2024年2月28日水曜日

音楽には物語がある(32)シルクロードと岩崎宏美 「中央公論」7月号 - jun-jun1965の日記

音楽には物語がある(32)シルクロードと岩崎宏美 「中央公論」7月号 - jun-jun1965の日記

音楽には物語がある(32)シルクロードと岩崎宏美 「中央公論」7月号

 日中交流史が専門の比較文学の後輩である榎本泰子が『「敦煌」と日本人』(中公選書)を出した。一九八〇年にNHKで放送が始まった「シルクロード」と、その後製作された映画「敦煌」を中心に、あの当時の日中文化交流を描いたものだ。

 私の名前は、井上靖の「敦煌」(一九五九)を読んでつけたというが、実際に「敦煌」を読んだら、くだらない通俗小説だったのでがっかりした。佐藤浩市と故・中川安奈で作られた映画も、ショボい出来だった。ただし中川安奈は好きだったから、早世したのは残念である。「敦煌」は中川のデビュー作だが、ヌードシーンも撮影されたが使われなかったようで、当時の週刊誌には、「あたしのヌード、あんまりキレイじゃなかったのかしら」と中川が言ったなどと書かれていたが、これは週刊誌のおふざけで、実際は使われなくてほっとしたという。

 NHKの「シルクロード」は、しかし、一向に私の関心を引かなかった。同年、ブームにあやかって「シルクロードのテーマ」と副題をつけてリリースされた久保田早紀(現・久米小百合)の「異邦人」にはエキゾティシズムが感じられたが、喜多郎の音楽には、エキゾティックというより、田舎臭さが感じられた。

 別に音楽だけが原因ではないのだが、音楽について言うと、これはその後NHKで放送されている「関東甲信越小さな旅」の主題曲を思わせるのである。この番組は「いっと6けん小さな旅」というタイトルから変わったものらしい。かつてNHKでは、「新日本紀行」という名番組を放送していたが、その主題曲は冨田勲が作曲した実にすばらしいもので、この曲とともに一地方の情景が映し出されると、日本の一地方があたかもクブラ・カーンの都のような異国味を帯びて感じられるほどだった。それとは対照的なのが「シルクロード」や「小さな旅」の音楽(大野雄二)なのである。

 調べてみると、この「小さな旅」は、のちに歌詞をつけて岩崎宏美が歌っていた。岩崎の歌自体は、曲から受けるあの感じはない。

 岩崎宏美といえば、私が中学校一年の一九七五年にデビューしているが、その頃、「ああこの人はキレイだな」と思った記憶がある。クールビューティという感じである。年ごろのせいで、それまでにも学校で好きな女子などはいたのだが、それとは違う感じで芸能人女性などを美しいと感じ始めた時期である。「ウルトラマンA」でヒロインを演じた星光子も、岩崎宏美と似た感じだったが、小学四年生だったその時分にはさほどには思わず、あとになって美貌だと思って好きになった。あの髪型がいいのである。

 岩崎宏美は、「二重唱」で歌手としてデビューする前に、初代水谷八重子の部屋子として新橋演舞場に通っていたというが、そう言われればあの髪型とか、日本人形のような和風の雰囲気も納得がいく。

 NHKの「みんなのうた」でも、岩崎の声や歌唱法は重宝されて、「ぼくのプルー」や「走馬燈」で清冽な歌声を聞かせてくれた。だがそれだけに、岩崎の代表作のようになってしまったのが「聖母たちのララバイ」だというのが私は残念なのである。これはよく知られる通り「火曜サスペンス劇場」の主題歌として知られたものだ。私が高校生のころ、二時間の推理ものドラマといえば、テレビ朝日の「土曜ワイド劇場」だったのが、日本テレビがこれに対抗して始めたのが「火曜サスペンス劇場」略称「火サス」ということになる。

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