2025年2月6日木曜日

「スターティング・オーヴァー」ジョン・レノン I Wish~洋楽歌詞和訳&解説

「スターティング・オーヴァー」ジョン・レノン I Wish~洋楽歌詞和訳&解説

「スターティング・オーヴァー」ジョン・レノン

John Lennon - (Just Like) Starting Over1 John Lennon - (Just Like) Starting Over2


John Lennon - (Just Like) Starting Over(1980年)


1980年12月8日は、元ビートルズのジョン・レノンが亡くなった日
そこで今回は当時のジョンのドキュメントを辿りながら、作品を紹介してゆくことに致します…。


~背景~

ポール・マッカートニーの脱退表明よりずっと前、いち早くビートルズを脱退していたジョンでしたが、解散後メンバーの中で生き方や音楽のスタイルの確立に一番悩んでいたのは彼ではなかったでしょうか?
心の不安定は作品の斑(むら)にも現れていたし、バンドに縛られなくなったため元来の気ままな性と相まってレコード制作といった意味での音楽活動にも興味を失っていったような気がします。

そんな折、1975年に妻のオノ・ヨーコとの間に長男ショーン(ジョンの息子という意味では次男)が生まれ、自分と同じ10月9日生まれの息子をジョンは甚く可愛がりました。
翌年EMIとのレコード契約が切れたのを機に"世界のロック・スター、ジョン・レノンは息子の育児に専念するため公の音楽活動を休止"してしまうのです(曲は作ったりしていた)!

1980年6月、ショーンの5歳の誕生日(=ジョンの誕生日)に作品をリリースしようと、ジョンは休暇先のバミューダ諸島で本格的に曲作りを始めました。
8月、ニューヨークのスタジオでレコーディングを開始すると噂を聞きつけたレコード会社が幾つか接触してきますが、マスター・テープも聴かずに契約を申し出てくれた当時まだ無名のゲフィン・レコードが選ばれています。

ショーンの誕生日に少し遅れた10月20日、まずシングル「スターティング・オーヴァー」が発売され初登場38位、11月17日にはアルバム『ダブル・ファンタジー (Double Fantasy) 』が続き、全てが順調に"Starting Over(やり直し)"されるはずでしたが…。


~事件当日~

12月8日…
その日、ジョンはニューヨーク市セントラル・パーク前の自宅(ダコタ・ハウス)でローリング・ストーン誌の写真撮影を終えると夕方5時頃、ヨーコの新曲「ウォーキング・オン・シン・アイス」のミックス・ダウンのためにレコーディング・スタジオ"ザ・ヒット・ファクトリー"へと向かいました。
アパートを出ると、そこでジョンは彼を待っていた"ファンの青年"にサインをしてあげています。
〈"彼"と写ったこの時の写真が、ジョンにとって生涯最後の一枚となった…〉
John Lennon - (Just Like) Starting Over3

スタジオではインタビューの仕事もあり、ここでジョンは"ヨーコより先に死にたい。死ぬまで仕事を続けたい。"
と言及しました。
22時50分、仕事を終えたジョンとヨーコが帰宅しリムジンから降りると…

"Mr. Lennon…?"

呼び止められるや、ジョンは5発の銃弾(4発が命中)を浴びて倒れます。
撃ったのは、夕方ジョンにサインをもらった青年"マーク・チャップマン"でした。
数分で警官が駆けつけた時ジョンはまだ意識があり搬送したパトカー内でも応答できていましたが、病院で救命措置が取られた頃には全身の8割の血液を失い、23時過ぎに失血性ショックで息を引き取っています(享年40)。
世界中が哀しみに暮れる14日、遺された妻ヨーコはジョンの死に対しての黙祷を呼び掛けました…。


~作品~

12月27日、「(Just Like) Starting Over」は"完全復帰"を宣言した主がそれを見届けることなくBillboard Hot 100のNo.1(5週間・81年の年間4位)に輝き、祖国イギリスでも彼のソロ作品として初の1位をもたらせました。
当初「Starting Over」というタイトルが予定されましたがカントリーにも同名曲があったため、(Just Like)が加えられています。
日本では当時のヒットに加え、1997年にはドラマ『いちばん大切なひと』の主題歌に起用されオリコンでもチャート・インするリバイバル・ヒットを記録しました。

この曲はジョンとヨーコの再出発を謳った作品ですが、その前年1979年にバート・レイノルズ主演で同様のテーマを掲げたコメディー『Starting Over(結婚ゲーム)』という映画が公開されているので、ひょっとしたらそれが発想のヒントになっているかもしれません。
(ジョンはこれまでも「ビーイング・フォー・ザ・ベネフィット・オブ・ミスター・カイト」ほか、多くのネタをさまざまなメディアからヒントを得て作品を生んでいる)

