2024年8月18日日曜日

映画「安珍と清姫」 若尾文子,市川雷蔵  監督:島耕二 - 邦画評だけを見る

映画「安珍と清姫」 若尾文子,市川雷蔵  監督:島耕二 - 邦画評だけを見る

映画「安珍と清姫」 若尾文子,市川雷蔵  監督:島耕二

2017年03月01日 公開

上

 安珍・清姫伝説をもとにした、大人の日本昔話といった内容の映画。
 自由奔放なな姫、若尾文子(清姫)と、まじめ一徹な僧侶、市川雷蔵(安珍)、このふたりの魅力につきる映画です。
 1960年の映画ですが、今でも十分に鑑賞に堪えます。
 話はとても古く、平安時代から伝承され、紀州(和歌山県日高郡)道成寺という寺に伝わる話です。

 おてんばで勝ち気な清姫が狩猟の途中、姫が射た矢が流れ矢となって安珍の腕に当たってしまいます。これがふたりの運命の出会いでありました。
 安珍と連れの僧は、奥州白河より熊野に参詣に来た旅の僧であり、修行中の身でした。
 だから信心一途の安珍は、僧の戒律を守るため、傷の手当をしようと近づく清姫を避けます。清姫を美しいと思うが故に、なおさら避けます。そして安珍は己の煩悩と戦うこととなります。

 かたや清姫は、自身の過失を詫びつつも、自分を避ける、無視しようとする安珍に腹が立ちます。そのうえ、清姫は里の荘官(庄司)の美しい娘、プライドを傷つけられた思い。だから清姫はなんとか、安珍の僧の仮面をはがして、安珍の気を無理にでも自分へ引き付けたい。
 実はそれは安珍への恋だったのですが、清姫は自分のうぬぼれの方が勝り、恋とは気付きませんでした。
 ある夜、安珍が傷を癒やすため、里のいで湯にひとり入っていると、そこへ清姫が現れ、一糸まとわず湯に入ってきます。何やら妖しい色気さえ漂う姫は、安珍を誘います。そうして勝ち気な清姫は、安珍の心が自分に向いていることを安珍に白状させ、あたかも勝ったがごとく高らかに笑うのでした。

 しかしそののち、清姫は安珍への愛に気付きます。清姫は、煩悩に苦しみながら里を去り道成寺へ向かう安珍を追います。
 道成寺への途中、安珍は滝に入っての修行(滝行)のため、仮小屋に滞在します。そこへ清姫が追い付きました。
 そしてふたりは、ついに結ばれます。しかし悲しいかな、このふたりの愛は何処まで行っても悲恋なのです。僧の戒律を破った安珍は、煩悩の苦しみに加えて、自戒の念に苛まれていきます。

 安珍は姫から逃げるように道成寺へひた走ります。そして、彼を追う清姫は、とうとう川に身を投げてしまうのでした。
 その夜、道成寺の境内に異変が起きます。雷鳴と嵐のなか、大蛇に化身した清姫が・・・。

 余計なことですが、仮小屋でのシーンは、なかなか色っぽいです。ご注目。
 本作を観て思い出すのが、2016年の映画「仁光の受難」。これ、安珍・清姫伝説を下敷きにしています。ですが清姫ではなく、村の女達や山女。やたらモテる修行僧の女難の話、喜劇です。
 本作 「安珍と清姫」と同じく、平安時代の話として、女狐の化身との愛の話、内田吐夢の「恋や恋なすな恋」は、大川橋蔵と瑳峨三智子の競演。これもファンタジー作品です。
 若尾文子つながりで言うと、「初春狸御殿」。これはミュージカル。本作 「安珍と清姫」と同じく、若尾文子と市川雷蔵の競演。  
 ちなみに、本木雅弘主演の修行僧の映画「ファンシイダンス」は、僧自ら禁を破りまくるお話でした。
 以上、文中の下線部をクリックして、当該4作の過去記事をお読みください。


英語タイトル:The Priest and the Beauty
監督:島耕二|1960年|85分|
脚本:小国英雄|撮影:小原譲治|
出演:安珍(市川雷蔵)|清姫(若尾文子)|清姫の父で里の荘官・清継(見明凡太朗)|清姫と結婚したい里の長者・友綱(片山明彦)|連れの僧・道覚(小堀阿吉雄)|桜姫(浦路洋子)|早苗(毛利郁子)|増全(荒木忍)|義円(南部彰三)|佐助(花布辰男)|渚(毛利菊枝)|ほか

下


ここに、若尾文子が出演の作品を集めました。クリックしてお進みください。

若尾


島耕二 監督の映画


【 一夜一話の歩き方 】

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2017年03月19日 公開

上
直子と智広のふたりが行く。

 38分の短編映画です。短編ならではの、さらりとした良さがある静かな映画です。
 起承転結の、起・承が穏やかに推移し、ラスト近くで一気に、転と結が用意されているお話です。

 三重県いなべ市の郊外、田園地帯に、長男の智広(松田洋昌)と、歳の離れた高校生の妹、そして母親と祖母の一家4人が住んでいる。その妹は母親が再婚して生まれた娘らしい。
 そこへ智広の姉の直子(倉田あみ)がひょっこり、17年ぶりに帰って来た。幼児を抱えている。高齢出産は大変だったのよと言う。夫はあとから来るらしい。母親は仕事で夜にならないと帰って来ない。この話は、母親が帰宅するまでの数時間の物語。

 妹は直子を知らない。それほどに、直子はこれまで家に近づかなかったし、まったく音信不通だった。兄の智広から話を聞いた妹は、この人があの幻の姉なのねとつぶやく。
 直子は若い頃、家出をした。わけは、直子の英語の家庭教師をしていた男性だった。直子はこの年上の男を慕っていた。将来、この人と結婚してもいいと思うほどだった。ところが、この男は母親と一緒になった。そして直子は家を出た。その後、その男は世を去る。そんな17年を経て、直子が今日、帰って来たのだ。

 直子は智広を連れて、幼い頃を懐かしむように家の近所を歩く。そして直子は林に入って、昔、密かに土に埋めて隠したものを探し出す。それに付き合う、久しぶりの弟気分の智広。
 この姉弟がそんな散歩をするうちに夕暮れが近づく。五重塔のような展望台にふたりは登った。
 展望台からの見晴らしは素晴らしく、夕闇に浮かぶ街の灯りが遠くに綺麗に輝きだす頃。展望台に吹く風が、何か座りの悪いふたりの気持ちを揺らせて、ここよりも、どこか、ずっと向こうのどこかへ、ふたりの心を、ふっと奪い去って行くような、なぜかそんな心もとなさを智広は感じていた。

 直子は智広に、「会えて良かった」と言った。そののち、直子と智広はふたりして家へ帰るはずだったが、家に帰って来たのは智広ひとりだった。
 智広が玄関を開けると、母親が智広の帰りを待ちあぐねていた。母親は言った。「直子の夫だと言う男の人が来てるのよ...。」(あとは映画を観てね)

 滝のシーンはGoodだし、智広の妹がその友人と自転車に乗るシーンは、直子のこれまでを説明する為のシーンだが、自然で良い。だが、直子と智広が散歩するシーンが全体にやや冗長。広場で男4人がサッカーボールをけり合うシーンは、もうヒトヒネリしないとなんのこっちゃになってしまう。








監督・脚本:深田晃司|2013年|38分|
撮影:根岸憲一
出演:智広(松田洋昌)|直子(倉田あみ)|伊藤優衣|井上みなみ|望月皇希|康光岐|鈴木Q太郎|西田幸治|哲夫|桂三輝|ほんこん|


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