横溝正史:幽霊男
幽霊男
横溝正史によって書かれた作品。
探偵は、金田一耕助。
素人ヌード写真家にヌードモデルを紹介する仲介業者「共栄美術倶楽部」に、奇怪な男が訪れます。
その男は、長髪にベレー帽、黒眼鏡、顔が見えぬほどの襟巻き、長い外套という異様な格好をしています。
共栄美術倶楽部幹部の医者加納三作の紹介を受けたといい、ヌードモデルの手配を依頼します。
男は、自分の名を「佐川幽霊男」と称し、本名由良男をもじったものだといいます。
倶楽部支配人の広田は、幹部の紹介を無碍にするわけにいかず、結局小林恵子を斡旋することになりました。
指定された西荻窪のアトリエに行った以降、忽然と恵子は姿を消してしまうのです。
不審に思った倶楽部のメンバーは、アトリエに向かいます。
そこで血痕と、恵子を案じ突いてきた弟の浩二の縛り付けられた姿を発見します。
アトリエに不審な点を発見し、先に踏み込んでいた警察とともに恵子の行方を追います。
そんな折、近くの運送屋が幽霊男と思しき男にトランクをホテルに運ぶよう依頼されていたことがわかります。
一同は問題のホテルに行きます。
そこには胸を刺された恵子の死体がありました。
警察の捜査により、血痕の見つかったアトリエは、吸血癖のある狂人画家津村一彦のものであることがわかりました。
果たして津村が幽霊男なのかー?
↑ 微妙です。
ネタバレ感想
非常に微妙な作品です。
切断された死体とか、包帯ぐるぐる巻きとか、蜘蛛を愛でるとか・・・私の好きな怪奇の要素は多々あるものの、今一つのりきれていないです。
もっとも本格探偵小説としてではばく、通俗的ミステリとして書かれたものですから、ある程度小説的になってしまうのは仕方ないです・・・が、小説的だとしても、やっぱりのりきれていないです。
まず幽霊男が動きすぎです。
できれば幽霊男側の視点を排除し、あくまでも未知なる恐怖に追いつめられていく倶楽部のメンバーを描いたほうが怪奇色がさらに強まり、より面白くなると思います。
幽霊男の笑い方が滑稽すぎて・・・彼の視点をいっそのこと排除してもらったほうがよかったです。
死体描写はなかなか面白い発想だと思います。
ヌードモデルゆえにできることですからね。
花畑の足など見事な出来でした。
金田一はというと・・・結局いてもいなくても変わらないと思います。
毎度同じことを言っていますが、金田一が事件を解決したことはないと思います。
犯行を食い止めることもできず、ただいたずらに殺させています。
ほとんど犯人の目的が達せられようとしたときに、ようやく金田一がまともに動きますから。
金田一がいなくても、事件はおのずと収束に向かっていました。
ただ頭をもじゃもじゃさせ、自らの失態を嘆くしか能のない探偵など不要です。
もう少しヴァンス やエラリー のほうがスマートに探偵しています。
もっとも本作では本格探偵小説ではないので、探偵不足を嘆くのは意味のないことですが。
犯人は・・・犯人候補が多すぎて疲れてしまいました。
スクープをでっちあげるために幽霊男を創造し、犯人はその幽霊男という隠れ蓑を最大限利用したという点は面白いですが・・・「八つ墓村」 と同じようなものですね。
総じて非常に微妙な作品です。
エロスの香りがする作品ならC級の傑作、「華やかな野獣」 をお勧めします。
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