2025年8月23日土曜日

ホロー荘の殺人(ポワロ)のネタバレ解説・あらすじ・相関図・感想

ホロー荘の殺人(ポワロ)のネタバレ解説・あらすじ・相関図・感想

ホロー荘の殺人(ポワロ)のネタバレ解説・あらすじ・相関図・感想

ホロー荘の殺人(ポワロ)のネタバレ解説・あらすじ・相関図・感想

アガサ・クリスティのミステリー小説『ホロー荘の殺人』。この物語は、昼食に招かれたポアロが作られたような凶行の現場に遭遇する、ポアロシリーズの長編小説第二十二作目です。

そこでこのページでは、「人物相関図」や「物語のポイント」を確認しながら、本作品の解説と考察を行います。すべてネタバレになりますので、「まだ読んでない」という方は十分にご注意ください。

物語について

解説の前に、最終的な人物相関図あらすじをざっとおさらいしておきます。「そんなの必要ないよ」という方は読み飛ばしちゃってください。

最終的な人物相関図

以下は、本作品の登場人物の最終的な相関図です。パソコンの場合は画像をクリックして拡大、スマホの場合はピンチアウトしてご覧ください。

相関図

あらすじ

◆ ホロー荘の集まり

9月の週末、アンカテル夫妻の邸「ホロー荘」にたくさんの客が訪れる。医師のジョンと妻のガーダ、彫刻家のヘンリエッタ、ミッジ、エドワード、デイヴィッドが。

ジョンやヘンリエッタが心待ちにしていた一方で、ガーダは憂鬱な気持ちになっていた。毎度惨めな思いをすることが理由だったが、それでもジョンのために耐えなければと考えていたのである。

◆ ヴェロニカの幻影

夕食が済みブリッジを終えた後、隣のダヴコート荘にいたジョンの元婚約者のヴェロニカが訪ねてくる。ジョンはヴェロニカを送って話し、ずっと悩まされていた幻影からの解放を感じたが、夜中の3時に帰ってくると誰かがドアを閉める微かな音を聞いた。

翌日、ヴェロニカの求婚をきっぱり断ったジョンは、プールのベンチに座り新しい人生への感動を味わう。ところがヘンリエッタに話しに行こうと思った矢先、「かちり」と音がして銃声が鳴り響いた。

◆ 作られた場面

昼食に呼ばれていたポアロがホロー荘を訪ねると、リボルバーを持つガーダの下でジョンが倒れている場面に遭遇する。ポアロがわざとらしいと感じている中、ジョンは「ヘンリエッタ」と言葉を残し本当に息絶えてしまった。

状況からガーダが撃ったとほとんどの人間が考えたが、事情聴取の最中にグレンジ警部に報告が入る。ジョンを撃ったリボルバーはガーダが持っていたものではなく、ヘンリーのコレクションの別の銃だったのである。

◆ 無益への誘導

警察がホロー荘の周りを隈なく探しても見つからなかった凶器のリボルバーが、ポアロの別荘の生垣から発見される。撃った人物については全員が疑わしかったが、結局確たる証拠は得られず振出しに戻る状況が続いていた。

1度延期された検視審問で、ジョンは未知の人物により命を奪われたと判定が下される。何もかもうまくいったと考えたルーシーは、最後の綻びを繕うためポアロに真相を告げる。

解説と考察

それでは本物語の解説と考察に移ります。

犯人と動機

ジョンの命を奪ったのは妻のガーダでした。動機は信頼していたジョンに裏切られたと思ったから。ヴェロニカと夜中に話し込んでいるところを盗み見し、今までの姿がウソに感じられ凶行に及んでしまったのです。

ガーダはジョンを崇拝し、自分の心を犠牲にして尽くしてきました。したがって裏切られた反動の大きさが、ガーダを凶行に駆り立てたと言えるでしょう。ヘンリエッタはこの姿を「盲目的な献身」と表現し、自身の作品「祈る人」そのものだと語っています。

一方のジョンは15年間ずっと、ヴェロニカの前から逃げ出したのではないかという思いに苛まれていました。しかしホロー荘での再会で、その思いからようやく解放されます。つまりヴェロニカの幻影なく、ガーダ含む家族と向き合おうと決心した矢先の悲劇だったのです。

命を奪った方法と偽装

ガーダがジョンの命を奪った方法と偽装は割かし単純で、次の手順で行われました。

状況的にもちろん最初は疑われますが、持っていたリボルバーが凶器ではないと判明すれば嫌疑から外れる目論見だったのです。そしてポアロはこの現場を作られていると感じます。

ものごとを複雑化していったのがヘンリエッタです。理由はジョンに頼まれたから。ジョンが最後に残した「ヘンリエッタ」は、ガーダを護ってくれという意味だったのです。

ヘンリエッタはまずガーダが持っていたリボルバーをプールに落とし、指紋を採取できないようにします。続いて本当の凶器をいち早く見つけ、馬の作品を作り隠す。嫌疑についてはエドワードやデイヴィッド、自分にも向け、終いには謎の人物の指紋を付けた凶器を発見させ警察をかく乱しました。

