2025年6月24日火曜日

刑事コロンボ 野望の果て(三) | 俺の命はウルトラ・アイ

刑事コロンボ 野望の果て(三) | 俺の命はウルトラ・アイ

刑事コロンボ 野望の果て(三)

『刑事コロンボ 野望の果て』

PETER FALK as COLUMBO

CANDIDATE FOR CRIME

テレビ 120分 トーキー カラー

1973年11月4日アメリカ 放送

昭和四十九年(1974年)八月十七日 日本NHK総合

日本語吹替版放送

ピーター・フォーク(コロンボ警部)

ジャッキー・クーパー(ネルソン・ヘイワード)

ジョアン・リンヴィル(ヴィクトリア・ヘイワード)

テイシャ・スターリング(リンダ・ジョンソン)

ケン・スウォフォード(ハリー・ストーン)

ロバート・カーチス(バーノン刑事)

レジス・コーディック(署長)

マリオ・ガロ(歯科医ベレンキオ)

日本語吹替版

小池朝雄(コロンボ警部)

中谷一郎(ネルソン・ヘイワード)

稲野和子(ヴィクトリア・ヘイワード)

津田京子(リンダ・ジョンソン)

槍田順吉(ハリー・ストーン)

藤本穣(バーノン刑事)

北村弘一(署長)

日本語吹替版 追加ヴォイス

銀河万丈(コロンボ警部)

稲葉実(ネルソン・ヘイワード)

浅井淑子(ヴィクトリア・ヘイワード)

