2025年3月19日水曜日

悪霊島(ネタバレ多数): 松茸御飯の付け合せ、ココログ版

悪霊島(ネタバレ多数): 松茸御飯の付け合せ、ココログ版

 浅井は当時モグリの助産婦だったのだが、その伝手で『望まれなかった子』と『子供が欲しい夫婦』との間で新生児の斡旋をしていた
 『子供が出来ない夫婦』だった三津木(五郎の親)と刑部大善の間で生まれた子をやり取りする筈だったのだが、上記理由でその取引が不可能になり、当時別に御産した磯川(警部の妻)の子を盗み逃亡、三津木に与えた…コレが浅井の罪(その2)である
 詰まり、三津木五郎は岡山県警警部:磯川の実子である
 鹿賀版・JET版ではシャム双生児、その後の赤子殺し、浅井の恐喝については原作と同じく描かれているが、五郎の出生についてはナニも説明していない…つまり、五郎の産みの両親は事件とは無関係扱いである
 鶴太郎版ではTVでシャム双生児(一種の奇形児)の扱いは難しかったのか、普通に1人の子供として出てくるが、コレは本当に死産であった…ソコで終れば良かったのだが、浅井は大善と結託し、事前に新生児を渡す約束をしていた三津木に義理立てする為、他所から子供を盗んで三津木に与えた…コレをネタに浅井から脅迫される事になる
http://bisa-matsutake.cocolog-nifty.com/blog/2016/10/post-93fb.html

悪霊島(ネタバレ多数)

 やっと悪霊島のレポが出来るwww
 手持ちの資料を全部再確認する為に結構手間取った…まぁアニメ見てたり結構寄り道してるんだがwww

 さて、悪霊島…横溝正史の絶筆であり、構想はまだ続いたとされているが、金田一シリーズの最終作である
 雑誌連載終了後直ぐに映画(鹿賀版)が製作開始され、翌年公開、その2ヶ月後に横溝氏が永眠された
 上下巻の作品だが、同じく上下巻である『病院坂~』と違い、解決までに何十年と時間を空けた作品では無い
 まぁ事件の舞台が昭和42年(原作)なので、既に金田一は50歳を超えて(設定では生年は大正2年)おり、ソレから数年掛けて1つの事件を追う様な体力は無いだろうwww

 さて、ネタバレに入る前に今回比較する作品群を列挙する

劇場映画
 1981年 金田一:鹿賀丈史、監督:篠田正浩(上映時間131分)

TVドラマ
 1991年 金田一:片岡鶴太郎(2時間半ドラマ)
 1999年 金田一:古谷一行(2時間ドラマ)

 流石に横溝氏晩年の作だけにメディア化が少なく、コレで映像化は全部である
 漫画は今回取り上げる、私が先日購入出来たJET作、他にもたまいまきこや作画:前田俊夫・構成:橋本一郎と云った諸氏が漫画化しているらしい…たまい版は読んでみたいんだが…電子書籍で良いから読めないかなぁ…

 さて、コレから本格的な比較に入る
 対象は原作・鹿賀版・鶴太郎版・古谷版・JET版の5作である
(鶴太郎版を片岡版としないのは、私は1作も見た事は無いが、片岡千恵蔵も金田一を演じているからであって、他意は無い)
 では、取り敢えず数行空けてから本題に入ろう