心理的なつながり

ガーダがジョンを撃ち、ヘンリエッタが様々な策略をめぐらしましたがそれだけではありません。ヘンリエッタの意図を察したルーシーが積極的に手を貸し、ガジョンがルーシーに迷惑が掛からないよう行動したことでより事態が複雑化したのです。このガーダから始まり、ジョン、ヘンリエッタ、ルーシー、ガジョンまでの奇妙なつながりは、物語の最初の5章の間に記されています。

最初にガーダの心情です。

それにはしばしば人が自分のかわりに仕事をしてくれるという利点があることに、とつぜん気がついた。

出典元:ハヤカワ文庫『ホロー荘の殺人』アガサ・クリスティー/中村能三訳

ただしアンカテル家の人たちには通用しないかもと心配してはいました。

続いてジョンがヘンリエッタにガーダを託した理由です。

あの女なら、たといなにかあっても表にだすことはあるまい

出典元:ハヤカワ文庫『ホロー荘の殺人』アガサ・クリスティー/中村能三訳

それはヘンリエッタが次の能力を持っていたからです。

自分の心をぴったりと閉じこめるこつを学んでいた。

出典元:ハヤカワ文庫『ホロー荘の殺人』アガサ・クリスティー/中村能三訳

このときのヘンリエッタは芸術家モードで、エドワードからは「変わった」と言われました。また、「ヘンリエッタは中途半端なことはしない人」とルーシーはミッジに話しています。

そして突飛なことをしがちなルーシーは、以下のような人物でした。

めまぐるしいほど先の先を考える女

出典元:ハヤカワ文庫『ホロー荘の殺人』アガサ・クリスティー/中村能三訳

最後にガジョンはルーシーの性格や行動を知っていたため、次の心がけをしていました。

奥さまにご迷惑やご心配をかけないように、わたしができるだけ気をつかっているんだよ

出典元:ハヤカワ文庫『ホロー荘の殺人』アガサ・クリスティー/中村能三訳

ドラマ「名探偵ポワロ」について

デヴィッド・スーシェが主役を演じる海外ドラマ「名探偵ポワロ」では、2004年に本物語を放送しました。以下はキャストと、原作との主な相違点です。

キャスト

登場人物名 役者名
エルキュール・ポワロ デヴィッド・スーシェ
ジョン・クリストウ ジョナサン・ケイク
ヘンリエッタ・サヴァナク メーガン・ドッズ
ガーダ・クリストウ クレア・プライス
ミッジ・ハードカースル キャロライン・マーティン
ヘンリー・アンカテル エドワード・ハードウィック
グレンジ警部 トム・ジョージソン
エドワード・アンカテル ジェイミー・デ・コーシー
ヴェロニカ・クレイ リセット・アンソニー
エルシー・パターソン テレサ・チャーチャー
ベリル・コリンズ ルーシー・ブライアーズ
ルーシー・アンカテル サラ・マイルズ
ガジョン エドワード・フォックス

原作との主な違い

デイヴィッドが登場しないことやエルシーの役割変更があるだけで、ドラマの内容は原作にかなり忠実です。敢えてピックアップするとしたら、ポワロが粘土の馬から使われた凶器を見つけること。原作では一時的に馬の中に隠されており、見つかったのはポワロが借りた別荘の生垣でした。

それから個人的な印象ですが、ジョンがただの女たらしに近い人物になっていると感じます。なぜならヴェロニカと体を重ねているシーンもあり、ガーダへの愛も大して描写していないからです。一応序盤にリッジウェイ病の話も出てきますが、医師の仕事に熱心な様子もありませんでした。

感想

ヘンリエッタの策略にまんまとはまってしまいました。警察同様に誰もが疑わしく感じ、最後まで黒幕がわからなかったからです。真相が明らかになった際にヘンリエッタがポアロに話した嫌疑を外す方法は、下手なトリックより効果的だと思います。

アンカテル家とホロー荘の雇われ人たちの、言葉には直接出さずとも慮る心理も面白かったです。ただ1つすれ違ってしまったのは、ガーダとジョンの気持ち。誰か1人を献身的に愛することは素晴らしいと思いますが、裏切られた場合の衝動の怖さは計り知れないものがあるのでしょう。そしてジョンに託されたとはいえ、ヘンリエッタの苦しさは相当なものだったと思います。

それからジーナの占いは当たりすぎて怖いくらいです。命を落とすことだけではなく、これから集まるアンカテル家やヴェロニカのことまで当ててしまったのですから。

少しでも楽しんでもらえたら嬉しいです。読んでいただき、ありがとうございました。

その他のポアロ作品のネタバレ解説はコチラから探せるので、良かったらご参照ください。

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