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土曜ドラマ 『松本清張シリーズ 天城越え』 (1978年)
家出少年と娼(しょう)婦、そして無口な土工、天城峠で偶然出会った3人の旅は殺人事件で終わりを告げる。大正時代の事件を追う刑事の回想からドラマはスタート。しだいに真相が明らかにされていく。
和田勉さんの現場
主な舞台となった天城峠は伊豆市湯ヶ島と河津町を結ぶ旧街道で、事件は『伊豆の踊子』(川端康成著)でも有名な旧天城トンネル(正式名称:天城山隧道)で起きる。ドラマのロケも伊豆山中で行われ、昼でも暗い石造りの風情ある天城トンネルが物語をいっそう盛り上げた。
ロケは日没前に終了して全員が宿で一緒に食事をするというスケジュールだったため、出演者、スタッフともにチームワークの良い現場だったと主演の大塚ハナを演じた大谷直子さんが振り返っている。夜遅くまで宴を続けるではなく早めに就寝、規則正しい生活だったそうだ。
ロケに限らず、スタジオでも、シーン終わりに大きな声を出し、手をたたいて「よかった!」と、俳優たちの前に現れる和田勉チーフ・ディレクター(当時)の反応が、制作に携わる全員の士気を高めていたことも強く印象に残っているそうだ。
究極のお遍路役
このドラマにも原作者の松本清張さんが出演。この時は、天城峠を行くお遍路役。殺人事件のてんまつを目撃するという役どころでもあった。犯人の少年に語りかけるセリフもあり、演出の和田勉チーフ・ディレクター(当時)は「先生が演じたなかで、このときのお遍路がとどめの一撃だと思いますよ」と話し、「お遍路とか巡礼というのは全部の人格が出るものですね」と、当時松本清張さんとの対談で語っている。それに対して松本さんが、「劇の上では役者の人格が出て困る場合があるだろう」と問いかけているが、「でも、先生の場合は出るんですよ、いやおうなく。そこでお願いしているわけですよ。つまり先生の役っていうのは誰もまねができないというのは名人芸なんですよ」と絶賛。さすがに松本さんも「もう、いいよ、その話は(笑)」と照れていた。
ステラNHK名作座 コラム
松本清張も出演。迷宮事件の真実
大正15年、夏。天城峠を下田に向かう3人がいた。足抜けした娼婦ハナ(大谷直子)、流れ者の土工の男(佐藤慶)、家出した鍛冶屋の少年(鶴見辰吾)。その後、男が死体となって発見され、ハナに疑いがかかる。数十年後、迷宮入りした事件の真実をつかむため、当時の担当刑事だった田島老人(中村翫右衛門)がある場所を訪ねてくる。
暗いトンネル、息苦しいほど濃い緑、激しく水しぶきをあげる急流、その場に似合わない大谷の明るい色香。微妙なバランスが保たれていた人のつながりが揺らぐ瞬間が、太鼓の音で絶妙に表現され、いつのまにか視聴者も人けのない山道を歩く不安感に包まれてしまう。そして、社会の暗さを凝縮したような男の最期の言葉。この辺りにも松本清張作品らしさが感じられる。清張本人が事件の目撃者として出演している点にも注目したい。
最大の謎は、なぜ、男は殺されたのか? 田島老人の問いかけを、なんともいえない表情で受け止める、初老を迎えたかつての少年(宇野重吉)。数十年を経て、あの日の揺らぎと不安をよみがえらせる2人の演技に、背中がぞくぞくする。
文/ペリー荻野
土曜ドラマ 『松本清張シリーズ 天城越え』【1978年放送】 大正末期、天城峠で起きた殺人事件。ベテラン刑事と若い刑事の2人が捜査をするが事件は迷宮入り。事件当時若かった刑事の回想シーンでドラマは始まる。家出をした少年が天城峠で出会ったのは優しいしょう婦。やがて少年の一途で純粋な心が・・・。現在と当時を振り返りながら真相を明らかにしていく。松本清張はお遍路さん役で登場する。第33回芸術祭大賞を受賞。 |
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