 さて、先ず舞台だが、原作では上記の通り昭和42年の6月後半に金田一は岡山に来ているのだが、島には渡らずにウダウダして、結局島に渡ったのは7月に入ってからで、事件の全てが解決したのは7月14日だったと思う
 場所は岡山県の瀬戸内にある島の一つである刑部島、下津井(倉敷市の漁港)から船が出てると云う事だから、中央西よりの辺りだと思われる
 余談だが、倉敷の直ぐ北が総社であり、八つ墓村はじめ幾つかの岡山編で登場した乗換駅があるとされている
 鹿賀版は最初のシーンは昭和55年、ジョン・レノンの訃報を、成長してTV局勤めになった三津木五郎が知る所から始まり、11年前を回想する事から事件の舞台に移る…つまり、事件は昭和44年に起きている
 場所も広島県となっており、刑部島と云う離島が舞台なのは間違いないが、原作よりも更に西に設定されている
 原作では岡山県警の警部である磯川も、この映画では広島県警の警部となっている
 また、上記の通りジョン・レノンの訃報から回想するので、鹿賀版では五郎が事件に関する印象として、ビートルズが切り離せないのだろう、初来日は昭和41年の筈なので、別に42年のままで良かったのに、何故44年にしたのかが不明である
(しかも、BGMで使われたビートルズの楽曲は『Get back』と『Let it be』って…両方ともポールの歌で、ジョンと関連付けるのはねぇ…)
 鶴太郎版は昭和28年7月と明記されている、場所は原作と同じく岡山側の離島であり、本土側には下津井の地名も出ている
 事件の発端として青木修三の今際の際に口にした言葉を旅行者がテープレコーダーに録音していた事で始まるのだが、東京通信工業(後のSONY)が国産初のテープレコーダー『テープコーダーG型』を作ったのが昭和25年、持ち歩き可能な様に木製トランク型ケースに入れたH型が翌26年発売なので、この年代にしたのだろうと思われる
 古谷版では時代設定に明示が無い…しかし、交わされる会話等から昭和36年前後(刑部真帆の生年が昭和16年、コレを20年前と称している)と推察される
 場所は岡山県下津井の地名が明示され、ソコから離島(刑部島)に渡って事件が展開する
 JET版では原作に近いが昭和42年7月に岡山入りをしている…コッチの金田一はグズグズせずに直ぐ島に渡っているので、事件の本番は原作に近い日程の筈である
 やはり原作通り54歳の金田一…と云うのは演じるのは難しい(特に、今回は金田一も命の危険が有った話だしねぇ…)のだと思うが、全体的に年代を前倒しにしている
 更に、役者の都合を考えない漫画版でも結構若く描かれている
(尤も、原作でも金田一は若い頃から年齢不詳に見える様に書かれているが、晩年の作品では逆に60に届いた筈の『病院坂~(下)』でも30台で通る様な形容をされているが…)
 まぁ『金田一=昭和中期』が暗黙の了解で、昭和40年以降に『金田一耕助が活躍していた』と云う事を本能的に忌避していたのかも知れないがwww
(まぁ事実、昭和40年以降に金田一が活躍する話は本作と『病院坂~』の下巻だけなのだが)

 金田一の来島動機であるが、原作ではシッカリ仕事である
 最初に瀕死で発見された青木修三と云う男は、今回の依頼人である越智竜平の秘書であり、身分を隠して島での竜平の評判等を確認する役目を負っていた
 しかし、コレが音信不通となったので調査…と云う依頼だったのだが、実際調査開始直後に死亡が確認された為、死因や他殺の場合は犯人を調査する様追加依頼がされている
 鹿賀版・JET版では、その点は原作と同じとなっている
 鶴太郎版では完全に休養で来ている事になっている
 鶴太郎版はシリーズが9作作られているが、その2作目が本作で、前作が獄門島(この時点で順番とか色々オカしい)…この事件の関係で、瀬戸内の島で休むのが好きになっていた、と自ら説明している…島に向かう船で青木が海に浮いているのが見付かり、事件に関わっていく
(磯川担当の事件にも巻き込まれるのだが)
 古谷版では、原作では磯川に来ている筈の浅井はるからの手紙が金田一に来ており、その依頼の為に岡山に来ている
 原作と同じく、浅井の家に着くと、既に浅井は殺されており、その犯人を見付けるべく島に渡る
 こう書くとナンか凄い格好良い探偵に見えるのだが、普通に考えれば金田一はイキナリ手紙を送られてきたから来ただけであり、死体と対面したって別に生前ナンの約束も交わしていない、本当に見ず知らずの老婆である…別に犯人探しに乗り出す必要も義理もナンにも無い
 警察に届けたのだから、義務も果たしており、誰からの依頼も受けてないので、報酬も出ない…趣味で探偵してる訳ぢゃ無いんだからさ…ソレで飯食ってんだろ?
(最終的に、河合(古谷版の磯川に該当するシリーズレギュラー)から調査経費は貰っているが、事件解決の報酬(何故か警察から報酬が出た様で…公僕の経理はどうなってるかね?www)は河合に返している…当面の食い物として干し芋だけは箱単位で貰っていたがwww)

