ジョージ・ハリスンの「The Inner Light」と老子の思想
今日(深夜に書いてるので昨日になりましたが)YouTubeを見たら、ビートルズ公式チャンネルにジョージ・ハリスンの「The Inner Light」のリリックビデオがアップされてました。なぜ今?と思ったのですが、どうやらジョージの設立した財団が新型コロナウイルス(Covid-19)救済の寄付を行ったことが理由のようです。ツイッターのほうでも#innerlight2020というハッシュタグをつけて投稿すると、コロナ救済のために1ドル寄付されるというキャンペーンをやっていました。ジョージは一番好きなビートルだし、この「The Inner Light」や「Within You Without You」などのジョージが作曲したインド風の楽曲も好きなので、こういう機会に彼の曲が注目されるのはかなりうれしかったりします。
YouTubeの動画はコチラです↓
考えてみると、確かに「The Inner Light」の歌詞は感染拡大防止のために外出自粛を求められている今の状況にぴったりな気がします。というのもこの曲は「家に引きこもってても俺には何でもわかるんだ!(※大幅に意訳)」という老子の思想が反映された歌だからです(インド楽器の音色に老子の思想というゴリゴリの東洋風ソングです)。最初のほうの歌詞を少し引用してみます。
Without going out of my door
I can know all things on earth
Without looking out of my window
I can know the ways of heaven
扉の外に行かなくても
僕は世界の全てを知ることができる
窓の外を窺わなくても
僕は天の道を知ることができる
引用:"The Inner Light (The Beatles)"
進んで外側に向かわなくても大切なことを知ることができる。。。外に遊びに行ったり、たくさんの人と交流したりとやたらと外向的な生活が求められる現代の考え方とは真逆をいく思想です。インドア派で休日は家にこもり気味の自分にとってはかなり勇気づけられる歌詞だったりします。(別にジョージは引きこもりを勇気づけるつもりはないだろうけど。。。)外出が制限されている今こそ、家の中で真理を探求するのがいいのかもしれません。
この曲の歌詞の元ネタは「老子」の中の1節です。「老子」は大きく2つの編から成っていてそれぞれ道経、徳経というのですが、その徳経の方にこの1節はあります。全体でいうと47章目です。
不出戸知天下、不闚牖見天道。
其出弥遠、其知弥少。
是以聖人、不行而知、不見而名、不為而成。
戸を出でずして天下を知り、牖(まど)を闚(うかが)わずして天道を見る。
其の出ずること弥(いよいよ)遠ければ、其の知ること弥(いよいよ)少なし。
是を以て聖人は、行かずして知り、見ずして名(あきら)かにし、為さずして成す。
引用:『老子』金谷治, 講談社
「為さずして成す」というのがポイントで、老子的には人間が何かいろいろと手を加えなくても、あるがままに任せておくだけで物事は自然と達成されるはずだという考えでした。有名な「無為自然」の思想が現れています(ちなみに『自然』という熟語が最初に現れる書物がこの「老子」だそうです)。まあ、コロナウイルスが拡散している中で政府やWHOが何もしないであるがままに任せているとどんどんウイルスは広まっちゃうと思うので、時と場合によりけりという感じもしますが。。。そう考えると国を挙げた強制的な封じ込めでウイルスの拡大を食い止めるなど、国家による管理の色が濃い現代の中国の政治は老子的な思想の逆をいっているとも言える気がします。
というわけでジョージの曲と老子の関係についてちょこっと書いてみました。というか偶然にも「老子」を最近読んだばっかりだったので、いろいろ書いてみたかったという事情があったり。読んだのはこの本です。↓
老子全文のそれぞれの章が訳文、書き下し文、白文、解説の順に紹介されています。とても読みやすかったのでおすすめです。
コロナウイルスに苦しむ方々が早く回復しますように。
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