2024年4月22日月曜日

Lotta Maija – kukkameri Magazine

Lotta Maija – kukkameri Magazine

Lotta Maija

Photo by Satsuki Uchiyama

ロッタ・マイヤ

テキスタイルデザイナー、イラストレーター

第4回<中編>

どこまでも自由に、伸びやかに描き出す

フラワープリント誕生ストーリー

大学卒業後まもなく、2018年にマリメッコのデザインに取り掛かり、2020年のスプリングコレクションでマリメッコデビューを果たした、ロッタ・マイヤさん。このとき全6柄が誕生しました。それぞれのデザインが生まれた背景についてお聞きしました。

――マリメッコのために描いたデザインについて、それぞれのストーリーをお聞かせください。

L 「Apilainen(アピライネン)」「Tuulahdus(トゥーラフドゥス)」「Tähtiniitty(ターッティニットゥ)」は、同じスケッチから生まれました。アピライネンがオリジナルです。元々ホームコレクションのためのものでしたが、のちにクロージング(服)のコレクションにもなりました。アピライネンは、花が1つの方向に向いています。服の場合は、上下逆さまになっても問題のない絵柄にしないといけないので、トゥーラフドゥスとターッティニットゥを作りました。

「Apilainenアピライネン(小さなクローバー)」2020年
画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: 2-lottamaija-marimekko-tuulahdus2-3-683x1024.jpg
「Tuulahdusトゥーラフドゥス(そよ風)」2020年
「Tähtiniittyターッティニットゥ(星の牧草地)」2020年

L  このプリントはどれも風が花をそよいでいる様子を描いています。サマーハウスでスケッチを描いた日のことはよく覚えていて、その日はとても強い風が海から入り込んでいて、草がなびいていました。

花を描くとき、
ある特定の花を表現しているわけではありません。
アピライネンが、必ずチューリップに見える必要はないのです。
見ている人が、その花がどんな花なのか、
考える余地を残しておきたいと思っています。

L  また、植物図鑑を眺めるのが好きで、ついつい集めてしまいます。中でも古い植物図鑑の手描きの細かい描写を見るのが好きなんです。いつもインスピレーションの源は具体的なものですが、私が描くものは、インスピレーションの源をそのまま表現したいわけではなく、そこから異なるものを生み出したいと思っています。

ロッタさんがコレクションしている植物の本。

最近、日本の花の本を見つけました。帰国するためにもう荷造りをしてしまったので、フィンランドに帰ってじっくり眺めるのを楽しみにしています。

――マリメッコの他のデザインはどうのようにして生まれたのですか。

L  先ほどのアピライネンと、こちらのKasvio(カスヴィオ)、Palsta(パルスタ)、は、同時にホームコレクションのためのデザインとして生まれました。なのでこれはある種のトリオですね。

左/「Kasvioカスヴィオ(植物相)」 右/「Palstaパルスタ(庭の一画)」2020年

L  カスヴィオは、大きさや種類の異なる花で構成したもの。これも何か具体的な花を描いているわけではありません。私は形の異なる葉や、植物の動きに興味があるんです。

人によっては花が悲しそうに見えたり、
枯れそうになっていたりするように見えるかもしれませんが、
意図してそうしたのではありません。
私にとってはこの方が自然であり、自由を感じます。

L  描くときは常に自由でいようと心がけています。ガッシュで描く際もスケッチはせずに、例えば、絵具を混ぜて作っておいた10色と10本の筆を用意して、自由に、心の赴くままに描きます。計画は立てずに、ただただまっすぐ目の前の紙と向き合い、埋めていきます。

左/ガッシュ(不透明水彩)で描いたスケッチ。右/ノートにはカラフルなペンで。
どちらものびのびと描かれていて、ロッタさんの楽しそうな心までが見えてくる。

――もう1つのデザイン「Herbaario ヘルバーリオ」は、大きな花、小さな花、シャープな花、丸みを帯びた花など、様々な花で構成されていますね。

L  ヘルバーリオは、特別なドレスのために描きました。そのためあえて余白のあるデザインになっています。

「Herbaarioヘルバーリオ(植物標本)」2020年

L  このデザインはファッションチームとの密なやり取りをして生まれたコラボレーションアイテムで、彼らはドレスに対して明確なイメージを持っていました。私はそれまでドレスのためのテキスタイルデザインの経験があまりなかったので、彼らのリクエストに応えることは簡単ではありませんでしたが、ベストを尽くしました。結果的に、とても良いコラボレーションになったと思います。

ヘルバーリオのためのスケッチ。

――2022年にはマリメッコから再びフラワープリント「Suvikimppuスヴィキンップ」と「Suvekasスヴェカス」が発売になっていますね。

左/「Suvikimppuスヴィキンップ(夏のブーケ)」2022年
右/「Suvekasスヴェカス(夏のような)」2022年

L  マリメッコから、もう一度フラワープリントを作りませんか?と依頼があったんです。それはとても嬉しいことでした。今回は、花が満開のリッチなデザインというリクエストでした。なので、スヴィキンップはぎゅっと花が詰まったデザインになっています。

スヴェカスは、インターネットで見つけたユーカリの花からインスピレーションを得ました。それをそのまま描いたのではなく、そこからさらに想像を膨らませて描いています。丸い球体のような花と、異なるサイズ、異なる形の花びらが開いたり閉じたり、風が吹いて飛んでいったりと、様々な花で構成したいと思いました。

――ドローイングやペインティングをする際、あらかじめ用意した色を使って、直感的に自由に描くということでしたが、スヴィキンップをデザインするときも最初から色のイメージがあったのでしょうか。

L  マリメッコのデザインは、オリジナルスケッチと同じ色ではありません。ホームコレクションを手がけた際は、マリメッコのデザインチームがカラーパレットを決めました。私はそのカラーパレットに沿って進めています。でも、スヴィキンップやスヴェカスのときには、彼らが思う「ロッタ・マイヤの色」を選んでくれたので、違和感を感じませんでしたね。この色は、本当に私をイメージする色から来ていると思います。

マリメッコとの仕事は、常に楽しく、素晴らしいものです。初めて声をかけてもらったときも、彼らが作りたいと思っているものを見せてくれました。私がデザイナーとして違う提案をすることもできましたが、彼らの意見が素晴らしかったので賛成しました。マリメッコのデザインチームは、とても才能のある人たちの集まりであり、彼らとの仕事にはいつも満足しています。時に、私があまり使わない色が選ばれることもありますが、美しいと感じています。

――テキスタイルデザインは、どんなものにでもなり得るのが魅力ですよね。

L  その通りです。私は、良質なマテリアルを使った、長く使われるアイテムの方が重要だと感じています。実際、自宅のインテリアは天然素材と繊細なプリントを組み合わせるのが好きですね。服もほとんど無地のものを着ているんです。柄ものというと、自分がデザインしたマリメッコの服くらい。

私にとってホームデコレーションは重要です。
家に置くものは良質なものを選んでいます。
インテリアに関しては好みがうるさいと思います(笑)。

L  もし気に入るものが見つからなければ、しばらくの間、それがなくたって構わない。実際、気に入るケトルが見つからなくて、ケトルなしで5年間過ごしました。でもデザインする際は、プロセスの初期ではあまりプロダクトについて考えていません。リピートなどテクニカルな段階になり、パソコンで作業をするようになって初めて、柄のサイズなどについて考えます。

記事は<後編>に続きます。<後編>では、マリメッコ以外のお仕事や、ロッタさんと日本の繋がりについてお聞きしました。<後編>は1週間後に公開予定です。 

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