 登場人物としては基本的に幾つか分類される
 刑部一族としては大善と姪の巴、巴の入り婿で神社神主の守衛、巴の娘の真帆と片帆(双子)、端役だが島の村長も刑部の血縁である
 越智は島で昔からの網元をやっていたが、網元制度が無くなり、単なる顔役程度になっており、刑部一族の下に見られている
 そんな中、アメリカに渡って財を成した本家嫡男の竜平、竜平の姉の多年子、従兄弟だが竜平が巴と駆け落ちした際に刑部側に付き、以来、刑部神社の下男をしている吉太郎、血縁では無いが竜平の秘書が物語最初の犠牲者:青木修三と、島での事業を竜平の名代で取り仕切っている松本克子が居る
 他、過去に父親がこの島周辺で消息を絶ったと云う薬売りの荒木定吉、同じく若頭領を島周辺で消息不明にした神楽太夫の一座、最後に自分の『本当の両親』を探しに来た若者である三津木五郎辺りがメインの登場人物か
 基本、鹿賀版・JET版では、ほぼ全員が登場している
 ただ、鹿賀版ではオリジナルキャラとして、巴の双子の姉『ふぶき』が存在している事になっている
 鶴太郎版でも、これらの人間は、比重が非常に軽くなった存在は有るモノの、取り敢えず登場していると思って良い
 ただし、三津木五郎は三津木五十子と名・性別が変わり、シリーズレギュラーの牧瀬里穂が演じている
 古谷版は…此処辺りから変わってくるんだなwww
 実は古谷版は以前紹介したつのだじろう版手毬唄程では無いのだが、結構話が違っている…被害者や犯人は同じなのだが、ソコに至る経緯がカナリ変わっている
 刑部一族では、先ず片帆が居らず真帆は一人娘として育てられている
 越智では松本克子の位置に越智勝子と云う別の血縁が入り、更に多年子は貰い子として血縁の無い男を育てており、竜平の義理の甥になるその男は拓郎と云うオリジナルキャラである
 更に吉太郎は竜平の従兄弟でもナンでもなく、ただ島出身の前科モノを巴が重宝したから懐いてるだけ、と云う設定になっている
 更に古谷版では三津木姓の登場人物が削除されている…物語で重要なキャラなのに削ってる辺り、その改編具合が判ると云うモノだろうwww

 さて次に被害者だが、発覚順で云えば原作では青木修三・浅井はる・刑部守衛・刑部片帆・妹尾松若(神楽太夫)・荒木清吉(定吉の父)・山城太市(昭和36年頃に島周辺で行方不明になった人形遣い)・越智吉太郎・刑部巴(ただし、遺体は発見されず)の9人である
 過去の話として、巴が真帆・片帆の前に産んだ子が死んでいるが、コレの話は後にする
 鹿賀版では、山城が存在せず、若松と清吉だけが過去に殺されている事になっており、巴は事故死、事件の解決時に大善が自害している
 鶴太郎版でも、やはり山城が存在しておらず、若松と清吉だけが過去に殺されている、後は基本、死人は同じである
 古谷版は、吉太郎は死んでいない…神楽太夫は若松では無く、更にその父である四郎兵衛となっており、片穂・荒木は存在しておらず、山城も当然の様に省略されている…ただ、半オリキャラの勝子が殺されている
 JET版でも山城は名も出ずに『人形遣い』とだけ描かれ、他の行方不明被害者の遺体と一緒に骨だけ描かれている程度(実際、原作でも山城については、取って付けた様に『実はもう1人、過去に行方不明の男が届けられていて…』と調べたら殺されてる事が判った、ってだけで、基本的に物語に殆ど影響していないのだ)で描かれている

