2024年6月15日土曜日

ミンコフスキー空間とローレンツ変換【特殊相対性理論】 - 大学の知識で学ぶ電気電子工学

ミンコフスキー空間とローレンツ変換【特殊相対性理論】 - 大学の知識で学ぶ電気電子工学

ミンコフスキー空間とローレンツ変換【特殊相対性理論】

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本記事の内容

本記事では、ミンコフスキー時空図とローレンツ変換について解説しています。

  • 4次元時空
  • ローレンツ変換の幾何学的解釈
  • ローレンツ不変量
  • ローレンツ収縮・時間の遅れ

〈関連記事〉

ローレンツ変換については、こちらの記事で詳しく解説しています。
ローレンツ変換の使い方【特殊相対性理論】

4次元時空とローレンツ変換

特殊相対性理論におけるローレンツ変換は、以下で表されます。

ただし、 と定義しました。

この式で重要なのは、時間と空間座標が混合しているということです。

このことから、ミンコフスキー(Minkowski)は、空間座標 に時間を含めた という座標で指定される4次元時空(spacetime)を提案しました。

でもよいですが、 とすることで、全て長さの次元になり、記述がきれいというメリットがあります。

その空間はミンコフスキー時空と呼ばれます。

ミンコフスキー時空内の1点 は、世界点(world point)と呼ばれ、世界点の動く軌跡は、世界線(world line)と呼ばれます。

ローレンツ不変量と距離

以下で定義される量は、ローレンツ変換に対して値を変えないローレンツ不変量になっています。

実際にローレンツ変換の式を代入することで、確かめてみましょう。

に関しては、変換前後で変わらないので、 のみに着目して考えます。

したがって、確かにローレンツ不変量になっていることが分かります。

もし、 の項がなければ、 は通常の3次元ユークリッド空間の距離の2乗を表します。

このことから、 を4次元時空における距離の2乗と考えます。

ミンコフスキー時空図

以下では便宜上、 とします。このとき、ローレンツ変換の式は、以下のようになります。

ミンコフスキー時空図では、横軸を空間 、縦軸を時間 に取ります。

しかし、4次元を図示することはできないため、通常は のみを横軸に取ります。

ここで、原点から発射した光の世界線について考えると、傾き の直線となります。

物体は光の速度を超えないので、物体の世界線は、 軸を回転軸とした円錐の内側を動きます。

円錐は光円錐(light-cone)と呼ばれます。

ローレンツ変換の幾何学的解釈

系に対して、 軸正方向に一定の速度 で動く 系の座標軸が、ミンコフスキー時空図上でどのように表されるかを考えてみましょう。

まず、 軸について考えます。 軸上では、 となるので、ローレンツ変換の式より、

となり、傾き の直線で表されることが分かります。

同様に、 軸上では、 なので、

となり、 軸は傾き の直線で表されることが分かります。

ミンコフスキー時空における単位格子

系における単位格子(一辺の長さが の方形)を考えます。

まず、 となるのは、ローレンツ変換の式より

これを解いて

が得られます。

同様に、 となるのは、ローレンツ変換の式より

これを解いて

が得られます。

これを図示すると、以下のようになります。

ユークリッド平面で描くと、それぞれの単位長さは異なって見えます。しかし、これはミンコフスキー時空における距離の定義が異なるためです。

ローレンツ収縮

系に固定された物体は、その運動方向に縮んで観測されます。これをローレンツ収縮(Lorentz contraction)といいます。

ミンコフスキー時空図でローレンツ収縮を幾何学的に解釈してみましょう。

系の 軸正方向に静止した長さ の棒は、図の赤線で表され、時刻 と共に矢印の方向に進みます。

棒の長さ は、 系から測定した長さです。

この棒を 系で測定すると、その長さはいくらになるでしょうか。

系の時刻 で棒を測定することを考えると、棒は図の緑線として観測されます。

図より、 系の より短くなっていることが分かります。

具体的に端点の座標を求めると、 となります。

つまり、 系から観測すると、棒の長さは 倍になるのです。


次は逆に、 系に固定した長さ の棒が、 系からどのように観測されるかを見てみましょう。

系の 軸正方向に静止した長さ の棒は、図の赤線で表され、時刻 と共に矢印の方向に進みます。

系の時刻 で棒を測定することを考えると、棒は図の緑線として観測されます。

図より、 系の より短くなっていることが分かります。

棒の端点の 系における座標は となります。

ローレンツ変換の式より、

となり、 系から測定した場合でも、棒の長さは 倍されることが分かります。

時間の遅れ

系の原点に固定された時計を、 系から測定することを考えましょう。

図の赤線が、時計の世界線になります。

先ほど求めた単位格子より、 系における は、 系の で観測されることが分かります。

したがって、動いている時計が、静止している時計に比べて遅れていることが分かります。


逆に、 系の原点に固定された時計を、 系から測定することを考えましょう。

系から観測して のときの 系の座標値は、緑の点線と 軸の交点に相当します。

交点の 系における座標値は となります。

これをローレンツ変換の式に代入して、 を得ます。

したがって、先ほどと同様に、 系における は、 系の で観測されることが分かります。

参考文献

  • 風間洋一(1997)『相対性理論入門講義』培風館

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