放送30周年『古畑任三郎』 今泉が事件解決に導いたエピソード5選
1994年の放送開始から30周年を迎えた、田村正和の主演ドラマシリーズ『古畑任三郎』(フジテレビ系)が、フジテレビ「ハッピーアワー」枠(毎週月曜〜金曜 第一部13時50分、第二部14時48分)で一挙放送中だ。老若男女を問わず、いまだにシリーズの人気は根強い。思い出に残るエピソードはさまざまあるが、本稿では西村まさ彦(放送当時は西村雅彦)が演じた古畑の"永遠の相棒"である部下・今泉慎太郎が事件解決に貢献した、えりすぐりの"エピソード5選"を独断で紹介する。
【写真】約30年前の田村正和&西村まさ彦の姿! 『古畑任三郎』名場面集
■「偽善の報酬」(第2シリーズ・第5話)
ゲスト俳優の加藤治子が演じるのは、女流作家の佐々木高代。一つ屋根の下で一緒に暮らしながらも、犬猿の仲である妹でマネージャーの和子を、衝動的に殺してしまう。
自宅2階のベッドで待つ高代のもとを訪れた古畑は、1階にある殺害現場のキッチンでちらばっていたかつお節が高代のスカートに付いていることに気が付く。しかし、「1歩もキッチンに入らなかった」という彼女の証言と矛盾していたために、初対面で犯人と確信。疑いのレベルではなく、序盤から古畑が犯人を確信するのは数あるシリーズ作品の中でもまれな展開だ。
ただ、物証がなければ高代が犯人だと追求できない。凶器を探すために今泉が現場に残り、事件発生から一夜が明けた。
凶器発見の決め手となったのは、事件発生の翌日に今泉が夕飯で作ろうとした「ピーマンの肉詰め」で、高代が空き瓶に貯金していた「6万7000円」分の小銭を、高代がストッキングに詰め、妹の頭に振り下ろしたことを突き止めた。
■「黒岩博士の恐怖」(スペシャル)
緒形拳が演じた、検死を担当する監察医・黒岩健吾の怪演も印象に強く残る作品。第3シリーズから新たにレギュラーメンバーとなった、石井正則が演じる古畑直属の新たな部下・西園寺守の初登場回だった。
西園寺の誘いで本職へと復帰した古畑は、肛門におみくじを詰められた遺体が次々と発見される連続猟奇殺人事件を捜査。その過程で黒岩に疑いの目を向けるも、確実な証拠をつかめずにいた。
物証となったのは、今泉の祖母が古畑のためにと手渡した「ゆで卵」で、黒岩のもとを訪れた古畑がたまたま遺体の手に置いたゆで卵から、黒岩が殺めた自身の助手・春木(栗田貫一)の指紋が検出。犯人追求の決め手となり、古畑は西園寺に「今泉を手放さない理由がこれで分かったろ?」と告げた。
なお、本エピソードは、第3シリーズで古畑の事件解決に一役買う、さまざまな職業を渡り歩く謎の男・花田(八嶋智人)の初登場回にもなった。
■「若旦那の犯罪」(第3シリーズ・第1話)
歌舞伎俳優の市川染五郎(現・十代目松本幸四郎)が、若手人気落語家の犯人・気楽家雅楽を演じた作品だ。
兄弟子の気楽家苦楽(モロ師岡)が作った新作落語を演じたいと強く思う雅楽だったが、苦楽は譲るのを断固拒否。雅楽は新作落語を自分のものにするべく、自殺に見せかけて苦楽を殺害しようと計画を企てた。
事件解決のキーアイテムは、雅楽の扇子だ。劇中で、雅楽が弟子と共に大喜利の答えを考えている場所に古畑たちが立ち会った際、くだらないネタをつぶやいた今泉は、顔中に墨を塗られるはめに。
のちに高座で「ラーメン」を表現しながらも、扇子を開かない雅楽の行動に疑問を持った古畑は、今泉のおでこに残った墨を見て、扇子に血痕が付いていると確信した。その直後、今泉にハッキリと「お手柄だよ」と声をかけるシーンは、2人の関係を強調する名場面でもある。
「今泉さん、お手柄ですよ。古畑さんが手放さない理由が分かりました」
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■「完全すぎた殺人」(第3シリーズ・第8話)
ゲスト俳優の福山雅治が、かつての事故で車椅子の生活を余儀なくされた薬品の研究者・堀井岳を演じる。冒頭で古畑が語るのは「アームチェア・マーダラー」、すなわち、自室から出ずに座ったまま完全犯罪を目論む犯罪者がテーマだ。
昔の恋人・恵(戸田菜穂)が自身を裏切り、妻子持ちだった等々力(板尾創路)との結婚を決めたと思い込む堀井は、復讐を決意。等々力に「友情の証」として、爆弾を仕込んだ「ロダンの考える人」をプレゼントした。
堀井の策略で恵が犯人だと誤解した西園寺が捜査を進める中、古畑は堀井に疑いの目を向ける。確証を得たのは、研究所で開発中の接着剤で遊んでいた今泉が、誤ってアゴの下から手を離せなくなったのを見たのがきっかけで、犯人を追い詰める糸口となった。
ただ最後、初対面時の堀井の一言で「あなたを疑っていましたよ」と古畑は告げる。その理由はあえて記さないが、再び見返したくなる秀逸なエピソードの一つだ。
■「最後の事件」(第3シリーズ・第10〜11話)
スペシャルをのぞく、連続ドラマシリーズの集大成となる作品。本放送時は2週連続となった大作で、江口洋介が演じる日下光司を筆頭とした犯罪者グループに翻ろうされる地下鉄駅員、古畑たちの奮闘を描いたスリリングな展開が続く。
日下がリーダーを務める過激派の動物愛護団体「SAZ」の1人が、裏切り者のメンバーを殺害。しかし、殺されたメンバーが持っていたカバンには、団体の秘密が書かれた「手帳」が入っており、挙句、カバンが地下鉄で保管されているとかぎつけた日下たちは、狂言の地下鉄ハイジャック事件をでっち上げ、公安職員になりすまして地下鉄に忍び込んだ。
偶然、地下鉄へのクレームを伝えに来た古畑と、同行した西園寺も事件に巻き込まれるはめに。その後、古畑に仲間はずれにされた今泉が、ハイジャックされていたはずの終電で現場の駅へ到着し、犯人に軟禁されていた西園寺を救出する。
やがて、真相解明のきっかけとなった今泉に、西園寺も「今泉さん、お手柄ですよ。古畑さんが手放さない理由が分かりました」と、太鼓判を押した。
(文:カネコシュウヘイ)
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