脚本 アーヴィング・バールバーグ

    アルヴィン・R・フリードマン

    ローランド・キビー

    ディーン・ハーグローヴ

原案 ラリー・コーエン

音楽 ディック・デ・ベネディクス

製作総指揮 R・キビー

         ディーン・ハーグローヴ

監督 ボリス・セイガル

☆2018年10月15日・2021年3月23日発表記事を

  再編しています☆

 ネルソン・ヘイワードは上院議員補欠選挙の候

補者で公約に組織犯罪の撲滅を掲げ、犯罪組織

からの脅迫にも屈せず敢然と処罰の必要性を強

調し、脅迫状を受け取っても落ち着き、駆けつけ

たマスコミに対して勇敢な姿勢をアピールする。

 自己を滅却する精神が必要でいかなる脅迫に

も屈しない勇気が必要と説くネルソンのスピーチ

がテレビで生中継される。

 警備の一人のコロンボ警部は、マスコミの人混み

とヘイワードの大人気に驚く。

  「トマス・ジェファスン顔負けの名演説だな。

   お前さんの彼氏は当選確実だよ。」

 ホテルのヘイワードの部屋で、選挙参謀のハリー・

ストーンは、ヘイワード夫人ヴィクトリアの秘書リンダ・

ジョンソンに語る。

 リンダはネルソンの愛人で二人は固く愛し合って

いた。ストーンは、選挙中に浮気がバレたら、ネルソン

にとって致命傷になる為に、「別れろ!」とリンダに

強要する。

  「嫌よ。彼を愛してるの」とリンダは気持ちを語る。

「彼を思って身を引け」とストーンは厳しく命じる。リ

ンダは「ヘイワードさんに直接言われたら、納得しま

す」と約束し、裏口から出て行く。

 ネルソンが部屋に帰ってきて、演説の評価を聞き、

ストーンは正義をかざさなきゃもっと良かったと批評

し、「公僕には謙虚さが必要だよ」と述べる。

 寝室に一人入ったヘイワードは拳銃を用意する。

犯罪組織との戦いはストーンの書いた架空の筋書

で人脈の広い彼は組合のボスに「あんたの握って

いる三千票を寄こせ」と圧力をかけ、組織の人間に

「うちの事務所を襲わせろ」と指示を出す。

 ヘイワードはグラスに口紅が付いていることに着

眼し、質問し、ストーンはリンダを呼び別れろと指示

したことを伝えた。

  ヘイワード「俺の私生活に口を出すな!」

  ストーン「あんたに私生活はない。俺は今度の選

        挙に何もかも注ぎこんでいる。」

 ストーンは「あんたには俺が居ればいい!」と強調し

「お前さんは模範的な亭主になるんだよ」と説教し、

「リンダとは選挙が終わる迄じゃないぞ。これからも

ずっと縁切だ」と釘を刺す。 

  ヘイワードは「はっきり言ってくれるよ」と諦め、リン

ダに直接別れ話をすると述べ、受話器を取り、ストーン

が見ていない隙に電話を指で切り、受話器のみ口に

当てて、リンダに約束するふりの会話をする。

  ストーンは「冗談じゃない!護衛の刑事が付いている

のに愛人の家にしけこむ気か」と怒る。ヘイワードは「じゃ

あ家内の秘書が睡眠薬自殺を図ったと書きたてられても

いいのか」と問う。「どうやって巻くんだ?」とストーンが聞

くと、ヘイワードは護衛のバーノン刑事に、「葉巻をやるん

だが、政治家に葉巻は悪徳のイメージがあって買いにくい

ので買ってきてくれないか」と頼む。

 バーノンが承知して買いに行くと、ヘイワードはストーン

に「上着を貸してくれ」と提案し、上着を交換し、駐車場に

行って車を走らせ、自身の別荘に行ってそこで泊まってく

れと頼む。つまりストーンをヘイワードに見せかけ、護衛の

刑事たちも車で追うので、ヘイワード自身は一人で車を運

転しリンダのもとに行って別れ話をするという作戦である。

 ストーンは承知し、ヘイワードの服を着て、駐車場で車を

爆走させ、警官達が慌てて後を追う。

 ヘイワードは喜び先回りして別荘に行った。ストーンはヘ

イワードの別荘に着くと、リンダのもとに居る筈のヘイワー

ドが居て微笑んでいるのを見て訝り不思議に思う。その瞬

間、ヘイワードは拳銃を抜き、ストーンに数発弾丸を消音で

撃ち射殺する。21時20分に合わせた時計をストーンの遺体

の腕に巻く。

 ネルソン夫人のヴィクトリアは部屋の電気がいきなり消

えて吃驚するが、夫の目隠しに合い、更に隠れていた友人

達からサプライズで誕生日を祝ってもらい喜ぶ。宴も酣と

なった午後9時23分に、ヘイワードは宴を離れ、別室で

電話機の受話器を取り、通話機にハンカチを当てて、警

察に電話をかけ、テロリストを装い、「俺達は公約を実行し

た。ネルソン・ヘイワードの護衛は必要ない。奴は別荘で

死んで転がっているよ」と伝えた。

 つまり、テロリストがヘイワードの服を着たストーンを誤

って射殺し、犯行声明電話をかけたと偽装したのだ。

 「イタリア系と言うとマフィアのイメージばかりで見られ

る」と語る歯科医ベレンキオに虫歯の治療を受けていた

コロンボは、ラジオニュースでネルソン・ヘイワードが射

殺されたと聞き驚く。現場にかけつけると、被害者はヘ

イワードでなくて選挙参謀のストーンと聞き、「カミさんが

大ファン」であるヘイワードが無事と聞き喜ぶ。

 コロンボはヴィクトリア誕生祝いに湧くネルソン・ヘイ

ワード邸に行き、ストーンの訃報を伝える。迫真の演技

で「ストーンが死んだ」と悲嘆のふりをするストーンは、

「彼は親友だった」と嘘を語り、ヴィクトリアは不審に思

う。

 客が帰り酒浸りのヴィクトリアは、「貴方が怖い。あん

なにハリーを軽蔑してたのに」と疑問を語る。色々あった

が候補者と選挙参謀の関係であったことを語り、ヴィク

トリアともやり直したいとネルソンは力説し妻の心にも愛

が再燃する。

 選挙事務所にヴィクトリアと円満な姿を見せ、バーノンに

妻の護衛を頼んで家に帰したネルソンは自室に施錠し、リ

ンダにコピーを取って来るようにと指示し、彼女を自室に入

れて二人きりになると、久々となる逢瀬を楽しむ。

 リンダが部屋を出ると、待機していたコロンボが入り、

事件への疑問を語り始める。

 事件現場で街頭が子供達の悪戯で石を投げられて壊

されており、暗がりで何故犯人は正確にストーンを打てた

か?

