細胞からの圧力で0と1を表現するスイッチみたいなタンパク質
今回の発見によると、シナプスを取り巻くタリン分子は、折りたたまれた形状と、開いた形状の2つの安定的な状態を持っています。
タリンは機械的な圧力を受けることでこの形状を変化させ、まるでスイッチの0と1のように機能するのです。
細胞内には、細胞骨格という細胞を支えて安定させる繊維状の三次元ネットワークがあります。
この細胞骨格は、機械的な特性を持っていて、シグナルの伝達や細胞分裂など動的なプロセスに連動しています。
この細胞骨格がシナプス間のシグナル伝達を受けた際、小さな力を発生させタリンに圧力を与えます。するとタリンは形状を変化させて、シナプスにバイナリー形式の情報を記録していくのです。
これはシナプスに入力された情報に依存していて、新たな力が細胞骨格から発生すると情報が更新されます。
この機械的なコード化は、すべてのニューロンで継続的に実行されていて、すべての細胞に広がっていき、最終的には生物全体を調整するコードとして機能します。
生まれたときから、生物が経験したことや環境条件がこのコードに書き込まれていき、常に更新され、その生物固有の記憶が数学的に表現されることになるのです。
グルト博士によると「細胞骨格は、化学的・電気的シグナルに反応して細胞内の計算を調整するレバーや歯車の役割を果たしている」と説明しています。
それはまるで初期のコンピュータにそっくりな仕組みです。
この発見は、脳機能や脳疾患の治療における新たな理解の始まりになるかもしれません。
自然に生まれた生物の記憶が、コンピュータと同じ方法で情報をコード化して記憶していた、というのはなんとも不思議で驚きに満ちた発見です。
※この記事は2021年公開の記事を再掲したものです。
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