ピエトロ・マルチェッロ『スカーレット』フランス、緋色の帆を待ちわびて
ピエトロ・マルチェッロ長編三作目。第一次世界大戦の帰還兵ラファエルは、妻マリーは疎開していたノルマンディーの田舎村まで赴くが、マリーは既に亡くなっており、ジュリエットという乳飲み子だけが遺されていた。どうやらマリーは地元のバー店主にレイプされたことが原因で亡くなってしまったらしいのだが、なぜか責められるのはラファエルとジュリエットと二人の味方たちなのである。ラファエルは沼地で溺れるバー店主を無視したことで、村での立場が余計に悪くなってしまう。優れた木工技師であるラファエルは仕事も奪われてしまい、幼い娘と共に木のおもちゃを売りに行くことで生計を立てていた。やがてジュリエットは成長し、森の魔女から"緋色の帆が貴方を村から連れ出すだろう"という予言を受ける。という話だが、各挿話がシンプルすぎる上に最後まで方向性が定まらず、全体的に物語が深みもなくボンヤリしている。主眼が置かれるのはマリーの眠る地にいたいラファエルとこの地よりも大きな夢を持つジュリエットが互いを思いやりながら中々言い出せないでいるという親子関係にあるが、そこも多くは語られない。外世界及び"緋色の帆"を飛行家ジャンが担当し、彼との出会いがジュリエットの人生を変える!というのも描き方がシンプルすぎるので唐突な印象を受ける。というかそもそも、ジュリエットは予言なんか打ち破って、緋色の帆なんか待たずに自分で飛び立てるような人物として描かれているので、緋色の帆を待たせるのも謎。初めてジャンに会ったときに真っ赤なドレスを着ていたので、"自分が帆という意味か!"と思ったのになぁ。そんな感じで必要な描写は足りてないのに、フレアを入れて風景を撮る河瀨直美みたいなエモエモショットを乱用していて、他にやることあるだろと思うなど。まぁ、前作『マーティン・エデン』も雰囲気映画だったので、マルチェッロの実力的にそんなもんかと。三度ある窓枠越しのフレーム内フレームショットは良いのと、本作品がデビュー作となったJuliette Jouanは非常に魅力的。
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