 次は其々の殺害方法になるが、共通しているのは青木は崖から突き落とされ(その前に殴られてるかどうかの違いは有る)、浅井は絞殺で自宅放置(古谷版では押入れっぽい収納に隠されていたが)、守衛は『竜平が神社に寄進した黄金の矢』で串刺し、片帆が絞殺の上で島の人里離れた谷に隠され野犬や烏のエサになりかけた…辺りだろうか
 コレらについて、守衛は『純金製の矢で胸を刺し貫かれている』と云う状況は共通しているが、原作・鶴太郎版と古谷版は背中から刺されているのに対し、鹿賀版とJET版は前から刺されている違いが有る
 また、原作を含め殆どの作品で一度刺された矢は心臓辺りで一度止まり(ソレで死亡している)、後から更に強い力で貫通させられている…コレは真犯人を『見てしまった』三津木五郎が犯人を庇う為に更に力を加えて死体損壊をした訳だが、五郎が女性である鶴太郎版では犯人が一突きに刺し貫いている(まぁ…コレは『女性では人体貫通は無理だから庇い立てになった』ので、同じ女性である五十子では確かに意味が無い)し、五郎が『存在しない』古谷版では竜平が事後共犯を買って出ている
 更に片帆についても人里離れた(と云うか昔は里の一部だったが、過疎化と共に不便な土地から人が居なくなった関係で完全無人と化した元集落)に放置、と云う点ではほぼ共通(鶴太郎版では、その辺りの説明は無く、人里離れた場所で埋められていた)で、烏や野犬のエサになりかけていたが、鹿賀版と鶴太郎版では野犬が片帆の腕を食い千切って人里に咥えて降りてきた事から死体発見に繋がった
(原作では片帆捜索に行った吉太郎が野犬に襲われ、ソレを倒した後に見付け、JET版では死体が打ち捨てられた元集落周辺上空に烏の集団が飛んでる事に気付いた吉太郎が見付けている)
 次に、過去に殺されていた行方不明3人衆(笑)だが、一応まとめるとこうなる
(本筋の事件の年と併せて見た方が理解し易い)
 被害者:犯行年:殺害方法を並べてみた
 ちなみに、全ての共通事項は犯人である女性との情事の後に行われた殺人である事、そして死後は全身骨にされて紅蓮洞で子守役(後述)として飾られていた、と云う事である

原作
 事件:昭和42年
 山城:昭和36年:下腹部を切り取られる
 荒木:昭和33年:喉笛を噛み千切られる
 妹尾:昭和23年:舌を噛み切られて

鹿賀版
 事件:昭和44年
 妹尾:昭和39年:方法は語られず
 荒木:昭和34年:方法は語られず
 山城:存在しない

鶴太郎作
 事件:昭和28年
 荒木:昭和21年:喉を小刀で切り裂かれる
 妹尾:昭和19年:舌を噛み切られて
 山城:存在しない

古谷版
 事件:昭和36年
 妹尾:昭和21年:犯人を強姦中に石で殴り付けられ(過剰防衛?)
 荒木:存在しない
 山城:存在しない

JET版
 事件:昭和42年
 山城:昭和35年頃:語られていない 
 荒木:昭和33年:語られていない
 妹尾:昭和27年:語られていない

 こうして見るとソモソモの舞台となった年がJET版以外の全作品で違うので、犯行年も一致する訳が無いのだが、鹿賀版では犯行順まで見事にバラバラだと云う事が判る
 殺害方法が微妙に似ているのは面白いが、やはり此処でも古谷版は話が6~8割違うので、結構な差が出てくる

 吉太郎は殆どの作品で共犯となっているのだが、原作では最後の謎解きの場所:紅蓮洞で金田一一行(竜平・真帆・神楽太夫一座)相手に猟銃で皆殺し寸前の所を隠れていた神楽太夫の1人に射殺される最期を遂げる
 しかし、映像化作品ではソコまで神楽太夫一座が活躍する作品は無く、鹿賀版では暗闇での凶行に及ぼうとして大善に刺し殺され、鶴太郎版では竜平を殺そうとして大善から『竜平は私が殺す』と斬り殺され、古谷版では完全に端役であり、後半殆ど出番が無い(当然死んでもいない)
 JET版では竜平を殺そうとして巴に鋭利な岩で刺され、瀕死になりながらも巴を撃ち、瀕死にした巴を連れて崖から身を投げた

