日本書紀から古代日本の先天異常症例の記述、京都大学が発見
京都大学の東島沙弥佳特定助教(白眉センター)と山田重人教授(医学研究科)の研究グループは、日本最初の正史である『日本書紀』に、医学的に先天異常と考えうる記述を発見した。
先天異常(出生前に生じる構造的または機能的異常)は全新生児の約6%が有するとされ患者や患者家族の生活の質(QOL)に多大な影響を及ぼす。予防や治療には継時的かつ多様な地域での疫学実態の把握が必要だが、体系的研究の開始は1960年代以降だった。それ以前、特に前近代の先天異常の実態は世界的にほとんど解明されていなかった。
日本最古の正史『日本書紀』には初代から41代天皇までの天皇系譜と事績が記されているが、他にも災害や天文の記録、奇妙な姿形をしたヒトに関する記録がある。その中に、しっぽの研究者である東島特定助教がしっぽの生えたヒトの記述があることを記憶していたことから、今回の研究が始まった。
研究では、ヒトの異常な身体・精神特徴に関する記述をピックアップし、得られる限りの情報から病名の診断を試みた。その結果、初代神武天皇から41代持統天皇に至る記述の中に合計33 例、ヒトの異常な身体・精神特徴に関する記述を見つけた。
例えば、生まれつき腕にリンパ管奇形と思われる肉の高まりを持つ天皇の話や、生まれつき話すことが困難な皇族たち、天皇や皇族以外にも、しっぽが生えた人間や2つの顔をもつ宿儺(すくな)なども登場する。
症状ではなく何かの比喩らしい表現も存在したが、医学的に先天異常と考えうる記述が発見できた。今回の分野横断的な研究は、古代文献をある種の医学カルテと見ることで、日本のみならず古代における東アジア全体の先天異常実態解明の可能性を示したとしている。
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