ロシア出身の29歳女性弁護士、「司法過疎」に悩む高知県四万十市に赴任…アニメ好きが高じて来日→司法試験突破
弁護士がほとんどいない「司法過疎」に悩む高知県南西部の
「あんたのこと知っちょる。弁護士さんやろう」
縁もゆかりもない高知県四万十市に赴任して半年あまり。通りすがりの住民から「あんたのこと知っちょる。弁護士さんやろう」と声をかけられるようになった。当初は外国人の自分が受け入れてもらえるか不安だったが、「地域になじめてきたと感じる」と滑らかな日本語で話す。名前は、名刺や裁判の書類などでも、日本人と同様に姓・名の順に名乗っている。
地域には約9万人が暮らすが、弁護士は3人で、女性は自分だけだ。これまでDV(家庭内暴力)による離婚調停や法人破産のほか、性犯罪などの容疑者に接見する当番弁護士の業務や交通事故への対応など、約60件を受任した。車で1時間以上かけて相談に来る人もおり、「頼りにされていると感じる」とほほ笑む。
ロシア中部イジェフスク生まれ。小学6年の頃、テレビアニメの「るろうに剣心」や「鋼の錬金術師」に夢中になり、「何が何でも日本に行く」と誓った。級友からは「変わり者」扱いされ、「登校したくない」と両親に泣きついたこともあった。日本は、現実から抜け出せる希望だった。
毎日、アニメやドラマの
2015年に日本政府の国費留学生として来日。京都大法学部を経て大阪大法科大学院に進んだ。法学を学ぶうち、「誰かの役に立てる仕事を」と弁護士を志すようになったという。
司法過疎を実感したのは、大学院時代に沖縄県の石垣島で経験したインターンだった。島で活動する弁護士は男性4人だけ。性犯罪やハラスメントの被害を相談しにくいと感じる女性もいると聞き、「地方の力になりたい」と強く思った。
22年に司法試験に合格し、翌年に弁護士登録。東京の法律事務所を経て、日本弁護士連合会(日弁連)などが運営を支援する「中村ひまわり基金法律事務所」(四万十市)に派遣され、今年7月に6代目所長に就任した。
任期は3年。母国の両親からは「離れて過ごすのは寂しいが、日本でやりたいことをやりきってほしい」と言われている。ミロノワさんは「相談者に少しでも寄り添えれば。成長する姿を見せ、弁護士を目指す人らに地域で働く魅力を伝えたい」と力を込めた。
日弁連の公設事務所 「ゼロ地域」解消
ひまわり基金法律事務所は、日弁連が2000年に司法過疎対策として始めた公設の法律事務所だ。弁護士の会費を主財源とする基金から、開設・運営資金を援助している。
これまで全国125か所に設置され、現在は29か所で運営されている。
弁護士が不在か1人の「ゼロワン地域」は、1999年に地裁・支部単位で73か所あったが、現在は「ワン地域」が岡山県に1か所あるだけになった。
ゼロワン地域が減った背景には、89か所の「ひまわり」で、原則3年の任期を終えた所長が任地に残り、個人の法律事務所を開業したことも大きい。
兵庫県淡路市で4月に事務所を開いた星野拓哉弁護士(38)もその一人だ。埼玉県出身だが、「ご飯がおいしくて人も良い淡路島の魅力にひかれた」と話す。
人口約12万人の島内に弁護士は7人いるが、淡路市では星野さんだけ。「ゼロ地域が解消されても弁護士は慢性的に足りていない。地方の魅力を呼びかけていきたい」と語る。
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