 ヘイワードは車のヘッドライトで照らしたんだろと想像

を語る。

 コロンボはその意見を傾聴しつつ、車のヘッドライトで

照らしたとなるとストーンが乗っていた車の後ろにつけて

ライトを放つと規制に引っ掛かり警察の眼が光っている

ので無理だったろうと解説する。「犯人は最初から貴方

でなくてストーンさんを狙ったんじゃないですか?」と問い、

ヘイワードは「そいつは暴論だよ。私の服を着た選挙

参謀が殺されたんだ」と怒る。

 「リンダさん。コピーを頼まれたのに手ぶらで出ました

ね。」とコロンボが語り、ネルソンはドキリと緊張する。

 完全犯罪を目論んだストーンだが、コロンボの鋭い推

理はその矛盾を鋭く突いて行く。

 ガソリンスタンドはあったものの、事件当夜店は犯行

時刻に閉まっていたことをコロンボは突き止め、公衆

電話からの警察への犯行声明の発信は不可能であ

ったことを突き止める。

 投票日当日、ヘイワードはベランダに出て消音機

銃で自身の部屋に銃弾を撃ち込み、リンダと投票に

行き、夕刻に自身の部屋で爆竹を鳴らし、銃撃を装

う。

 襲撃があったように見せかけた。

  ☆☆対決のドラマ☆☆

koike

 小池朝雄(こいけ・あさお) 

 昭和六年(1931年)三月十八日生まれ。

 昭和六十年(1985年)三月二十三日死去。

 コロンボ役の小池朝雄の粘りとヘイワード役

中谷一郎の防衛が激突し、本編に緊張感が漲

る。

 『野望の果て』は愛人と相思相愛の男が、選挙前の用心

で関係を断てと参謀に命じられて拒否し、参謀を殺してし

まう物語だ。

 『殺人処方箋』は愛人を妻殺しに利用する精神科医の

物語で、『黒のエチュード』は愛人が妻や義母に関係を

明かすと迫り、彼女を殺してしまう指揮者の犯罪であり、

『権力の墓穴』は財産目当てに妻を殺す警察次長の物

語である。

 夫が妻や愛人との関係でいずれかを殺害する筋が多

いが、本作は愛人を深く愛し、妻にも許して欲しいと望む

男が主人公である。

 ジャッキー・クーパーが優しそうに見えて悪辣・冷酷な

ヘイワードを粘り強く勤める。

 コロンボが選挙事務所でヘイワードの部屋で矛盾を

突き、彼を緊張させていくドラマの盛り上がりは凄まじい。

 現場とスタンド閉店時間との関係から、ヘイワードの

細工を崩すエピソードも強烈だ。

 声色を使ったのかもしれないが、犯人自身が警察に

他者を装って電話をかけたのは危険じゃないか?

 第一警察は電話内容を録音するだろうし、テレビで

中継されてるヘイワードの声とそっくりと判断するだろ

う。

 候補者がホテルの部屋からテラスに出て壁を撃つ

のは誰が見てるか分からないから危険だろう。

 こうした疑問点が脚本に湧く。

 しかし、ヘイワードが予め部屋に弾丸を放ち、爆竹

を鳴らして、狙撃されたように偽装し、コロンボがその

矛盾を突く大詰は圧巻である。

 ピーター・フォークとジャッキー・クーパーの演技合

戦が燃え上がりドラマの緊張感が頂点に達する。

 日本語吹替版においても、小池朝雄と中谷一郎の

名演対名演の激突が圧巻である。

 細かい点で構成に疑問を感じるが、演技合戦の迫

力において壮大な名作である『野望の果て』は、第二

シリーズにおいて鋭い存在感を光らせている。

                             合掌

0 件のコメント:

コメントを投稿

【坂東玉三郎】「こだわりに向かって努力しただけ」完全版

【坂東玉三郎】「こだわりに向かって努力しただけ」完全版 youtu.be