 巴も全ての作品で違う死に様を見せている
 原作では全ての犯行が明るみに出た後、逃げ切れない事を悟った竜平が秘密裏に絞め殺して海に捨てた(と、金田一が推理するが、遺体が上がらず、立証されずに物語が終る)とされる
 鹿賀版では自分の子供のミイラ(産んだ直後に巴自身の手で絞め殺した)を破壊された(吉太郎が猟銃で粉砕)事に錯乱し、探し回ってるウチに紅蓮洞に有った縦穴から落ちて絶命する
 鶴太郎版は竜平を撃ち殺そうとした大善から竜平を庇って撃たれた
 古谷版では全ての謎が解かれた後、我が子らへの手紙を金田一に託して崖から身を投げた
 JET版では錯乱中に吉太郎に撃たれた上、半ば無理心中っぽく吉太郎と崖から落ちた

 後は各作品で追加で死んだりオリキャラだったりの面子だが、大善は死亡率こそ高くはないが、作品毎に違う結末になっている
 原作では真相を知って…その凄惨さに度肝を抜かれて完全に改心した様子である
 鹿賀版では、吉太郎・巴が死んだ後、吉太郎の猟銃で自害している
 鶴太郎版では、やはり吉太郎・巴が死んだ事で自殺を謀るが弾切れで失敗、ナニかが切れたのか一気に呆けて仕舞い、ボケ老人の体を成して生き残る
 古谷版・JET版では、原作と同じく事件に直接は関係しておらず、後の描写も無い
 最後に古谷版での勝子だが、縄で絞め殺された上、神社の山門に吊るされる状態で見付かった

 犯人は巴で完全に共通しており、共犯者について各作品で若干変わっている
 原作では吉太郎のみ共犯で、大善は『薄々気付いているが、敢えて目を瞑っている』状態で、積極的な共犯関係には無い
 ただし、浅井の殺害は大善の命で吉太郎が実行している
 鹿賀版では吉太郎の共犯は変わらないが、大善も共犯の一人となっており、犯行の隠蔽だけでなく片帆の遺体遺棄等の実行犯も行っている…更に、紅蓮洞を突き止めた金田一を殺害しようとするも暗闇で間違い、吉太郎を殺害、巴の最後を見て自害する
 鶴太郎版では基本的に吉太郎は共犯な訳だが、片帆を殺害したのは吉太郎になっている(原作では巴)…島を出ようとする片帆を取り押さえる際、力加減を誤って…と云う形である…しかし、ソレを知った巴は吉太郎を責めもせずに遺棄に手を貸す異常さである
 更に、最後に紅蓮洞で竜平を殺そうとした吉太郎を殺したのは大善である
 大善はほぼ原作と同じく消極的に『感付いているが関わらず』のスタンスだったが、紅蓮洞で竜平を殺す段になって自ら竜平を殺す為に吉太郎を斬殺、改めて竜平を狙って放った銃弾は巴を撃ち抜き、絶望した大善は自殺を謀るも弾切れで死ねず(吉太郎を斬り殺した日本刀はどうしたwww)、呆けてしまう
 古谷版では完全に巴の単独犯で、吉太郎さえ共犯に使っていない
 JET版はこの辺りに付いては原作準拠で描かれており、大善は消極的に目を瞑っている感じであるが、ラストには登場しなくなるので、改心した描写もない
(紅蓮洞への行き方は金田一に語るが、それ以降の描写がない)
 上記から、大善が死んだ或いは自殺を選んだ各作品での大善は、飽くまで『巴を愛していた』だけで、刑部の一族がどうのこうのとは考えて無い事が判る
 血縁としては真帆が残ってる訳で、刑部一族が絶える訳では無いのを完全に意識の外に放っているのだ

