として支援を必要とする姿を装い、町外の休憩所へと行き、そこでは認識されません。

サスキアが失踪してから3年が経ち、レックスは依然として彼女を探しています。彼はニームのカフェで誘拐犯と会うよう招待するはがきを何枚か受け取りましたが、誘拐犯は決して来ません。レックスには知られていませんが、カフェはレイモンドのアパートの正面にあり、そこでレックスが待っているのを見ています。レックスの新しい彼女、リーネケは、しぶしぶ彼がサスキアを探すのを手伝います。ある日、レックスはサスキアに似た夢を抱き、その夢の中で彼は金の卵に閉じ込められました。執着に耐えられず、リエネケは彼から離れました。

レックスはテレビで公に訴え、サスキアに起きたことの真実だけを知りたいと述べました。レイモンドはレックスに対峙し、誘拐を認めました。レックスが彼と一緒に来れば、彼女に何が起きたかを明らかにすると言っています。彼らが運転している間、レイモンドは自らの精神病を認め、幼い頃から良心がないことを知っていたので、何でもできると述べました。若い少女を溺れかけた少女を救った後、彼は娘の称賛に値するかどうかを試すために、想像できる最悪の罪を犯すことを決意した。彼の見解では、真に善良な人になるのは、悪事を成し得る能力があるが、それを行わない選択を得る。レイモンドは、旅行販売員を装ってサスキアを自分の車に誘い込み、休憩所でサスキアを誘拐した様子を語ります。

その夜遅く、レイモンドとレックスは荒涼とした休憩エリアに到着しました。レイモンドは、レックスが警察の行動を脅すことを退け、犯罪と彼を結びつける証拠はないと述べました。薬を飲ましたコーヒーを注ぎながら、レイモンドはレックスに、サスキアに何が起こったかを知る唯一の方法は自分で体験することだと告げた。レイモンドが車の中で待っている間、レックスは何をすべきか分からない様子で激怒しています。何年も前に彼とサスキアが埋めた硬貨を掘り起こした後、彼はコーヒーを飲みます。レックスはしばらくして目覚め、地下の箱に生き埋めにされました

レイモンドは、妻と子供たちに囲まれた田舎の家でくつろいでいます。彼の車に座っている新聞は、サスキアとレックスの二重失踪に関する見出しを掲載し、二人の肖像は卵形の楕円形に描かれています。

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これから先はネタバレです!

異国から来て、アメリカを描いた制作者たち

 映画「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」の原作は、1952年にハリー・グレイという作家が書いた「The Hoods」です。ユダヤ系アメリカ人として貧困から犯罪に手を染めた自身の半生を、一部フィクションも取り入れながら、描いた作品だそうです。 グレイは、当時のロシア帝国だったキーウで1905年に生まれます。そして、家族でアメリカに移住。まさに映画のヌードルスです。

 監督セルジオ・レオーネはイタリア人です。イタリア人なのに長年西部劇を作ってきました。その集大成ともいえる「ウエスタン」(原題:Once Upon A Time In the West  1968)の次の作品として、この小説にのめりこみ10年以上も映画化交渉を続けました。かの「ゴッドファーザー」の監督するチャンスも断ったと言われています。

登場人物たちのバックグラウンド


 ここで、映画の登場人物たちの背景になにがあるのか?アメリカにおける移民の歴史について勉強しました。
 まずは、イングランドからの移民がアメリカにたどり着き植民を開始するのが1600年代から。特に1620年に、カトリックの改革を求めたプロテスタント、中でもさらに清教徒(ピューリタン)と呼ばれる人々がニューイングランドへたどり着いたことがよくアメリカ史の冒頭で語られます。そして、彼らがアメリカ社会のメインストリームとして活躍していくのです。

しかし、以降のアメリカの歴史は、終わりなき多様性を内包していく歴史でもありました。

ユダヤ系アメリカ人


まずは、この映画の主人公であるユダヤ系アメリカ人たちです。

 17世紀からスペインやポルトガルからの移民が始まり、1880年代になると爆発的に増え、それまでの10倍に膨れ上がります。東欧でユダヤ人迫害の風潮が高まったためです。ロシアをはじめ東欧の貧しい田舎出身のイディッシュ語を使うアシュケナージが200万人超アメリカに移り住みました。この流れは1920年代半ばまで続きます。主人公ヌードルスや、マックスやデボラ、モーなど主要人物は、みなユダヤ人コミュニティの人々です。 たぶん幼いころにアメリカに引っ越してきたのだと思われます。
 ニューヨークはいまだ最大のユダヤ人コミュニティを持つ土地で、映画の舞台もまさにニューヨーク。彼らは主にユダヤ教を信仰しており、映画でも過ぎ越しの祭りが描かれています。

イタリア系アメリカ人

 次は、イタリア系アメリカ人です。

1930年代にヌードルスが出所すると、マックスが新しい仕事仲間を紹介します。ジョー・ペシ演じるフランキー・モナルディです。マフィアの貫禄を漂わせるその佇まい。イタリア系アメリカ人で、宗教はカトリックです。ユダヤ教とルーツを同じにしますが、イエスキリストの登場後の新約聖書も彼らにとっては聖典ですので、宗教が違います。