ジョンの言葉によるとこの作品は"50年代のロックンロールを80年代風にアプローチした曲"だそうで、そういえばドコとなく彼にとってのヒーロー、エルヴィス・プレスリーも入ってる?
また、彼は冒頭に"祈りの鐘"を置くスタイルがお気に入りのようで、これまでも「マザー」での"弔い"や「ハッピー・クリスマス(戦争は終わった)」で"祈り"を込めてきましたが、「スターティング・オーヴァー」でも"祈り"として用いられたにも関わらず"弔い"となってしまったのは皮肉としか言いようがありません…。


~Lyrics~

Although our love is still special
僕らの愛は、今でも特別なものだけれど
Let's take a chance and fly away somewhere alone
思い切って飛び立ってみようよ何処か、二人きりで…

それなりの年月を共に生きた二人にとってその関係は安定・安心であるけれど、敢えて新しい世界へ踏み出そうとしているようです。
だからこそ、この歌の境地に辿り着いたジョンの"それから"を見られなかったのが残念でなりません…。


Everyday we used to make it love
毎日、愛を確かめ合ってきたけれど
Why can't we be making love nice and easy
なぜ僕らはもっと素敵に、素直に愛し合えなかったのだろう

ビートルズが目に入らぬほど夢中になって一緒になったジョンとヨーコですが、そんな二人にだって離婚の危機はありました。
別人格である以上"譲れぬ瞬間"はあったとしても、大事なのは過ちや行き過ぎがあった場合それを素直に認め"仲直りに努める"ことなのかもしれませんね。


But when I see you darling
でもねダーリン、君を見ていると…
It's like we both are falling in love again
もう一度、恋に落ちてしまいそうなんだ
It'll be just like starting over, starting over
まるで、出逢った頃のときめきが甦るみたいに…

下手に"darling"を日本語に表すと取って付けたようになりがちですが、これほど自然に"ダーリン"と入れられる詞は滅多にありません。
こんなフレーズを率直に伝えられるジョンも素敵ですが飽きっぽい彼を何度も惚れさせるなんて、ヨーコも余程いろんな魅力を持ち合わせた女性なのでしょう…。


~Epilogue~

ジョン・レノンの非業の死…
当時私はあまりに幼く、そのニュースは微かにしか記憶がありません。
ビートルズをリアル・タイムで感じられたらどんなに素晴らしいだろうと思う反面、それが叶うとしたらジョンの死の哀しみと真正面から向かい合わねばならなかったでしょう。

人が早死にしてよいとは全く思いませんが、彼の死に対して客観的に捉えられる世代の私にとってジョンの"ああいう人生の幕の下ろし方"は、彼の人生の軌跡からすると運命のように自然とも思えてしまいます。

ロック・スターとしての眩しい光の陰に
どんなに輝いても決して晴れることのない心の闇を背負った男の哀しみ…


そんな彼の儚さが不思議なオーラとなって伝えられたからこそ、彼の歌が私たちの心を大きく揺るがした気がしてなりません…。



「スターティング・オーヴァー」


Writer(s):John Lennon /訳:Beat Wolf


君と共に過ごした日々は、かけがえないものさ
二人で育んできたものだから…
僕らの愛は、今でも特別だけれど
思い切って飛び立ってみようよ何処か、二人きりで…

二人の時間を手に入れてから、もう随分経つけれど
誰の咎でもない、時は瞬く間に飛び去るものなんだ
でもねダーリン、君を見ていると…
もう一度、恋に落ちてしまいそうなんだ
まるで、出逢った頃のときめきが甦るみたいに…

毎日、愛を確かめ合ってきたけれど
なぜ僕らはもっと素敵に、素直に愛し合えなかったのだろう
そうだ、今すぐ翼を広げ飛び立とう
もう一日だってこの気持ち、抑えられないよ
そうさ、また始めるのさ

飛び立とう、二人だけで
何処か遠く、ずっと遠くへ旅立つのさ
また、二人っきり…
出逢ったの頃のように
いいだろう、ダーリン

二人の時間を手に入れてから、もう随分経つけれど
誰の咎でもない、時は瞬く間に飛び去るものなんだ
でもねダーリン、君を見ていると…
もう一度、恋に落ちてしまいそうなんだ
まるで、出逢った頃のときめきが甦るみたいに…

君と共に過ごした日々は、かけがえないものさ
二人で育んできたものだから…
僕らの愛は、今でも特別だけれども
思い切って飛び立とう、まだ知らない世界へ…

また始めよう…


最後までお読みいただき、ありがとうございました♪
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tags : 1980年 ロック/ポップ 優しい愛 ドラマ ジョン・レノン 

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