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今、世界のあちこちで起こる争いや戦争の光景は、「地獄」のように凄惨なものだ。
この悲劇を前に、大人も若い人も子供も、未来に希望や明るさを持てないでいる。
先の見えない不安な世界で、私たちはどう生きるべきか。それが問題だ。
世界中の誰もが、答えを求めている。
父を殺された中世デンマークの王女スカーレットが、
復讐に失敗して堕ちた 「死者の国」で、仮死状態でやってきた現代日本の看護師の青年と出会い、 旅をする。
王女の最終目的地は、「見果てぬ場所」と呼ばれる天国のような所。 そこにいる絶対に許せない父の仇に復讐すること。
もしできなければ、虚無となり存在が消え去ってしまう。血だらけ泥だらけになりながら、彼女は父の仇を追い求める。
現実主義な王女と理想主義の青年は、何もかも対照的で、事あるごとに衝突する。
だが旅の中で、両者は対立を超え、やがて信頼とささやかな愛情を育むことになる。
果たして王女は、憎き父の仇に、復讐を果たすことができるのか?
それとも青年は、復讐を超えた人生の価値を、王女に示すことができるのか?
復讐劇の古典、シェイクスピアの『ハムレット』は、「生きるべきか死ぬべきか」、
つまり、より自分らしい生き方とはなにか、を説いた。
400年後の現代でも、私たちは同じ問題を突きつけられている。
先の見えない今、私たちの苦悩と葛藤、 そして希望はどこへ向かうのか。
不自由の中で自分らしく生きることができず、自由を求めている人は老若男女を問わずたくさんいる。
映画『果てしなきスカーレット』は、死者の国を旅する男女が 「生きる」ことを見つける物語である。
血と泥にまみれた死者の国を描くのは、生きづらい現実の切実な反映であり、逆説的に現世を肯定したいがためである。
「死」を描く、 とは、つまり「生きる」を描くことなのだ。
人は何のために生きるのかを問う、骨太な力強い映画を目指したい。
今、この「生きる」という大きなテーマを、観客と一緒に考えたい。
―細田守

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