 イタリア系アメリカ人も1880年代以降に移民した人が大半です。1870年代にイタリア統一が達成されたあと、旧シチリア王国に属した南部や島嶼部の住民は冷遇され、ニューヨークやニュージャージーを目指したというのです。彼らは先行したヨーロッパからの白人の移民に比べて、仕事・収入が限られていたことから、貧しい環境に甘んじざるを得なかったとされます。
奇しくもデニーロが、シチリア島で生まれ、ニューヨークのボスとしてのしあがるドン・コルレオーネを演じた「ゴッドファーザーPARTII」と同じ時代を描いています。(マフィアのイメージと結びつくことを嫌い、イタリア系アメリカ人からかなりの苦情が当時映画会社に寄せられたといいます)。
 
 ユダヤ系ギャングとイタリア系ギャングが手を結ぶというのは史実でした。20世紀の初頭にニューヨークギャングとしてその後名を馳せるラッキー・ルチアーノやフランク・コステロはイタリア系で、彼らは、ユダヤ系だったマイヤー・ランスキーやバグジー・シーゲルらと民族を超えて結びつき黄金の禁酒法時代を生き抜きます。
 
 「禁酒法」というワードがでてきました。
 少年時代として描かれる1920年(イタリア系アメリカ人に密造酒運搬を手助けして大儲けするシーン)から1933年12月4日(ヌードルスたちが銀行強盗をする前日)まで施行されていた法律です。今では考えられないこの法律も、イングランドから来たキリスト教プロテスタントたちの禁欲的な価値観が出発点にあります。

その裏で、マックスやフランキーなど後からきた移民たちは、禁酒法に理解も共感もせず、ここぞとばかりに密造酒やそれにまつわる地下酒場スピークイージーを経営したり、売春宿を経営したりと世間の裏で儲けようとしています。実際のギャングたちもこれまで窃盗や賭博に限られていた活動から、20年代を経てより巨大化、組織化をすすめたのでした。固定化されていた民族による階級社会をひっくり返そうという動き。言い換えれば、もうひとつのアメリカンドリームがここにあったのです。

アイルランド系アメリカ人

アイルランド系アメリカ人も重要な役柄で登場します。それは、組合の闘士ジミー・コンウェイ・オドネルが体現しています。トリート・ウィリアムズが演じています。

禁酒法時代に、注目された業種が輸送関係の仕事です。運転手や港湾での肉体労働。タフな仕事でした。オドネルは、トラック運転手組合(チームスター)のメンバーとして、労働者をまとめあげて経営者/彼らの雇うギャングと対立しています。ヌードルスたちは、彼の命を助け、次第に裏社会の世界に彼を引っ張りこんでいきます。

アイルランド系も1840年代からジャガイモ飢饉などが原因でアメリカへの移民が始まります。しかし、新大陸にやってきたのは後発でしたので、警察官や消防士や軍人など危険な仕事につく人が多かったといわれています。またカトリック系であることから、アメリカでの多数派であるプロテスタントのイングランド系からの差別を受けてきました。
 
ここにもモデルがいます。実在したチームスターの伝説的人物・ジミー・ホッファです。1931年に、仲間と過酷な労働を押し付ける経営と闘うため、労働組合を作り解雇されます。やがて彼は、タフな働きぶりで組合員数150万人というアメリカ最大の労働組合のトップに上り詰めます。しかし、長らくマフィアと癒着し、組合費を非合法な人脈に注ぎ込んでいたといいます。大統領も恐れる権力にまで上り詰めたさなか、1975年に突如失踪。82年に死亡宣告されますが、現在に至るまでその死は確認されていません。
こちらもデ・ニーロ主演の「アイリッシュマン」として映画化されました。 

中国系アメリカ人

そして、映画の冒頭とラストに登場するのが、中国系の人々です。
阿片窟のシーンで印象的に登場します。

中国系アメリカ人は、1880年には10万人いたとされています。西海岸のゴールドラッシュなどに沸く鉱山開発や大陸横断鉄道の労働者として多くが働いたといいます。しかし、金が枯渇して、その他の移民労働者と対立が鮮明化すると、1882年「中国人排斥法」が調印され、移民の流入を厳しく制限されます(1943年廃止まで続く)。彼らの中には太平天国の乱(キリスト教に刺激された)によって中国を追われた広東の人が多かったともいいます。宗教は、仏教・道教・儒教などが混交しています。

WASP

最後に、この映画では見えない存在になるアメリカのマジョリティーがいます。WASP、つまり白人でアングロサクソンで、プロテスタントという人たちです。

1968年のシーンで、マックスは「クリストファー・ベイリー商務長官」と名乗ります。このベイリーという姓は、イングランド系かスコットランド系に多い名字ということです。城壁に囲まれた砦などといった語源があるようです。まさにマックスが権力に上り詰め、秘密を守っていることを暗喩する名前ですね。

 そして、クリストファーという名前。これもイギリスで一番多い名前だったこともあるイングランド系の名前だそうです。その意味も「キリストを担う者」。マックスはキリストが生まれる前の旧約聖書を聖典とするユダヤ人だったはずですが、ここでは完全にイングランド系でキリスト教由来の名前を名乗り、完全にマイノリティからマジョリティに自らのアイデンティティを逆転させていることがわかります。アメリカンドリームを実現させるために、アイデンティティを偽る…悲しい復讐があったと読み取れます。
 

書き出してみると「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」の主人公たちは、アメリカに遅れてやってきて、差別に苦しんだ新移民たちです。
多様な民族、多様な信仰、多様な歴史を持つ彼らが、時に争い、時に手を組み、交錯した50年の時間の流れが行きつ戻りつ語られています。
 
同じ場所で同じ夢を見ていたはずの人々の「同床異夢」これが映画のテーマを大きくかかわってくるのです。
 
続きは次回です。