 さて、事件の核心に近付いた話になるが、巴が過去に産んだ子供の話と浅井が殺される理由になった『過去の罪状・ソレをネタに生きてきた』とされる事象について比較する
 取り敢えず、各作品共通事項として、過去に巴は竜平との間に出来た子供を産んでいる
 原作では、ソレはシャム双生児として、腰の部分で1体に繋がった双子であった
 コレを見た途端に巴は『発作』を起こして精神錯乱、誰の目も向いていない隙を突いて自分の子を殺して仕舞う
 本来、刑部(大善)としては、廃棄してしまいたい『越智との子』であるので、秘密裏に里子に出す事を計画していたが、巴が殺して仕舞った事で、有る意味、その手間は無くなった…が、コレを知った助産婦だった浅井に恐喝の材料にされる事になった(浅井の罪その1)
 浅井は当時モグリの助産婦だったのだが、その伝手で『望まれなかった子』と『子供が欲しい夫婦』との間で新生児の斡旋をしていた
 『子供が出来ない夫婦』だった三津木(五郎の親)と刑部大善の間で生まれた子をやり取りする筈だったのだが、上記理由でその取引が不可能になり、当時別に御産した磯川(警部の妻)の子を盗み逃亡、三津木に与えた…コレが浅井の罪(その2)である
 詰まり、三津木五郎は岡山県警警部:磯川の実子である
 鹿賀版・JET版ではシャム双生児、その後の赤子殺し、浅井の恐喝については原作と同じく描かれているが、五郎の出生についてはナニも説明していない…つまり、五郎の産みの両親は事件とは無関係扱いである
 鶴太郎版ではTVでシャム双生児(一種の奇形児)の扱いは難しかったのか、普通に1人の子供として出てくるが、コレは本当に死産であった…ソコで終れば良かったのだが、浅井は大善と結託し、事前に新生児を渡す約束をしていた三津木に義理立てする為、他所から子供を盗んで三津木に与えた…コレをネタに浅井から脅迫される事になる
 ただ、この三津木に与えた赤子は『何処かから』としか話されず、結局、五郎の両親は『事件に関係なく、不明』と云う事になる
 古谷版では完全に話が違う…登場人物で紹介したが、真帆が一人っ子として育てられ、竜平の姉が貰い子をして甥が1人いる訳だが、コレが巴と竜平の子で、双子だったと云う超展開であるwww
 『越智との子』を許せなかった大善が、巴の産んだ子を二人とも里子に出す事を画策するが、男だけ貰い手が付き三津木と云う家に貰われる…女は貰い手が無い上、巴が我が子愛おしさで離さなかったので、他所から貰い婿をして、巴と婿の子として育てる事と決めた…結局、三津木は経済的に育てきれずに竜平の姉に里子に出すが、ソモソモが三津木は『刑部の子』としてしか聞かされず、竜平との関係は全く知らずに里子に出している
 その全てを知った浅井と、越智の貰い子のルーツを知った守衛は、コレをネタに大善を恐喝する…しかし、罪の意識に負けた浅井は全てを清算しようと越智の貰い子のルーツを他に漏らし始めた
(ソレを聞いたのが妹尾で、ソレをネタに巴を脅迫、関係を迫った)
 結局、巴は全てを知った上で、これ以上の情報拡散を恐れて浅井を殺害した、と云う形である

