2024年9月2日月曜日

好きな映画のジャンルで「脳の感情処理のタイプ」がわかる! - ナゾロジー

好きな映画のジャンルで「脳の感情処理のタイプ」がわかる! - ナゾロジー

「好きな映画ジャンル」と「脳の感情処理」に関係がある?

19世紀に産声を上げて以来、映画は人々の娯楽であり続けています。

映画は長年の間、劇場でかかっているものを観に行く形態でしたが、現在は作品のディスク化やサブスクリプションのおかげで、好きなジャンルを好きな時間に好きなだけ楽しめるようになりました。

こうした流れの中で「鑑賞する映画のジャンルがだいたい決まってきた」という方も少なくないでしょう。

「スカッとするからアクション映画ばかり観ている」という方もいれば、「謎解きが好きだからサスペンス系しか観ない」という方もいるかもしれません。

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Credit: canva

その中で心理学者は以前から「好きな映画のジャンルとの感情処理に何らかの関連性があるのではないか」と考えていました。

というのも、脳の感情処理の仕方にその人固有のパターンがあるからこそ、特定のジャンルを好んで選んでしまうと考えられるからのです。

257名を対象に調査

そこで研究チームは今回、ドイツ在住の257名の参加者を募り、好きな映画ジャンルと脳活動との関連性を調べることにしました。

参加者の平均年齢は39歳で、男女比は男性129名・女性128名とほぼ半数ずつ、心身ともに健康な人々が選ばれています。

参加者にはアンケート調査で、ドラマ・アクション・ロマンス・コメディ・ホラー・犯罪/スリラー・SF/ファンタジー・ドキュメンタリーの8項目から好きなジャンルを回答してもらいました。

次に、fMRI(機能的磁気共鳴画像法)を用いて参加者の脳活動を記録します。

このとき参加者には、ネガティブ感情への反応パターンを調べるため「顔照合課題」を受けてもらいました。

このタスクは、目の前のモニターに怒りや恐怖、不安、悲しみといったネガティブ感情を表す人の顔画像が3つ提示され、画面下に別で提示された2つの顔のうちから、上部の3番目の顔と同じものを選ぶ課題です。

研究主任のエスター・ツヴィッキー(Esther Zwiky)氏は「この確立されたタスクによって、参加者の脳がネガティブ感情をどのように処理しているかがわかる」と説明します。

扁桃体(赤色)
扁桃体(赤色) / Credit: ja.wikipedia

fMRIでは、情動反応の処理に深く関わっている「扁桃体(へんとうたい)」がチェックされました。

扁桃体は特に「恐怖」「不安」「緊張」「怒り」などのネガティブ感情の処理に関連することが知られています。

例えば、扁桃体が活発な人はストレスを受けた際に嫌悪感や不満、怒りなどのマイナス感情が起こりやすくなるのです。

「アクション・コメディー」と「犯罪/スリラー・ドキュメンタリー」に有意差

結果はとても興味深いものでした。

今回の調査では特に、アクション・コメディ・犯罪/スリラー・ドキュメンタリーのいずれかを好む人々において、ネガティブ感情の処理の仕方に有意差が見つかったのです。

具体的には、アクションとコメディーを好む人々では扁桃体が強く反応しており、ネガティブ感情を敏感に感じ取っていることが示されました。

対照的に、犯罪/スリラーとドキュメンタリーを好む人々では扁桃体の活動が著しく低下しており、ネガティブ感情をほとんど感じ取っていないことが示唆されたのです。

これらの結果は一体どのように解釈されるのでしょうか?


映画の楽しみが「感情体験」か「知的体験」かの違い

まずもって、コメディ好きな人たちがネガティブ感情に敏感であることは腑に落ちます。

恐怖や不安といった負の感情を敏感に感じ取ってしまうがゆえにホラーやスリラーが苦手になり、その真逆の笑いや喜びといったポジティブ感情を与えてくれるコメディ映画が好きになるのでしょう。

その一方で研究者らは、アクション好きがネガティブ感情に敏感であることは意外だったと話します。

アクション映画は、怒りや悲しみといった負の側面も含めた刺激的な感情を積極的に提供するジャンルだからです。

しかしこの点について研究者は「アクション好きは感情的な刺激の影響を受けやすいことで、逆に映画を楽しめるようになっているのかもしれない」と推測します。

例えば、アクション映画の多くは序盤に、敵に仲間を殺されたり、家族や恋人が誘拐されたり、極悪非道なラスボスの罠にかかったりと、ネガティブな出来事が必ず起こります。

このときに一度、怒りや恐怖を感じたり、憎悪や悔しい感情を強く抱いてドン底に落ちることで、クライマックスの展開にスカッとしたカタルシスが得られるのでしょう。

つまり、アクション好きはポジティブもネガティブも含めた「感情体験」にこそ、映画を観る楽しみを感じていると考えられるのです。

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