2025年4月2日に日本でレビュー済み
本書は、近代ヨーロッパ史を下敷きとしながら、その背景を踏まえた音楽史を語った本である。
例えば、ウィーン体制期、シューベルトは度重なる検閲を受けたため、オペラではなく室内楽曲などへと流れる面もあった(だが、それでも歌曲王であり、言葉を含む作品も最晩年でも作成した(p47-48))。一方、七月王政の華々しさに乗ったのが、400人の合唱などの大規模な作品のベルリオーズである(p56-59)。等々
だが既に他の方も書いているように、そこまで両者の結びつき(特に音楽から社会への影響)は強くなく、また全体を通した筋があるという感じでもない。
時代背景を話したうえでの各音楽家の解説、というレベルで読むとよいだろう。
ここには興味深いエピソードも色々出ている。
・フリードリヒ大王は自ら8小節を作曲して主題としてバッハに与えており、相当な音楽センスがある(p20)
・ナポレオン没後にベートーヴェンの作曲意欲が衰えるのは、耳の病気もあるが、ナポレオンに仮託した新しい世界への期待がしぼんだこともあるだろう(p36)
・第九は当時は受け入れられず、ワーグナーの演奏を待つ必要があった(p44-46)
・祖国ポーランドを追われたショパンのノクターン形式(彼が最初ではないが)は、ソナタなどから解き放たれた新しい時代の音楽を象徴していた(p64)
・晩年のリストは超絶技巧から離れ、シューベルト的な内省的音楽を作った(p78-79)
・メンデルスゾーンは、キリスト教徒だがユダヤ人の祖先をもつ家系であることにこだわった(p80)
・リストの最高傑作は「ソナタ ロ短調」であろう(p88-90)
・ヴェルディはイタリア統一運動の時代において、むしろ「政治に関わらない」姿勢を示した(p106-107)
・ワーグナーは亡命時代、全く上演の見込みがない中で楽曲を作り続けた(p114)
・オッフェンバック「地獄のオルフェ」は、オペレッタ(小さなオペラ)というジャンルを確立させた。繁栄を謳歌するはずの教養人が、退屈な天国から抜け出て、悪徳はびこる地獄で羽目を外したがっている、という暗部を晒すものである(p130)
・ヨハン・シュトラウス二世は、ワルツやポルカは多数の傑作を残したが、台本や劇のセンスはなく、今も上演されるオペレッタは「こうもり」ぐらいである(p132)
・スメタナは喪失したチェコアイデンティティの回復が色濃いのに対し、ドヴォルザークにもその側面はある一方でドイツ的要素も強い(p150)
・普仏戦争以前、フランスの音楽はオペラが中心でドイツは蔑まれていた中、ハイドンやモーツァルトに好意を寄せていたのがサン=サーンス(p158-159)
・ラヴェルは兵役志願のために、普通作曲には半年かかるところ、書いていた「ピアノ三重奏曲」をたった5週間で書き上げた(p182)
・ラフマニノフは長らくピアニストとして評価されており、作曲家としての面は弱かったため、死後しばらく忘れられている時期があった(p191)
割とお気軽に読みやすい、社会的背景を解説した音楽史というところだろう。
扱われる時代の関係で近代に話が集中しており、バッハ、モーツァルトやベートーヴェンの話は少ない。また作曲家の話に専念しているので、冷戦下の指揮者や演奏家の話も出ていない。
社会的側面の重視されているより長いスパンの音楽史としては、他の方も挙げているが西洋音楽史: 「クラシック」の黄昏 (中公新書 1816) もある。また冷戦下の指揮者や演奏家の話は冷戦とクラシック―音楽家たちの知られざる闘い (NHK出版新書 521)で読める。興味のある人はこちらも読んでみるとよいだろう。
例えば、ウィーン体制期、シューベルトは度重なる検閲を受けたため、オペラではなく室内楽曲などへと流れる面もあった(だが、それでも歌曲王であり、言葉を含む作品も最晩年でも作成した(p47-48))。一方、七月王政の華々しさに乗ったのが、400人の合唱などの大規模な作品のベルリオーズである(p56-59)。等々
だが既に他の方も書いているように、そこまで両者の結びつき(特に音楽から社会への影響)は強くなく、また全体を通した筋があるという感じでもない。
時代背景を話したうえでの各音楽家の解説、というレベルで読むとよいだろう。
ここには興味深いエピソードも色々出ている。
・フリードリヒ大王は自ら8小節を作曲して主題としてバッハに与えており、相当な音楽センスがある(p20)
・ナポレオン没後にベートーヴェンの作曲意欲が衰えるのは、耳の病気もあるが、ナポレオンに仮託した新しい世界への期待がしぼんだこともあるだろう(p36)
・第九は当時は受け入れられず、ワーグナーの演奏を待つ必要があった(p44-46)
・祖国ポーランドを追われたショパンのノクターン形式(彼が最初ではないが)は、ソナタなどから解き放たれた新しい時代の音楽を象徴していた(p64)
・晩年のリストは超絶技巧から離れ、シューベルト的な内省的音楽を作った(p78-79)
・メンデルスゾーンは、キリスト教徒だがユダヤ人の祖先をもつ家系であることにこだわった(p80)
・リストの最高傑作は「ソナタ ロ短調」であろう(p88-90)
・ヴェルディはイタリア統一運動の時代において、むしろ「政治に関わらない」姿勢を示した(p106-107)
・ワーグナーは亡命時代、全く上演の見込みがない中で楽曲を作り続けた(p114)
・オッフェンバック「地獄のオルフェ」は、オペレッタ(小さなオペラ)というジャンルを確立させた。繁栄を謳歌するはずの教養人が、退屈な天国から抜け出て、悪徳はびこる地獄で羽目を外したがっている、という暗部を晒すものである(p130)
・ヨハン・シュトラウス二世は、ワルツやポルカは多数の傑作を残したが、台本や劇のセンスはなく、今も上演されるオペレッタは「こうもり」ぐらいである(p132)
・スメタナは喪失したチェコアイデンティティの回復が色濃いのに対し、ドヴォルザークにもその側面はある一方でドイツ的要素も強い(p150)
・普仏戦争以前、フランスの音楽はオペラが中心でドイツは蔑まれていた中、ハイドンやモーツァルトに好意を寄せていたのがサン=サーンス(p158-159)
・ラヴェルは兵役志願のために、普通作曲には半年かかるところ、書いていた「ピアノ三重奏曲」をたった5週間で書き上げた(p182)
・ラフマニノフは長らくピアニストとして評価されており、作曲家としての面は弱かったため、死後しばらく忘れられている時期があった(p191)
割とお気軽に読みやすい、社会的背景を解説した音楽史というところだろう。
扱われる時代の関係で近代に話が集中しており、バッハ、モーツァルトやベートーヴェンの話は少ない。また作曲家の話に専念しているので、冷戦下の指揮者や演奏家の話も出ていない。
社会的側面の重視されているより長いスパンの音楽史としては、他の方も挙げているが西洋音楽史: 「クラシック」の黄昏 (中公新書 1816) もある。また冷戦下の指揮者や演奏家の話は冷戦とクラシック―音楽家たちの知られざる闘い (NHK出版新書 521)で読める。興味のある人はこちらも読んでみるとよいだろう。
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