 犯行動機は、この『浅井の罪』ってか『竜平と巴の子供』に由来する
 原作では、巴の境遇として、竜平は(本来、島の網元嫡男、と云う事で不在になると政治的に困る立場として免除されていた筈の)兵役に取られ、我が子は奇形として自分で殺すと云う発作を起こしたが、以降、竜平に比較的体格の似た男を見ると発作的に誘惑・関係を結ぶ様になった…ソコで山城・妹尾・荒木等と関係を持つが、フと意識が戻ると竜平では無い男と抱き合ってるので、発作的にコレを殺害していた
 此処で更に発作時の人格が『動けない(そりゃ死んでるしねぇ)我が子の子守役として、コレらも我が子の近くに』と紅蓮洞に一大死体祭りが始まる
(白骨化させたり、釣り糸で固定したりは吉太郎が行った)
 その詳細は判らずとも島の秘密を微妙に感づいた(自分に優しくしてくれていた大人等、数人が行方不明になっている)片帆は秘密裏に島からの逃避を考え、実行するが『自分の元からいなくなる』事を危惧した巴が発作的に片帆をも殺した…となる
 更に守衛については、竜平がその財力にモノを云わせ、巴の身柄を貰い受ける契約を結ぶ(金銭と交換に離婚届を書き、守衛は島を出る積もりだった)事が発覚(まぁ巴の認めも必要な事だからなぁ)し、ソレが発作の引き金となり、その場に有った『寄進された黄金の矢』で一突き…と、云う顛末である
 鹿賀版では基本的に顛末は同じだが、この『発作を起こした時の巴』を戦争中に広島原爆で死んだ巴の双子の姉『ふぶき(映画オリジナル設定)』としてカモフラージュし、巴が島で起こす発作的な奇行は全てふぶきの所為であるとし、物語終盤では吉太郎・大善が共謀してふぶきが崖から身を投げたとカモフラージュ、事態の終息を企てた
 ただ、変更点が2つ有り、1つは片帆の殺害動機だが、片帆は神楽太夫の息子兄弟の兄・誠と恋仲になっているオリジナル設定が作られた…コレにより、人目を忍んで逢瀬に励んだ二人を巴が目撃、竜平と駆け落ち騒ぎを起こしていた記憶から発作を起こして一人になった片帆を殺害している
 2つ目は、守衛が殺害される動機について、竜平の目的は『巴を取り戻す』では無く、『刑部神社・刑部島の権威を叩き落す』事であり、神社の土地権利書を買い取り、本殿以外の全敷地をレジャーランドとして、神聖も何も貶めて仕舞う…と云うモノだった
 鶴太郎版でも鹿賀版と同じく、神社の土地権利書を売る話で進んでいたが、コレは守衛にも大善憎しの感情が篭っていた事が描かれている
 古谷版では、完全に話が違うので比較も何も無いのだがwww、竜平の甥:拓郎と真帆が恋仲となり、しかしその二人は本当の双子である事を知った人間が次々と巴を脅迫し、金銭だったり肉体関係だったりを迫るが、ソレの解決策として殺人と云う方法を選んだ…と云う事になっており、精神錯乱の発作とか、その辺りも全く無くなっている
(古谷版では、巴は完全に常識人であり、精神的な異常性は全く無く、物語としても巴を悲劇のヒロイン的に描かれている)
 JET版では、鹿賀版と殆ど同じ様に書かれているが、『ふぶき』は存在しない点では原作に準拠している

 さて、事件が解決し、その後の話になるのだが、原作では竜平が出資して進めている島のレジャーランド化をそのまま続ける事にしている
 此処まで酷い連続殺人(しかも最初の妹尾から数えれば約20年も続いた)の現場でレジャーランドなんざ開いても客が来るかどうか不明ではあるのだが…過疎化した島に産業を持ち込み、島へ人が戻って来る策として進める事としている
 鹿賀版では事件により土地権利書を買い取る事が出来ず…と云うか復讐をする対象であった大善も死んだ事で、逆にレジャーランド化する意味が無くなり、計画を白紙に戻している
 鶴太郎版では、金田一が『島の主人はこの自然だ』と主張し、竜平も納得してレジャーランド化を打ち消している
 更に、唯一事件に関係しなかった刑部直系である真帆を竜平が引き取る様な描写が有った
 古谷版では、巴が拓郎と真帆に宛てた手紙を金田一が渡し、二人は納得した上で拓郎は京都の大学に、真帆は島に残る選択をする
 竜平は島の祭りを盛り上げる為に出資しただけで、レジャーランド云々の話は全く出ていない
 JET版は基本的に鹿賀版と同じなのだが、大善も死んでいないのに巴の死がショックだったのか、連続殺人の現場では採算が取れないと見たのか知らんが、竜平はレジャーランド化の計画を投げ出した様だ
 まぁ守衛の死で土地権利書も入手出来なかったろうケドな

 最後に、各作品で特記するべき事項が有れば…と云う事で、此処で比較するか
 浅井の『過去の罪』を起こした年代について、である
 原作では22年前としており、昭和20年の事である…終戦の年だな
 鹿賀版では24年前としているので、同じく昭和20年となる
 鶴太郎版では22年前としており、昭和6年って事になる
 古谷版では20年前としており、昭和16年…真珠湾攻撃、第二次大戦に日本が参戦した年である
 JET版では原作と同じ22年前、昭和20年の事である
 此処で『事件の何年前か』と云うのを記載したのは『=五郎の年齢』になるからである
 五郎が存在しない古谷版では『=真帆・拓郎の年齢』と云う事になる…あぁ、此処で鹿賀版が舞台を昭和44年に設定した意味があるのかも知れない
 鹿賀版で五郎を演じたのは古尾谷雅人だが、生年は昭和32年、劇場公開年は昭和56年で、古尾谷の年齢は丁度24歳になる
 ただ、この観点から云えば、鶴太郎版は五十子の年齢は22歳になるが、演じた牧瀬の年齢は丁度20歳(生年:昭和46年、放映年:平成3年)だし、古谷版で真帆・拓郎を演じた中本奈奈(22歳)と中村俊介(24歳)は同い年ですらないのだがwww

