「届いたと感じた」──野田秀樹『正三角関係』ロンドン公演報告会で思い語る。今後の展望も
戦争があったことを身体で感じている世代として
これまで『パンドラの鐘』(1999年)、『オイル』(2003年)などの作品で原爆を題材としてきた野田だが、原爆について扱うのはこれが最後と明かす。記者から「今後、第二次世界大戦について書くことは?」と問われると、「わかりません。最後、というつもりで書きました。もう一回書けるって思うなよ、という気持ちでした」と述べるとともに、戦争を書くことについて、こうも語った。
「自分は昭和30年生まれ。戦争が終わった10年後に生まれ、戦争に負けた国に育ち、そうこうしているうちにベトナム戦争。若い頃は戦争体験者がたくさんいて、小説家はそれを実体験として書いていましたが、自分には書く資格がないと思い、一切手を伸ばしていなかった。ただ、『パンドラの鐘』を書いたときは、少しずつ戦争が遠くなりすぎた世代が増えてきた。そうなると、戦争があったということを身体に感じている世代として書くように。自分の日常とか人生は、大したことがないじゃないですか(苦笑)。こういったことを書くべきなのかなと思うのは、私の劇作家としての癖みたいなものかもしれません」
今回のロンドン公演は、日本で上演した新作を同じ年に海外で上演するというNODA・MAP初の試みでもあった。舞台装置や字幕の準備のため、野田は日本での初日の約3カ月前に既に台本を書き上げていたとも。野田作品の面白さを字幕で伝える難しさ、工夫についても紹介された。さらに内田が、野田の海外進出について「サブカルチャーが認められるプロセスだった」としながら、今後の海外公演についての野田の考えを聞いた。
「私に限らず、世界的にサブのはずだったものがサブではなくなっているように感じる。私はいまから急に作品を変えられるわけではないので、これでやっていくつもりです。今回、公演にテアトル・ド・コンプリシテのプロデューサーたちが来ていましたが、1993年にロンドンに留学していろんなことを知ったと話すと、コンプリシテでは若い人が逆に私の作品から影響を受けているという。面白い話になっているなと感じました。再来年、海外にまた行きたいなと思っています。再来年だとすると新作を持っていかなくてはいけないことになりますが、それでやっていきたい。一作一作、ひとつずつを、自分の遺作だと思って作るしかない、という気はしています。おそらくこれが60代最後の作品。次は70代最初の作品です」
12月2日(月) からは、8月の東京公演で収録された『正三角関係』舞台映像の世界配信がスタートする。
<配信情報>
NODA・MAP第27回公演『正三角関係』
作・演出:野田秀樹
出演:
松本潤 長澤まさみ 永山瑛太
村岡希美 池谷のぶえ 小松和重
野田秀樹 竹中直人
秋山遊楽 石川詩織 兼光ほのか 菊沢将憲 久保田武人 後東ようこ
近藤彩香 白倉裕二 代田正彦 八条院蔵人 引間文佳 間瀬奈都美
的場祐太 水口早香 森田真和 吉田朋弘 李そじん
配信期間:2024年12月2日(月) 12:00~2025年1月14日(火) 23:59
チケット販売期間:2024年11月25日(月) 12:00~ 2025年1月14日(火) 18:00
※PPV(ペイパービュー)形式。配信期間中、1回のチケット購入でひとり1回視聴可能。
※再生開始から4時間以内の視聴制限あり。
配信エリア:
日本、北米(アメリカ・カナダ・メキシコ)、南米(ブラジル・ペルー)、ヨーロッパ(イギリス・ドイツ・フランス・イタリア・スペイン)、アジア(韓国・台湾・香港・マカオ・シンガポール・マレーシア・タイ)、オセアニア(オーストラリア・ニュージーランド)
※海外からの視聴は、ソニー・ミュージックソリューションズ(Stagecrowd)限定。
収録日・場所:2024年8月3日 東京・東京芸術劇場プレイハウス
チケット情報:
https://w.pia.jp/t/seisankaku-pls/
公式サイト:
https://www.nodamap.com/seisankaku/
<公演情報>
【東京公演】※公演終了
2024年7月11日(木)~8月25日(日)
会場:東京芸術劇場プレイハウス
【北九州公演】※公演終了
2024年9月5日(木)~9月11日(水)
会場:J:COM北九州芸術劇場 大ホール
【大阪公演】※公演終了
2024月9月19日(木)~10月10日(木)
会場:SkyシアターMBS
【ロンドン公演】※公演終了
10月31日(木)~11月2日(土)
会場:サドラーズ・ウェルズ劇場
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