2025年1月22日水曜日

魔笛の公演映像データ

魔笛の公演映像データ
●ショルティ指揮のザルツブルグ公演
ゲオルク・ショルティ指揮、ウィーンフィルハーモニー管弦楽団、ウィーン国立歌劇場合唱団
演出ヨハネス・シャープ、美術ロルフ・グリッテンベルク、衣装マリアンネ・グリッテンベルク、照明フランツ・ペーター・ダーヴィト

■ザラストロ(ルネ・パーペ)、夜の女王(ルチアーナ・セッラ)、パミーナ(ルース・ツィサーク)、タミーノ(デオン・ファン・デア・ヴァルト)、パパゲーノ(アントン・シャリンガー)、パパゲーナ(エディット・シュミット・リーーンバッハー)、弁者(フランツ・グルントヘーバー)、モノスタトス(ハインツ・ツェドニック)、第一の侍女(インガ・ニールセン)、第二の侍女(イリス・ヴェルミオン)、第三の侍女(ヤード・ファン・ネス)、僧(ヘルベルト・リッパード)、第一の武士(ウォルフガング・シュミット)、第二の武士(ハンス・フランツェン)、少年たち(テルツ少年合唱団)
映像監督ブライアン・ラージ
1991年8月8日、ザルツブルグ祝祭大劇場公演のライブ。
NHK・BSプレミアム、ハイビジョン・アーカイブスで再放映(2011年10月16日未明)。北敏幸さんに見せていただきました。

▼序曲が終わったところで聴衆から拍手が起こり、ショルティが心なしか微笑む。ショルティの指揮はアリアでは悠然たるテンポで歌手によく歌わせるもの。「恋人か女房が」では鈴の音を表すチェレスタをショルティが弾いている。パパゲーノはオーケストラピットに下りて行ってショルティのチェレスタに合わせて歌うという演出。聴衆は大喜び。
 背景は竹林で、タミーノは着物を模した衣装である。パパゲーノは羽根飾りに覆われた原色(赤・青・黄・緑)の衣装。
 夜の女王のセッラはクリアな声質。パミーナのルース・ツィサークは、やや線が細い。タミーノ役のヴァルトは南アフリカ出身の歌手で、2005年に家庭内の争いから父親に射殺されてしまったという。
http://spider.art.coocan.jp/music/magicdata.htm

魔笛の公演映像データ

1974年11月30日ウィーン国立歌劇場でヘルツは「魔笛」に再度取り組み、これが伝説のフェルゼンシュタイン演出と並んで、 「魔笛」演出史上、近来最も注目された舞台上演であったと多くの人に評価されたものである。これはヘルツ=ハインリヒ版とよぶべきかもしれない。 ハインリヒのアイデアは演出上の重要な枠組みとなっているからである。「魔笛」が初演された地元ウィーンではこの演出が大変好評で、このプロダクションは長く続いた。 私が知る限り、グルベローヴァやポップといった国際スターが出演していない日でも、満席の盛況が80年代初頭まで続いている。 これと全く同じ演出で、1975年4月5日ライプツィヒ歌劇場でプレミエが行われ、1976年にこの上演をテレビ放映用に再録画したものが本ビデオである。 序曲とカーテンコールのみライヴ収録で、それ以外は、旧東独の国営テレビ局制作によりTV演出家ミールケらが一週間かけて録画し、編集したものになっている。 ・・・フリーメイスン解釈からの脱皮、パパゲーノの純粋さなどが際立つ演出である。 ・・・ヘルツとハインリヒはフェルゼンシュタインが夜の女王を冷たい原理で表現しようとしたのに対し、夜の女王にも言い分を認めようとしているのである。●イングマル・ベルイマン監督のオペラ映画『魔笛』
エリック・エリクソン指揮、スウェーデン放送交響楽団および合唱団。撮影スヴェン・ニークヴィスト。 編集シヴ・ルンドグレン。美術ヘンリー・ノアマーク,衣裳カリン・エルスキーネ&ヘンリー・ノアマーク。

■タミーノ(ドイツのテノール、ヨーゼフ・ケストリンガー)、パミーナ(イルマ・ウリッラ)、パパゲーノ(ホーカン・ハーゲゴード)、パパゲーナ(エリザベット・エリクソン)、 夜の女王(ビルギット・ノールディン)、ザラストロ(ウールリグ・コール)、三人の侍女(ブリット=マリー・アルーン、キルステン・ファウベル、ビルギッタ・スミディン)、 モノスタトス(ライナー・ウルフン)、弁士(エリック・セーデン)。
 1975年元旦放映のためTV用に演出された作品。 
 1973年製作のカラー映画。134分、歌詞はスウェーデン語、英語字幕付きビデオ。輸入品。
 2003年6月に日本でもDVDが発売された。お蔭でスタッフと配役が判明した。

