2026年8月23日日曜日

「犬神家の一族」公開記念 "Triple Exposure" 金田一耕助と「刑事コロンボ」ファンに捧げる: metoLOG : The World of Mystery Movies

「犬神家の一族」公開記念 "Triple Exposure" 金田一耕助と「刑事コロンボ」ファンに捧げる: metoLOG : The World of Mystery Movies
「(前略)ふらりとアメリカへ渡った。ところがアメリカでもあまりつまるような事はなかったと見えて、皿洗いか何かしながら、あちこちふらふら放浪しているうちに、ふとした好奇心から麻薬の味を覚えて、次第に深みへおちこんでいった。
 もしもこのまま何事も起こらなかったら、かれも立派な麻薬中毒患者として、在留日本人間での持てあましものになったろうが、そのうち妙な事が起こった。サンフランシスコの日本人間で、奇怪な殺人事件が起こって、危うく迷宮入りしそうになった。ところがそこへふらふらと飛び出していったのが、麻薬常習者の金田一耕助で、見事にかれがこの怪事件を解決してのけたのである。」(『本陣殺人事件』 八 金田一耕助 より抜粋)
 「いま多美子を引っ張っていった男を金田一耕助もよくしっている。若いころアメリカの西部を三年ほど放浪したことのある金田一耕助は、そのころこの男に世話になったことがあった。名前をジャック安永といってハリウッドの映画で、日本人のコックなどを演じていた男である。」
(角川文庫 緑三○四「支那扇の女」所収『女の決闘』より抜粋)
https://metolog.seesaa.net/article/387393885.html

「犬神家の一族」公開記念 "Triple Exposure" 金田一耕助と「刑事コロンボ」ファンに捧げる

「犬神家の一族」公開記念

Triple Exposure
三重露出

~金田一耕助と「刑事コロンボ」ファンに捧げる



コロンボ







 皆様、こんにちは。
 めとろんです。

 今回は、市川崑監督作品「犬神家の一族」公開を記念して、ちょっとした"お遊び"と言いますか、"妄想の翼"を広げてみたいと思います。


◆思い起こせば高校時代、ぼくは授業中、先生の話を全く聞かず、ノートの片隅にちょっとした”小説”めいた物語(だいたい登場人物はクラスメイト)を書き、休み時間になると友人に読ませては、悦に入っていました。

 その一つが、かの名探偵・金田一耕助が「病院坂の首縊りの家」事件を解決後、昭和48年以降、渡米した後の話でした。ロサンゼルスを舞台にした密室殺人。事件そのものの内容は、ぼく自身よく憶えていません(笑)確か、超合金Z「マジンガーZ」の放つロケット・パンチを利用した、機械的トリック(?)が登場するような、「若気の至り」そのものの、他愛のないおハナシでしたが、その着想に関しては、今でも気に入っています。

 それは、ロサンゼルス警察のルテナント・コロンボと、ルンペン同然で生活している名探偵・金田一耕助が協力して事件の解決にあたる・・・という筋書きだったのです。そして、事件解決後、この物語は”驚天動地の結末”を迎え(てしまい)ます。

 それは、何と「ルテナント・コロンボが、金田一耕助の”息子”だった!」というオチでした。

 あの…座布団を投げないでください(苦笑)。探偵小説を手当たり次第に読み過ぎ、「刑事コロンボ」を観すぎてしまった高校生の、他愛ない妄想なんですから。
 -でも、”火のない所に煙は立たず”。ぼくが、そんな妄想を抱いてしまったのも、次の一文を読んだが為だったのです。

石上 いや、まあ、そのへんはいいとして(笑)…内容のほうはどうですか、金田一耕助のものと比較して…。
横溝 ああ(笑い)。いや、金田一耕助よりはコロンボのほうがよっぽど行動的だよね。
石上 そうですかねえ。まあ、どちらの風貌もどこかよれよれでして、たしか『獄門島』でしたか、いなかのおまわりさんに金田一耕助が間違えられて牢屋にぶち込まれてしまうというくだりがありましたが、あれと同じようなことがコロンボにもよくあって、仲間の刑事にルンペンなんかと間違えられて追っ払われたりして…(笑)。
横溝 そうそう(笑)。
石上 ところがそういう風貌に似合わず、捜査を論理的に進めていくという…そういうところが、実はむしろ金田一耕助の子孫がコロンボじゃないかという気がして(笑)。
(二見書房 特選「刑事コロンボ」他所収 「横溝正史、コロンボを語る」より抜粋)

◇そこで今回は、この”妄想”はまったく「あり得ない」おハナシなのか…ということ。
 ただし、言わずもがなではありますが、どちらも「小説上の、架空の人物」ですので、あくまで”おアソビ”として、「あり得るかも知れない」設定を楽しむ、というスタンスで臨みたいと思います。

【 生年月日 】

◆金田一耕助 大正2年、東北生まれ。
1932年(昭和7年)~1935年(昭和10年)、渡米。
◆コロンボ  生年月日不詳。…なので、彼を演じたピーター・フォークの年恰好から推測することにしましょう。フォークは1927年(昭和2年)生まれ。金田一が渡米した年に、何らかの理由で生まれた子供だとしても昭和7年生まれ。
見た目で“5年の誤差”であれば、”金田一耕助の息子”という設定も十分クリアできると思います。

