息を止めて歌うヒゲクジラの驚きの発声法をついに解明、人工的な音への弱みも明らかに
さらに研究が必要
一方、そのような一般論を提示するには今回の研究のサンプル(3頭)は少なすぎる、とライデンバーグ氏は考えており、もっと多くの標本を調査する必要があるとクギを刺している。 米アラスカ大学サウスイースト校のハイディ・ピアソン海洋生物学教授も、ライデンバーグ氏と同様の見解だ。ピアソン氏も今回の論文には関与していない。研究対象となった3頭はすべてナガスクジラ科の子クジラだったので、他の科のクジラの調査も必要だと、ピアソン氏は考えている。エレマンス氏は、クジラの歌で有名なオスのおとなを調査したいと言う。 しかし、研究者たちはこうした調査に特有の難しさも理解している。ピアソン氏は「こうしたサンプルを入手できるだけでも、大きな収穫です」と話している。
騒音公害の改善を
さらに研究者たちは、3Dコンピューターを用いたシミュレーションで、クジラののどの筋肉が動いている時に何が起きているかも調べてみた。その結果、クジラの喉頭は、300ヘルツ以上の周波数や100メートル以上の深さの水中では音を出せないことが明らかになった。 あいにく、クジラが出せる声の「水深と周波数帯域は、海中の人工的な騒音の範囲とほぼ一致しています」とエレマンス氏は明かす。つまり、歌うクジラたちは、船舶が出す30~300ヘルツの騒音に悩まされているのかもしれない。 そこで、この論文では、騒音公害の改善が急務であることを強調している。そのためには船舶の航行を制限し、減速ゾーンを設け、歌うクジラが多い海域を保護し、船舶の騒音を軽減し、保全計画にリアルタイムのデータを用いるべきだ、とピアソン氏は言う。 ライデンバーグ氏は、こうした取り組みに好適な例を挙げている。たとえば、ニューヨーク州の洋上風力発電所が冬に地震調査を実施しても、クジラの歌を妨害することはない。「この時期、歌うクジラたちは温かい海域に移動して春休みを楽しんでいるからです」とライデンバーグ氏は話している。
文=MELISSA HOBSON/訳=稲永浩子
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