2025年11月1日土曜日

黒澤明 加山雄三

黒澤明

1962年椿三十郎東宝=黒澤プロ菊島隆三、小国英雄、黒澤明三船敏郎仲代達矢、小林桂樹、加山雄三、団令子、志村喬、藤原釜足、清水将夫、伊藤雄之助、入江たか子、平田昭彦、田中邦衛96分/白黒/シネマスコープ山本周五郎の短編『日日平安』が原作。当初は愛弟子の堀川弘道のために企画されたもので、血が一滴も流れない話だったが、黒澤が自分でやりたくなって、『用心棒』の主人公(最初から三船を想定)を持ってきて大幅にアレンジした。椿の花を流すなどのアイデアは実に映画的で秀逸。世界の「血みどろ映画」の原点でもある。
撮影中、加山雄三は真剣を持たされていた。初めて真剣を持った彼は出番待ちの時間に、ロケ地の端で試しに雑木や草を切ってみたらスパスパ切れる。「こりや面白いや」としばらく遊んでいたら、スタッフの一人が血相変えて飛んで来て、真剣を取り上げようとした。しかしそれを見ていた黒澤がそのスタッフを激しく叱咤した。「よけいなことするな!」黒澤は加山に侍の雰囲気や風格を持つように訓練するためにわざわざ真剣を持たせていたわけである。今だったら考えられないエピソードだ。加山は本番中居眠りをしたという豪快伝説もある。それにしても若大将と青大将が共演しているとは!
公家の出身の入江たか子は戦前、自分で映画プロダクションを作り溝口健二監督などとも組んでプロデューサーとしても活躍した大女優だったが、病気やプロダクションが倒産するなど不幸が重なり一時は『化け猫映画』の化け猫役者として低迷していた。戦後、久しぶりに溝口監督に呼ばれて映画『楊貴妃』に出演するが、撮影中に監督から激しく罵倒され、そのまま役を降り、女優を引退して銀座のバーのマダムとなった(新藤兼人監督の記録映画『ある映画監督の生涯~溝口健二の記録』で入江本人が証言している)しかし、ある晩そのバーにやって来たのが黒澤監督で、黒澤から熱心に口説かれて、女優復帰を決心、『椿三十郎』に出演。どんな苦境にあってもおっとりとしている家老夫人役を演じた。

黒澤明

第62回アカデミー賞授賞式(1989年度)は1990年3月26日、米LAのドロシー・チャンドラー・パビリオンでおこなわれた。黒澤は特別名誉賞"Honorary Award"を受賞。プレゼンターは、ジョージ・ルーカスとスティーブン・スピルバーグだった。

名誉賞受賞理由は以下(英文)
"For cinematic accomplishments that have inspired, delighted, enriched and entertained worldwide audiences and influenced filmmakers throughout the world."
直訳すると「世界の観客たちに触発を与え、喜ばせ、心を豊かにさせ、楽しませた。そして世界すべての映画製作者たちに影響を与えた映画上の業績に対して」。
黒澤作品数本の名場面を編集したものが会場でも映写された。

黒澤のスピーチは以下。
「このような立派な賞をいただき誠に光栄です。しかし私がそれに値するかどうか少し心配です。なぜなら、私は、まだ映画がよくわかっていない…。まだ映画というものを、はっきりと掴んでいない気がするからです。映画というものは素晴らしい。これからも映画という素晴らしいものを掴むために努力するつもりです。それこそがこの賞に応える唯一の方法だと思うからです」

その壇上で、3日前に80歳になった黒澤に、日本から衛星を通じた黒澤組の皆さんからのお祝いの映像が流された。代表として「黒澤さん、コングラチュレーション!」と述べたのは笠智衆であった。こちらも参考に

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