【 出生の地 】

◆金田一耕助 「(前略)ふらりとアメリカへ渡った。ところがアメリカでもあまりつまるような事はなかったと見えて、皿洗いか何かしながら、あちこちふらふら放浪しているうちに、ふとした好奇心から麻薬の味を覚えて、次第に深みへおちこんでいった。
 もしもこのまま何事も起こらなかったら、かれも立派な麻薬中毒患者として、在留日本人間での持てあましものになったろうが、そのうち妙な事が起こった。サンフランシスコの日本人間で、奇怪な殺人事件が起こって、危うく迷宮入りしそうになった。ところがそこへふらふらと飛び出していったのが、麻薬常習者の金田一耕助で、見事にかれがこの怪事件を解決してのけたのである。」(『本陣殺人事件』 八 金田一耕助 より抜粋)
 「いま多美子を引っ張っていった男を金田一耕助もよくしっている。若いころアメリカの西部を三年ほど放浪したことのある金田一耕助は、そのころこの男に世話になったことがあった。名前をジャック安永といってハリウッドの映画で、日本人のコックなどを演じていた男である。」
(角川文庫 緑三○四「支那扇の女」所収『女の決闘』より抜粋)
◆コロンボ ニューヨーク出身。N.Y.P.D.に勤務後、ロサンゼルスへ。
 …ということで、見事に食い違ってしまうのですね(笑)しかし、横溝正史の筆致では、金田一耕助は「あちこちふらふら放浪」したのであり、あえてアメリカ西部「だけ」を放浪した、とは書いていないのだ(苦しい?)ここは、「夜歩く」の”ぶっ飛び叙述トリック”に倣い、「Y・S先生(=横溝正史)と金田一耕助との間に密約があり、彼が”渡米当初、じつは東海岸に飛んでいた”事実を(記述は曖昧にして)あえて伏せた」と読みかえてもいいのではないか。

【 人種について 】

◆金田一耕助 言うまでもなく日本人(東北人)
◆コロンボ イタリア系。祖父、両親ともにイタリア系。(自称)
 しかし、コロンボを演じたピーター・フォークは、父親はロシア系ユダヤ人、母親はポーランド=チェコ=ハンガリー系ユダヤ人なのです。

 さて、ぼくはこの「金田一=コロンボ親子設定」を可能なさしむる為に、ここで新解釈(?)を導入したい。(ただし、新「刑事コロンボ」のエピソード、「初夜に消えた花嫁」の存在は”なかった”ことにします(笑)ご容赦を。)
 それは、コロンボが”イタリア系”ではなく、”日本人の父とロシア系ユダヤ人の混血”である、という珍説(!)。皆様、ぜひ思い出してみて下さい。コロンボが、犯人に向ってまことしやかに語る、数多くの親戚を。義弟が数人、義兄は弁護士、またイトコに伯父、最早何人いるか見当もつかない甥…!これを、コロンボ一流の”虚構”と見るか、”真実”と見るか。親戚が多そうなイタリア系ならかくや、とも思わせますが、いかんせん人数が多すぎる。

 ぼくは、実はコロンボが「孤児」であり、彼の話す親戚は、皆「同じ孤児院で育った仲間(の親戚)」と考えてみたらどうかと思いついたのです。

 さすれば、この人数の多さ、そして多彩さにも納得がいくというものです。
 そして、孤児院の院長夫妻が「イタリア系」であった…というのはどうでしょう?

 金田一耕助の性格からすれば、子供が出来たと知って”相手を捨てる”とも思えませんから、おそらく”一夜限りの関係”で生まれ、止むを得ない事情で、母親と離ればなれになった「コロンボ」を、温かいイタリア系ファミリーのコミュニティが助け、育てた-。
 一応、彼に日本人の血が入ってはいますが、「ユダヤ人と日本人は、起源が一緒ではないか」という学者も存在する位で(特に賛成するつもりはありません(笑))、設定上は特に問題ないことにしましょう。

【 金田一耕助 渡米の真相 】

 そういうわけで、おっ!何とかなりそうな気配ではないですか(笑)
 そして最後に、金田一耕助がアメリカに旅立った理由は-、そう、悲惨な事件の連続に、世を儚んだわけではなく-「(その後、生まれたと風の噂に聞いた)”わが子”に会うため」であった。-その子こそ、わが「ルテナント・コロンボ」であった!

◆別冊宝島『僕たちの好きな金田一耕助』(宝島社)巻末に掲載された、横溝正史の長男・亮一氏への、貴重なインタビューから引用したい。

 「また金田一のキャラクターは、ある程度、父が自分をモチーフにしたもののようです。(中略)やはり私は「金田一」を読むと、父の散歩する姿が思い浮かびます。」

 そして、晩年の横溝正史の写真と、現在79歳であるピーター・フォークの写真を見比べると、ひじょうによく似ているのです!

 最後に、以下、角川文庫 緑三○四『横溝正史読本』小林信彦編より引用-

横溝 (レインコート・スタイルで出席)きょうは、コロンボ・スタイルで来たんだ。(笑)
小林 わざわざレインコートをつくらせたんですか。
横溝 戦前から持ってるよ。コロンボがぼくのまねしてるんだよ。(笑)

 不思議な因縁の二人と、その狭間に立つY先生(正史)のトライアングル。この甘美な妄想は、両者を跨ぐファンにとって、止め処もない魅力を放っています。

 いかがでしょう?一応、山田風太郎的解釈で言えば、「まったくあり得ない話」ではないと結論が出ました。この「あり得たかもしれない」物語、どなたか執筆されないでしょうか?

 では、また!


註:"Triple Exposure"=三重露出

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