ゴッホの「星月夜」に描かれた渦、物理理論と一致していた 新研究
(CNN) フィンセント・ファン・ゴッホの「星月夜」に描かれたまだらな星の光と渦巻く雲は、ゴッホが1889年にこの作品を描いたときの動揺した心境を反映していると考えられている。 【写真】研究の対象となった14の渦巻き 一方、中国とフランスを拠点とする物理学者らは学術誌「フィジクス・オブ・フルイド」に17日に掲載された研究論文で、ゴッホが乱流の数学的構造を直感的に深く理解していたことを示唆している。 乱流とは、流水や海流、血流、立ち上る煙などの流体で観察される一般的な自然現象で、大きな渦が形成され小さな渦に分解される無秩序な状態を指す。 一般の観察者には無作為に見えるかもしれないが、乱流は連鎖的なパターンに従っており、少なくとも部分的には数学の方程式を使って説明できる。 研究によると、「星月夜」はフランス南部サン・レミ・ド・プロバンスにある病院の病室の東向きの窓から見た、日の出直前の景色が描かれた油絵だ。ゴッホは左耳を切った後、この精神病院に入院していた。 研究者らは絵画のデジタル画像を使用して、14個の主な渦の大きさを検証。それらが、大きな渦から小さな渦への衝突や相互作用によるエネルギーの伝達を説明する物理理論と一致しているかどうかを把握した。
「星月夜」と乱流理論
描かれた空の大気の動きを直接測定することはできないため、研究者らは筆づかいを正確に測定し、筆づかいの大きさを乱流理論から予想される数学的な大きさと比較した。物理的な動きを測定するにあたっては、さまざまな絵の具の色の相対的な明るさも用いた。 研究では、「星月夜」の14個の渦の大きさだけでなく、それらの相対的な距離と強度が、旧ソ連の数学者アンドレイ・コルモゴロフの乱流理論として知られる流体力学を決定する物理法則に従っていることが判明した。 また、最も小さな渦が、乱流理論で予測される方法で背景の渦と混ざり合っていることも分かった。これはバチェラースケールと呼ばれる統計パターンに従っている。 この研究の筆頭著者である黄永祥氏は、ゴッホはこのような方程式を認識していなかっただろうが、自然界の乱流を観察するのに多くの時間を費やしていた可能性が高いと指摘した。 「この物理的な関係はゴッホの心に植えつけられていたに違いないと思う。だから、この有名な『星月夜』の絵画を描いたとき、彼は実際の流れをまねたのだ」(黄氏) 黄氏は「これは理にかなっている。モデルは複数の大きさの渦の統計を捉えようと構築されており、それぞれの渦は乱流の連鎖を通じて他の渦と伝達している。ゴッホはある意味、この現象を表すものを描いたのだから、理論モデルとゴッホの渦の統計の間に一致があっても不思議ではない」と述べた。
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