【ネタバレレビュー】その展開は予想できなかった…ダークホースの暴挙に激震が走る「SHOGUN 将軍」 第4話
『トップガン マーヴェリック』(22)の原案者が製作総指揮、真田広之がプロデュース、主演を務めるディズニープラス「スター」のオリジナル・ドラマシリーズ「SHOGUN 将軍」が配信中。2月27日の初回配信から6日間で、スクリプテッド・ゼネラル・エンタテインメント・シリーズ作品としてはディズニープラスの中で歴代No.1となる900万再生を突破し、すでに映画・ドラマファンをはじめ、世界から高い評価を獲得している本作は、ジェームズ・クラベルによるベストセラー小説「SHOGUN」をハリウッドの製作陣の手で新たにドラマ化した一作だ。徳川家康、三浦按針、細川ガラシャら、歴史上の人物にインスパイアされた「関ヶ原の戦い」前夜を舞台に、陰謀と策略が渦巻く戦国の時代を、壮大かつ圧倒的な映像で描きだすスペクタクル・ドラマシリーズとなっている。 【写真を見る】怒涛のラストで勢力図も激変するかも?「SHOGUN 将軍」第4話人物相関図(ネタバレあり) MOVIE WALKER PRESSでは、本作の魅力を発信する特集企画を展開。本稿では、第4話を、ライターの相馬学がレビューする。 ※以降、ストーリーの核心に触れる記述を含みます。未見の方はご注意ください。 ■虎永はどこへ?突然の放置にイラ立つ按針 第3話にはスペクタクルとアクションが宿り、吉井虎永(真田)と按針/ジョン・ブラックソーン(コズモ・ジャーヴィス)の関係性に変化が見え、かなりアツい話だったが、この第4話は人間ドラマにフォーカスする作り手の意思を感じた。これまでの3話はおもに大坂で政治的な駆け引きが繰り広げられてきたが、今回は第1話の舞台のひとつでもある網代限定。按針は虎永と共に、自身が漂着した場所に帰ってきたのだ。ただし、彼の状況は以前とは異なる。第1話での按針は日本語を理解しない"蛮人"だったが、今回は虎永からのお墨付きを得て旗本という地位を得ている。 大坂からの大脱走劇が繰り広げられた第3話のラストで虎永と按針の絆が深まったことから、この第4話では新天地で友情を育むと思いきや、我らが英雄、虎永は"用事があるから、あとはよろしく"とばかりに、あっさりと旅立ってしまう。按針には、これは心もとないだろう。しかも、そこは第1話で按針に小便をかけて辱めた若き領主、樫木央海(金井浩人)が仕切っている村。実際、按針は彼に対する怒りが収まっていないが、"fuck"という単語を無視して礼儀正しい言葉に言い換える、虎永に通訳を命じられた戸田鞠子(アンナ・サワイ)によって事なきを得た。ほかにも鞠子の"超訳"は按針をしばし助ける。 按針をイラ立たせるのは、これだけではない。"ハタモト"という自分の立場を理解できず、愛していない正室、宇佐見藤(穂志もえか)を押し付けられ、堅苦しい生活を強いられるのだから。庭番や使用人もいる恵まれた暮らしではあるが、西欧の自由な空気の中で生きてきたイギリス人の按針には不自由でしかない。自分の船も取り返せないし、仲間とも会えない。そしてクレームをつけるべき相手、虎永はすでに網代にはいないのだ。 ■愚息・長門が与える衝撃!第5話が待ち遠しい 第4話の肝は、この村で按針がいかにして自分の居場所を築いていくかにある。第4話のタイトルである"八重垣"とは、鞠子が按針に語る、侍社会での心の在り方の象徴。礼儀や作法はあくまで上辺のものであり、真実はつねに八重の垣根に守られた自分の心の中にある。ここでの鞠子の言葉は禅問答のようでもあるが、それだけに味わい深い。按針が初めて地震を体験した際にも、鞠子はこの地で生きるための哲学を話しているので、こちらにも耳を傾けてほしい。 ともかく、按針はここから自分の居場所を築いていくわけで、鞠子の協力はもちろん藤の勇気ある行動によって、按針が最初は牢獄のように感じていた新居の空気になじんでいく。一方で、大砲の長距離砲撃を樫木藪重(浅野忠信)の軍に指導することにより、武士としての居場所も出来上がっていく。納豆を食べることにトライするのも、鞠子にロンドンの話をしながら恋人同士のような会話をするのも、按針が嫌々ながらもここでの生活を受け入れていったことの表われだ。 自分の居場所を築いてく按針とは対照的に、足元が崩れていくのを感じているのが虎永の家臣にして伊豆の大名、藪重だ。前話で知らず知らずのうちに虎永の大坂脱出に手を貸して、虎永と敵対する五大老の1人、石堂和成(平岳大)の怒りを買ったうえに、虎永に五大老職を辞すと打ち明けられて激しく動揺し、さらに石堂の部下、根原丞善(ノブヤ・シマモト)に大坂に来るよう詰め寄られて絶体絶命となってしまう。いまさら石堂に寝返るにも寝返られない。クセ者だけに、ここでくじける藪重ではないと思うが、どう乗り切るのか、今後が楽しみになってくる。 この第4話では、先のドラマをおもしろくしそうなキャラクターがぞろぞろと動きだす。先述の藤は、嫌々ながら按針の正室になったものの、その宿命を受け入れてからの凛とした姿は堂々としており魅力的だ。また、藪重の甥っ子である網代の領主、央海は叔父や虎永に忠誠を示しながらも遊女、菊(向里祐香)との恋に溺れており、彼女の「央海様がお殿様だったらよかったのに」という言葉に、なにか思うところがある様子。 しかし、誰よりもドラマを動かすのは、虎永が去ったあとに目付け役として網代に残った息子の長門(倉悠貴)だ。ここまでの3話では若気がフライングするバカ息子的なポジションで、さほど目立たなかったが、ここにきて存在が俄然クローズアップされる。第4話は落ち着いた群像劇のようなスタイルかと思って見進めていたが、最後の最後で彼がとんでもない事件を起こしてしまうのだ。偉大な父に認められたい。父を救いたい。周囲に尊敬されたい。その気持ちもわかるが、これは取り返しのつかないことなのでは!? ともかく、このクライマックスはシリーズでもっとも激しいバイオレンス描写に彩られており、強烈な印象を残すに違いない。舞台が網代限定となり、牧歌的な空気に包まれると思いきや…の急転直下。どうする、虎永!?早く次が観たい! 文/相馬学
0 件のコメント:
コメントを投稿