 他に特記すべき事項は…
 原作ではレジャーランド化についての動機は島を追い出された形になった竜平が故郷に錦を飾るつもりで起こした事になっており、周辺地域の工業化により海が汚れ、漁業が出来なくなった島民が本土の工場勤めの為に島を出る事で進む過疎化を止める為の事業としていた

 鹿賀版では、原作では高校卒業と同時に島に帰ってきている真帆・片帆の姉妹が、祭りの為だけに帰島し、祭りの後はまた本土に預けられ直す事になっていた…ならば、何故に片帆は本土で(祭りのタイミング以外の時に)神楽太夫の恋人と会ったり出来なかったのかがチト謎になるのだが…
 また、物語とは関係ないが、ビートルズの楽曲がBGMで効果的に使われたが、ソフト化するに当たり、版権が切れた事で他のバンドのカバー曲に変えている

 鶴太郎版では、他の映像作品ではほぼ描かれている『守衛殺害時の本殿ボヤ騒ぎ』が描かれていない
 また、他の作品では産婆を辞めて占い師になっていた浅井だが、本作では産婆を続けている
 更に、巴は大善の兄の孫となっているが、大善は兄が娘(巴の母)を島外に嫁にやる事も含めて許すと判断した事に激昂し、兄を殺害、兄の娘を犯して産ませた子供…と云う事になっている
 また、竜平はアメリカで成功したのではなく、東京で株をやって財を成した事になっている
(まぁ上記の通り、竜平が島を追い出されたのは昭和16年、真珠湾攻撃(コレは12月の事だが…不穏な空気は有ったろう)の年にアメリカに渡ってるとか、無いだろうwww)
 更に竜平が島に来た本当の理由は『自分と巴の子供は居たのか、居ればその後どうなったのか』を確かめる事であった
 五十子は片帆・守衛両方の死体発見時に近くに居り、疑われる事になるが、金田一はそう思わず、犯人特定の証人とした…が、謎解きの場面で犯人にソレを漏らして逆に犯人が五十子を拉致る展開になった…つくづく金田一が無能であるwww

 古谷版ではもぉ…違い過ぎて改めて特記する事は殆ど無い
 此処まで書いて無い事は1点だけ、巴は大善の実子として登場している事くらいか
(鶴太郎版でも、事実は『巴は大善の子』であったが、対外的には『大善の兄の子…詰まり姪』であるとしていたが、本作では最初から『大善の兄』が省略されている)

 JET版も特記する事は少ない
 鹿賀版と同じ様に片帆と神楽太夫の兄弟が恋仲になるが、此方では弟(勇)と恋仲になっており、事件後は兄(誠)と真帆が良い感じになって終っている…位だろうか

 取り敢えず、書き切ったかな…結構グチャグチャしていて判り辛いかも知れないが、質問が有ればコメントにでも入れて欲しい
 ナンとか20KB程度で収まったな…コレでも駆け足だった気もするが
 次は…書けるとしたら本人殺人事件? 映像化は映画が2本(片岡千恵蔵・中尾彬)、TVドラマ3本(古谷一行(2回)・片岡鶴太郎)で、映画は全く見ていないが、TVドラマは全部確認した
 漫画もJET版を持ってるし、一応原作・TVドラマ3つ・漫画で5作の比較が可能だ
 後は…先日買った『貸しボート十三号』を読み終わったので『女王蜂』を読み始めたし、その辺で…かな
 まぁ金田一シリーズ映像化作品の比較も、また次は少々先の話となると思われる

 次回は…どぉするかな
 ネタが無いので、何か探すしかないのだが…
 まぁナンとかなるべか
 ソレまで皆様、御多幸を^^

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