▼演奏のテンポは遅め。女性はみな美人で、特に三人の侍女のチャーミングなこと(左の写真は最初の場面)。Bergmanビデオには配役のクレジットがない。ザラストロ役だけ箱に記してあった(ウールリック・コールド)。箱に書かれた他の名前にはヨゼフ・ケスリンガー、ビルギット・ノーディーン、イルマ・ウリッラがある。
 弁者は書物に囲まれた学者だった。パパゲーナは最初、老婆ではなく醜女。
 沈黙の行をしているタミーノとパパゲーノの二人のところに侍女達が来る場面、侍女たちは二人を誘惑する。
 雪の降る場面が美しい。パミーナの絶望の場面と、それに続いてパパゲーノの嘆きの場面である。魔法のベルが鳴って、パパパの二重唱が始まると、雪解けで花が開き始める。 パパゲーノとパパゲーナはぶ厚い毛皮のコートを脱ぎ始める。(二人が上着を脱ぐ演出の原点はベルイマンか?)
 ベルイマンは、タミーノとパミーナの試練の場を、この二重唱の後に移動していた。試練の火の世界では、半裸体の群像がうごめく。水の世界も同様な演出であった。
 夜の女王の軍隊は四十人規模で、黒い鎧を着ていた。

 序曲の演奏の際に観客席にいる人々の顔が映し出される。いろんな国の人の顔がある。なかでも10歳くらいの少女(ヘレーネ・フリベルィ)にベルイマンは魅せられる。 この少女のオペラに対する反応が挿入される。ただし、挿入はかなり唐突なので、舞台を中断してしまう。この観客の表情の挿入はあまり成功していない。 例えばタミーノとパミーナが試練を乗り越えると、ホッとしたうれしそうな観客である少女の表情が写る。 舞台と音楽でじゅうぶん感情は理解できるのに、さらにダメ押しをされたような違和感が残ってしまうのだ。
 天野祐吉氏は「(すぐれたオペラ映画のなかで)、ぼくにとってのベストワンは、ベルイマンの『魔笛』です。 あれはもう、序曲の映像化から仰天し、最後までベルイマンの魔法にかかりっぱなしでした」と証言。 天野氏はゼッフィレッリの『トラヴィアータ』やジョゼフ・ロージーの『ドン・ジョヴァンニ』、ケネス・ブラナーの『魔笛』も面白かったと評価しています。 (NHK教育テレビ『知るを楽しむ』2008年4月/カラヤン)。
 主要なアリアでは台板に書いた字幕(スウェーデン語)が出る。        (池田,2008年4月記)

 吉田秀和氏の"ベルイマン『魔笛』"評価があった(『僕のオペラ』海竜社、2010年)。
 "特に少女の顔が何度も出るのは、もしかしたら、この映画は、その少女の視点に映じた『魔笛』なのだという意味をもつのかな、という気もしたが、 目ざわりで、音楽をきく気持ちをなくさせ、つまらないことをする人だと思った。
 その後も、個々の気のきいた映像はあっても思いのほか平凡で、このくらいなら、普通のオペラのステージに向き合ってる方がずっと良いと思ったけれども、 相手は名だたるベルイマンだ。今に何か出て来るのではないかと、尻の痛いのもがまんして、結局、最後まで座り通したのが、良かった。 ・・・・ベルイマンはここで娘に対する母のコンプレックスという問題を提起しているのだ。 母である妻であった女性(=夜の女王)は、ある日、夫(=ザラストロ)が自分より、より若く、より美しい存在に成長した娘を愛しているのに気づく。 夫を娘にとられた妻なる女の怒りと悲しみ。成人した娘のために「女」の座を譲りわたさざるを得なくなる母の絶望と報復欲。 それが、ゆきずりの外国人(=タミーノ)であろうと、札つきの下劣漢(=モノスタトス)であろうと、とにかく娘を誘惑するよう頼みこむところまで、彼女をおいこむ。 言葉をかえれば、娘の処女剥奪をいちばん熱心に望むのは母親なのだし、ベルイマンの映画では、モノスタトスはほとんどその望みを達成したのだと見てよいようにさえ見える。
 しかし周知のように、彼女の報復は成就せず、王子と王女は、父親と彼の教団の人々の導きと監視の下に、試練を無事切り抜け、めでたく結ばれる。 その試練は火と水の中を潜りぬける形で示されるのだが、ここでベルイマンの思想のもう一つ奥のものが出てくる。 というのは、火の燃えさかる洞窟の中では、ヴァーグナーの『タンホイザー』に出てくるヴィーナスの洞窟さながら、裸形の男女のむれがひしめき、からみあっている。 水の洞窟も大同小異。その赤裸の肉欲の姿を尻目に、二人は無事地上に戻ってくる。 そうして、一同はここで「夜をおしのけ、永遠の王冠でかざられた美と叡智」をほめたたえながら、勝利を祝い、二人の結びつきを祝福する。
 原作にない、いや、かつてどんなオペラの演出家も考えなかった、この試練の場面を見ると、ベルイマンが性的なもの、 肉欲的なものを罪悪と感じ、そのけがれにまどわされぬものこそ真の勝利者だと考えていることが「よくわかる。これを見ると、 この二十世紀後半を代表する映画監督の一人は、何をどう表現しているにせよ、根底において牢固たるキリスト教的な思想を彼の芸術創造の根拠においているといわないわけにはいかない" (1977年1月20日「朝日新聞」より)

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